昨年VR(バーチャルリアリティ:仮想現実)という言葉が大きく取り上げられました。このVRと似た様な技術にARとMRがあります。これらの技術はどのように違うのでしょうか。現在発表されている製品を交えて、技術の最先端をわかりやすくご紹介します。
VR(Virtual Reality:仮想現実)とは
VRは、コンピュータによって人工的に作り出された世界を現実のように知覚させる技術です。VRの特徴として、あたかも全くの別世界に自分がいるかのような感覚を味わえるということがあげられます。首を振れば視界に映る仮想世界もあわせて動く、この没入感が最大の魅力です。高い解像度と広い視野で人間の視覚に劣らないディスプレイと、高感度のモーションセンサーによって、VRは成り立っています。
エンターテインメント分野から強い関心の目が向けられており、「VR元年」と言われた2016年には、VRを体験できるヘッドマウントディスプレイ(HMD)が主要メーカーから多数発表されました。
日本を代表するVR製品:PlayStation VR
VRに乗り出したSonyが2016年10月13日に発売したのが「PlayStation®VR」(希望小売価格44,980円(税抜))。PlayStation4とPS Cameraと繋げることで、誰でもVR体験が可能な製品です。PS4オリジナルのVRゲームも発売されており、VRゲームを体験したい方にはおすすめの製品です。PlayStation Japan公式トレーラーをご覧ください。
その他製品紹介
Samsung社からはスマートフォンと連携させて使用する「Galaxy Gear VR」が販売されています。価格も1万円台と、手軽にVR体験が可能なので、galaxyシリーズのスマートフォンを持っている方は購入してみてはいかがでしょうか。
また、PCを用いたVR体験を求める方には、大手ベンチャーOculus社から「Oculus Rift」、Vive社からは「HTC Vive」がすでに発売されています。どちらも価格は張りますが、様々なゲームが開発されています。ゲーミングPCを用いた本格的なVR体験におすすめです。
AR(Augmented Reality : 拡張現実)MR(Mixed Reality:複合現実)とは
AR(拡張現実)はCGなどで作ったグラフィックを現実世界に拡張します。VRが完全な異空間を創りだす一方で、ARはあくまで現実世界を主体として、そこにコンピュータからの情報を付与します。
MR(複合現実)はARを内包する概念で、現実世界と仮想オブジェクトがリアルタイムで影響しあう空間をつくる技術のことを指します。例えば、仮想オブジェクトを自分のジェスチャーによって動かしたり、音声認識でホログラムを開いたり閉じたり、相互に影響しあうのがMRの特徴です。MRでは、現実世界が写るように透明なレンズが使用されます。
周りの現実世界を認知するセンサーと仮想オブジェクトを映し出すディスプレイによって成り立っています。こちらの技術はVRよりもさらに広い分野での応用が期待されていて、医療や建築業、製造業など、多くの分野から共同開発が進められています。
技術開発の最先端:Microsoft HoloLens
MRにいち早く乗り出したMicrosoft社が2016年に発売した「Microsoft HoloLens」はオープンソースにようる幅色いジャンルでの開発が現在進められています。
この動画は一切合成をしていない映像です。そしてついに、2017年1月、日本でも開発者向けのHoloLensキットである「Microsoft HoloLens Development Edition」が発売されました。例えば、JALは、飛行機のパイロット訓練やエンジニアのためにHoloLensを使用しています。
幅広い応用例:火星探査をホログラムで
Micosoft社は開発状況をYouTubeや自社のホームページに随時アップロードしており、すでに多くのアプリケーションが発表されています。また、ニューヨークで開発者向けのデモンストレーションが定期的に開かれ、現在の技術開発のホットスポットとなっています。
自動車会社Volvoでは、HoloLensを使用した自動車開発が進められたり、SNSアプリケーションのSkypeはホログラムで相手を表示する開発を進めてたりしています。その中でも今回ピックアップするのはNASAの事例です。火星探査計画にMRを導入したことで、実際に火星に何度も行かなくてもホログラム上で再現できるようになりました。それによって、今まで不可能だった実験が可能になるだけでなく計画を大幅に早めることができるようになったとのことです。
今後プロジェクターの代わりとして使用されるなど、現行の製品の代替だけでなく、医療現場で手術の手助けをするなど、世界を変える技術として期待されています。
他に、MR技術を開発する企業Magic Leap社からも、「Magic Leap」の開発が発表されています。Microsoft社ほど情報を公開していないのでその全貌はいまだ明らかになっていませんが、以下の現実世界と仮想情報の間でピントフォーカスを変える動画からは、期待できる開発が進められているようです。
SFの世界は、もう未来ではない
VR(仮想現実)、MR(複合現実)は、まさにこれまで多くのSF作品で想像されてきた世界そのものです。ですが、VRが一般向けに発売されヒットを飛ばし、MRの開発が広く進められている今、その世界はまさに仮想でない現実のものとなっています。ぜひこれらの技術に注目し続けてみてはいかがでしょうか。