翻訳だけは不十分?タイポグラフィを国際化対応するには

Yona Gidalevitz

Codalのテクニカルライターとして働いています。ライティングコンテンツに関する作法をプロデュースするため、コンテンツストラテジー、ドキュメンテーション、ブログ、編集を担当しており、CodalのUX、開発、マーケティング、管理チームと密接に関わっています。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

How To Internationalize Your Typography

既存のウェブサイトやアプリケーションを新しい場所や言語に移植しなければならなかったことはありますか?

同じプロセスを記述する国際化対応は非常に扱いにくいもので、特に経験がないマーケットに参入する場合は非常に難しいものです。国際化対応のためのタイポグラフィデザインは、単調なものではなく非常に多種多様です。あるタイポグラフィは落ち着いた表現豊かなもので、もう一方では壮大で魅力的なタイポグラフィの要素を持ちあわせています。

タイポグラフィの国際化対応における障害

国際化対応の作業は、単に言語の変更を行うものではなく、よく考えて行うことが必要とされます。ウェブサイトやアプリケーションでどのような効果を期待するかにかかわらず、異なる言語で望む効果を実現するには、いくつもの複雑な障害が立ちはだかります。

Adidas product page in English (Image source: Adidas)

Adidas product page in Simplified Chinese (Image source: Adidas)

例えば上の画像で、中国語版の製品ページではどこに太字があるでしょうか? 太字のフォントは中国語のような複雑な文字では元の言語と同じようには見えず、この製品ページに違和感を与えてしまいます。

ウェブデザインにおける重要なコンセプトを活用するため、アディダスのロゴにはsans-serifフォントが使われており、サイトの英語版のテキストにも使われています。それがブランドアイデンティティなのです。いかにして言語の変更がこのようなブランドアイデンティティを損ねてしまうか気づくことでしょう。

国際化対応と書体

中国語、日本語、韓国語(CJK)のような、単語を1文字(時々2文字以上)で表現する傾向にある言語について考えてみましょう。例えば、このような言語では視覚的なフレーズの長さにおいて大きな影響があります。それでは、デザインにどのように影響を及ぼすのでしょうか?

CJK文字(中国語、日本語、韓国語)は視覚的にとても複雑であり、可読性をあげるために英語のフォントよりも大きく表す必要があるかもしれません。これだけで、ページの見た目は変わってしまうでしょう。

それではキリル文字(編注:ロシア語などで使用される文字)はどうでしょう? おそらくさまざまな種類の文字で、使いたい書体にぴったり合うものは見つけられないでしょう。これは選択肢が少ないということではなく、同じデザインテーマを生かし続けるのであれば、同じような書体を見つけるため労力をかけなければならないということです。

言語が異なると単語の長さも異なります。例えば、“Add to Cart”は英語では11文字ですが、オランダ語では25文字になり2倍以上のスペースを占めます。スペースが足りないときはフォントサイズを変更するか、そのページの全体のレイアウトを変更しなくてはならないかもしれません。

もしあなたのウェブサイトが多言語対応しているのであれば、ウェブフォントはサポートしているすべての言語との互換性がなくてはなりません。また、言語や文化にもとづいてページのデザインを修正する必要があるかもしれません。 

UXコンセプトと言語

下の画像に見られるように、ウェブサイトのローカライズはUXを全く異なるものにしてしまいます。アラビア語ではテキストは左から右ではなく右から左へ読むため、アメリカやヨーロッパでのユーザーエクスペリエンスの原則は全く当てはまりません。

Right-to-left navigation style on Adidas.com (Image source: Adidas)

このアディダスのサイトでは、(通常は左上の角にある)ロゴを右上の角へと移動し、ウェブサイト全体のレイアウトを変えています。そう、テキストだけでなくレイアウトも変更しているのです。例えばアラビア語でウェブサイトを提供するなら、画像、サイドバー、ナビゲーション、コールトゥアクション(CTA)、ドロップダウン、スクロールバー、そしてボタンなどすべてを調整する必要があります。

そのほか国際化対応において考慮すべきポイント

多言語対応のウェブサイトを制作するとき、書体やUXの原則は常に重要であることを意識する必要があります。しかし、ウェブサイトにおいて忘れられがちな側面もあります。

日付、キャプチャ、電話番号、道徳的価値観です。

少数の国では異なる日付や電話番号のフォーマットが使用されています。これらは、ユーザーがお問合わせをしたり、ウェブサイト以外から製品を注文するときに重要となるものです。そのため、日付や国コードや電話番号の書式設定を変換する必要があるかもしれません。

もしあなたのサイトでセキュリティ目的でキャプチャ(ロボットの自動入力でなく人間が操作していることを証明する文字入力テスト)を使っているのであれば、ウェブサイト上にある同じ言語に翻訳するのを忘れないでください。英国からの訪問者は、韓国語のキャプチャを正しく入力することはできないでしょう。

最後となりますが、道徳的価値観もまた重要です。すべての文化はそれぞれ異なる倫理的な視点や価値観を持っています。ユーモア、セクシャリティ、シンボルなどを扱う時は、翻訳する内容をよく注意しなければなりません。アメリカの面白いジョークは世界中で理解されるわけでなく、共通して使われているシンボルは国際化対応されたウェブサイトでは理解されないかもしれません。

まとめ:翻訳以上にやらなければならないことがある

国際化対応は、容易なものではありません。ウェブサイトの言語を翻訳するよりもずっと努力を必要とするものなのです。

すべての言語において、新しい課題が出てきます。

  • 内容自体は問題無いでしょうか?
  • 文字数が大きく異なっていませんか?
  • 他の文化では不快となる画像ではないでしょうか?

複数の言語でウェブサイトを提供するとき、あなたは翻訳ソフトに頼ることはできません。デザイナーと翻訳者が協力する必要があります。

デザイナーはすべてのページが視覚的に魅力的で、ユーザビリティも標準レベルを保つようにしなくてはなりません。

翻訳者はどんな言語が使われていようともコンテンツが違和感なく翻訳されており、そこに表現されているメッセージの調和がとれているようにしなければならないのです。


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