デザインやアートに関わる人は、整理整頓が苦手というイメージを持たれることがあります。これを一般論として語るのはいささか無理がありますが、たしかにクリエイティブな人々は散らかす傾向にあるというデータもあり、実際に雑然とした状況から創造力が生まれているのことにも実例があります。
このようなカオスな状態は、個人では問題ないですが、チームでの作業になれば話は別です。整理されているかいないかは、業績を左右してしまうほど重要な点です。
グループメールでやりとりしたことがある人なら、様々な人がメールを送り合って、それがネスト化してしまった状態にイライラしたことがあると思います。重要な情報が載せされたメールを見逃す人がいたり、一度聞いたことをまた問い合わせる人がいたりする状況が、間違いなく起こります。チーム内の全員が、学生の頃のグループ作業などを、思い出すでしょう。
言うまでもなく、チームをまとめるツールを所有することが、ただ良いというだけなく、デザインの世界においては義務とも言えます。もちろん、プロジェクトの進行状況をチェックするのに、メールやスプレッドシートでチーム内のアイデアの疎通ができ、業務に反映されているというのならば、話は別ですが。また、デザイナー向けのプロジェクト管理用パッケージソフトを導入するにしても、その中のどのソフトウェアが実際に有用されているかを把握することが、大変重要です。つまり、使いやすく融通のききやすいソフトを選択して、見直しが必要とされる状況に適したツールを導入する必要があります。
この記事では、私たちのお気に入りのプロジェクト管理用ツールのリストを紹介します。どれも、チームで作業を行うデザイナーのニーズにフィットするように設計された(またはカスタマイズされた)ものです。それぞれ、チーム作業を理想的なものとするのに、その性能を大いに発揮する製品です。どの製品が、ご自身のチームに最適なものであるか、判断していただければと思います。
デザイナー向けのプロジェクト管理用ツール
Trello
Trelloはプロジェクト管理ツールのマーケットにおいて、最も人気なサービスの一つです。ポストイットや写真がたくさん貼られたコルクボードを連想させるサービスで、自分や一緒に仕事をしている人たちのワークフローを、簡単に可視化して確認することができます。
下の画像は、Trelloの作業ボードの一例です。それぞれの列は「リスト」と呼ばれています。この例では5つのリストがあり、「Incoming Bugs(発生中のバグ)」「In Progress(進行中)」「QA(品質管理)」「Ready for Launch(起動準備中)」「Live(実行中)」に分類されています。それぞれのリストには、達成すべき複数の異なるタスクを表示する、「カード」が含まれています。
それぞれのカードは展開可能で、そのタスクに関する記述や添付、チェックリストなどのより詳細な事項を表示することができます。GreenPal(Uberの庭の芝刈りサービス版だと思ってください)の共同創業者であるGene Caballero氏は、このコルクボードスタイルのインターフェイスを気に入っており、「業務内容を視覚化して確認することができ、チーム内のメンバーに作業を振り分けたり、期限を確認したりするのに役に立っている。」と述べています。
複数の異なるエリアで業務を実行することになると、州を跨いだメンバー間のプロジェクト管理が必要になります。Caballero氏は、「月単位のフォーマットでの進行の中に、それぞれの節目が置かれるので、メモを付け加えやすく、進捗状況を確認することができ、あらかじめ設定した目標に対する変更も行いやすいのです。チーム全体が責任感をもって仕事を行うのに、素晴らしいツールです。」
デザイナー向けのプロジェクト管理用ツールを探しているのならば、Trelloはまさに、最初にチェックすべき製品の一つと言えます。To-Doリストをまとめやすいだけでなく、プロジェクトが現在どこまで進捗しているのかを、視覚的に確認するのにも一役買うことでしょう。デザインを行う人々は、たくさんの文章が書かれた書類などよりも、ビジュアル要素でまとめたものをもって、確認作業を行うのがほとんどだと思いますので、その意味でも優れています。
Roadmap Planner
私たちがRoadmap Plannerで気に入っていることは、視覚的にプロジェクトのマッピングを行えることです。それぞれの作業やプロジェクトの各段階の期限を、リストアップして並べるのとは違って、Roadmap Plannerでは、ガントチャートのように、タイムラインを用いて業務の流れを確認することができます。
下の画像では、部門ごとにタイムラインが設定されており、分かりやすく色分けしてあります。それぞれの仕事は、次の段階の作業と一連の線でつながれており、プロジェクトの中で誰が何の仕事を行っているか、同時進行で何が行われているか、そしてどの段階で他部門の作業とつながるかを、チームメンバーは確認することができます。プロジェクトの進行をマッピングするのとても有用で、新しい製品やアップデート、アプリのリリースを成功へと導いてくれるでしょう。
Roadmapの親会社であるKeepSolidのアート・ディレクターであるVitalii Kovalenko氏は、この製品を彼自身でも使ってみて、使いやすいものだと言っています。彼が言うには、「Roadmapは戦略構築を行うのに、素晴らしい製品です。様々なハードウェアやOSなどに対応した新製品のUIを構築するのに、どのような要素やどれくらいの時間が要されるかを、視覚的に確認することができます。」
JIRA Software
JIRA Softwareは元々はソフトウェアの開発ツールとして作成されたものですが、デザイナー、特にコーダーなどは、アプリが市場に出たからと言って仕事が終わるわけではなく、引き続き改善をしていく必要があるという点で、ここで紹介するのに相応しい製品だと思います。
デザイナーは、アップデートと改善作業を行うにあたり、すでに発売されている製品とたえず関わり続けています。開発チームが大々的なアップデートの作業を行っている場合では、デザイナーは特にその作業に追われています。
JIRA Software(JIRA Service Deskという名前の会社があるので、混同しないように注意してください)は、Trelloの「ボード」を使ったワークフローに似ています。ユーザーは色分けして表示されたタスクを、リスト画面の中でドラッグ&ドロップし、自分自身の作業だけでなく、他のメンバーが任されている仕事を追跡することができます。
SaferVPNのUXとUIのデザイナーであるElad Naider氏は、彼の作業チームはJIRAを用いたスクラム手法を採用していると言っており、彼のチームが「2週間の期間内で、作業に取り組むことができ、目標設定やそれぞれの作業の進捗状況を確認し合うのにも、役に立っています。」とのことです。
JIRA Softwareについて、私たちが気に入っている特徴は、タスクをドラッグ&ドロップする機能です。複雑な手順が要らず、特にユーザーのフィードバックに対して、有効に活用しています。「あの色が良い、この色は嫌い」というようなことは、「アプリが1週間に一度タイムアウトする」ということと比べると、チームにとっては大して重要なことではないでしょう。そういったときにリストの中の動かしたい場所に、そのアイテムをドラッグして、優先度付けができます。Naider氏は、この特徴がとりわけ便利だと感じており、「アプリのUIやUXのデザインを、制限なく改良することができます。」と言っています。
LiquidPlanner
ここで紹介している製品が、それぞれに秀でた特徴をもっているのに対し、LiquidPlannerは今後のことを予測して計画を立てる機能において、一番と言えるかも知れません。
事実、LiquidPlannerのコミュニケーション部門の統括であるMike Merwin氏は、これを「革命的な機能」と称しています。どれくらいの時間が必要とされるかを入力すると、スケジュール機能が、いつ頃その仕事が終了するかを、自動的に算出します(週末と休暇期間も考慮されます)。作業途中でも、残りの時間がどれくらいかを、画像と数字の両方で表示し、ガントチャートのスタイルと同様な形で確認することができます。
毎日繰り返し、電子機器に向かって作業に追われていると、これらの日数に対する感覚を、簡単に失いがちになります。プロジェクトに対する具体的な時間の感覚をもつことで、作業に集中して取り組むことができるようになります(Facebookのお知らせに気を取られないように!)
10時間を想定したプロジェクトで、実際には15時間かかったような場合は、集中力が足りなかったとか、予期せぬことが発生したなど、リーダーはチームメンバーに、その理由を聞くことができるでしょう。こうすることで、作業環境における問題点を発見することができ、次にプロジェクトの計画を立てるの際にも役に立つでしょう。
まとめ
プロジェクト管理ツールとは、マネージャー自身の都合だけで導入してもあまり意味がありません。どんなに様々な要素を考慮に入れてスケジュールを組んでも、チームのメンバーは集中力が切れたり、疲れたり、他のことで気をそらされたりして、スケジュール通りに作業を行えないかもしれません。
メンバーの意欲が沸かないときには、上手く休みを取らせてあげることが必要です。時にはオフィスの外に出てちょっと散歩でもすることで、疲れた体が起き上がって創作意欲が沸き、リフレッシュした気分で仕事に臨むことができるでしょう。
仕事のやる気を起こさせるのにも、実に様々な製品や方法があることも、覚えておきましょう。それぞれに異なる特徴があり、デザイナーによってはお気に入りの音楽を聴いたり、反対に完全に音をシャットアウトしたりするなど、やり方は様々です。
チームのメンバーそれぞれに対して意見を聞いて、どのような環境を整えるのがよいか、ベストを尽くして考えましょう。彼らの要望をしっかり聞くことで、効率を上手く高め、チーム内にも責任感が育まれるはずです。