近年のマーケティングや商品開発の場面では、「消費者(ターゲット・ユーザー)」の気持ちを考えるためにフレームワークを活用することが多くあります。
今回はGoogleが提唱する「マイクロモーメント」に触れつつ、「瞬間」や「データ」を意識した消費者行動モデルについて考えていきます。
様々な消費者分析の方法
消費者の行動分析をするためのフレームワークは実に多数存在しますが、最近ではデジタル技術の進歩による情報伝達手段の多様化であったり、モノが溢れる中で如何に「体験」価値を提供していくかという動きも、フレームワークの要素に組み込まれてきている様に感じます。
「消費者分析の方法」には具体的に以下のようなものが挙げられます。
行動分析
AIDMA、AISAS、Dual AISAS、SIPS
属性分析
ペルソナ、セグメンテーション、トライブ、クラスター分析、イノベーター理論
行動+属性分析
カスタマージャーニー
上記のように様々なものがありますが、これらは以下の様なことを整理するためにあります。
■消費者が商品・サービスとどういう関係にあるか(知っているのか、興味を持っているのか)
■消費者と商品・サービスとの接触場所
■消費者と商品・サービスとの接触タイミング
■どんな消費者がこの商品・サービスを購入するか
「接触場所」についてはデバイスの増加によりここ数年でいくつも増えており、ソーシャルメディアの発達も含めて「どういう関係にあるか」がより複雑になってきています。
そのような流れもあり消費者との「接触タイミング」や物事の「文脈・コンテクスト」に重きが置かれる近頃、2015年にGoogleが提唱したのが「マイクロモーメント」です。
消費者の瞬間を捉える「マイクロモーメント」
Micro-Moments とは、「何かをしたい」という意図が生じたとき、すぐに目の前にあるデバイスを使って調べる・買うといった行動を起こす瞬間を意味する。そしてこの瞬間は、生活者が何かを決断したり、ブランドに対する好みを形成する大切な瞬間でもある。( Google と考える Micro-Moments(1): マーケターにとって見逃せない瞬間「Micro-Moments」とその活かし方 )
Google公式ブログのInside AdWords-Japanでは上記の定義が行われており、更には「知りたい(know)」「行きたい(go)」「やりたい(do)」「買いたい(buy)」の4つに区分されています。
Googleはこの考え方を提唱すると同時に、広告主が消費者のマイクロモーメントに対して適切な情報を届けることができるようAdWordsやAndroid端末、他のGoogleサービスの各機能を日々進化させています。
広告経由でのリアル店舗誘導数を計測する仕組みや、動画などのリッチメディア広告の拡大、PLA(商品リスト広告)を含めたユーザーの多様な検索意図への対応などがその一例です。
ユーザーの生活における「イベント」を捉えた施策
この「瞬間を捉える」に近い形で、主に金融機関で進んで実践されているのがイベントベースドマーケティングです。
イベントベースドマーケティングは、顧客行動の詳細な変化を「イベント」ととらえデータベース上に蓄積し、それらを継続的に観察した結果をもとに顧客に適切なコンタクトを行うというマーケティング手法。たとえば金融機関の場合、ライフステージや財政状態などのデータをもとに、顧客が必要としているタイミングを推定し、商品やサービス、金融上のアドバイスを提供することが可能となる。( みずほ銀行が挑むイベントベースドマーケティング - TERADATA PARTNERS 2015 | マイナビニュース )
この仕組みはファッション通販ZOZOTOWNでも活用されているらしく「住所変更というイベントに対して、新生活にこんな商品はどう? という訴求を行う」など、アクティブ会員数を増やす施策をして成果を出しているとそうです。
マイクロモーメント時代に求められる消費者行動モデル
これらを踏まえた上で、マイクロモーメント時代に求められる消費者行動モデルを考えると「瞬間を捉えること」と「データを活用すること」がキーワードとしてあげられるでしょう。
瞬間を捉える
行動×属性のカスタマージャーニーマップを軸に、「瞬間」要素を簡易的に含めた図が以下になります。
それぞれの箱には複数の内容が入ります。またオンライン・オフラインの行動、広告施策・広告以外の施策問わず様々な情報が入ってきます。
1. 「利用」ユーザーから各データを取得。もしくは、利用要素の仮説をつくる。
2. 「認知」段階では「〜したい!」というユーザーの気持ちと、商品・サービスの繋がりを考える。重要なのは「when, where」で、どんな媒体でどんなタイミングに情報を届ければよいかを仮説立てする。
3. 「検討」段階では、既に認知済みのユーザーがなぜ購入せずに検討中なのか推測し、その検討要素を解消させるような情報の届け方を仮説立てする。
データを捉える
上記の流れで作成していく中で、市場データやソーシャルインサイト、自社で取得できる行動データ等も活用していきます。
例えば、「定額音楽配信サービス・定額映像配信サービスを利用するユーザーは、モバイル端末の通信量の上限がないプランを選択しやすいというアンケートデータ」や「Googleアナリティクス上で見ると、アパレル商品の詳細ページやセール情報ページのほかに、色でフィルタをかけた商品一覧ページの滞在時間が長い」といったものです。
モデル作成は社内チームやクライアントを巻き込むと、より多くのアイディアが出るでしょう。また「費用対効果が合うか?」「インパクト(ボリューム・母数)が大きいか?」という観点でも整理することで施策の優先度が判断できるでしょう。
まとめ
いかに「適切な場所で」「適切なタイミングで」適切な情報を届けることで、ユーザーによりよい体験を提供することができるかが、マイクロモーメントの本質です。マーケティング・広告担当者は今後より一層、ユーザーのことを詳しく理解した上で、戦略を立てていく必要があるでしょう。