生産的でストレスのない、優れたUIをデザインしたいなら、Ben Shneiderman氏の「インターフェイスデザインの8つの黄金律」に従いましょう。Apple、Google、Microsoftは、Shneiderman氏のルールに沿った製品によって、大成功を収めた企業なのです。
Shneiderman氏の黄金律は、上記のような巨大企業が作成したさまざまなUIのガイドラインに見られます。これらの企業が生み出した人気の高いインターフェイスには、これらのルールがさらにわかりやすく実装されています。この記事では、8つの黄金律についてまとめ、インターフェイスを改善する方法を説明します。
インターフェイスデザインの8つの黄金律
Ben Shneiderman氏(1947年8月21日生まれ)は、アメリカのコンピュータ科学者、メリーランド大学 Human-Computer Interaction Lab.の教授です。彼の功績は、Don Norman氏やJakob Nielsen氏のようなほかの現代デザイン思想家にも匹敵します。Shneiderman氏は有名な著書『ユーザーインタフェースの設計 やさしい対話型システムへの指針(原題:Designing the User Interface: Strategies for Effective Human-Computer Interaction)』において、インターフェイスデザインにおける8つの黄金律を明らかにしています。
- 一貫性を保つ:似たような状況や行動をデザインするときは、使い親しんだアイコン、色、メニューリスト、コールトゥアクション(CTA)、ユーザーフローを利用することで一貫性を保ちましょう。情報伝達の方法を標準化することで、同じアクションに対して新しい表示があることを学ぶ手間がなくなり、ユーザーは既に持っている知識をもとに気軽にクリックできるようになります。ユーザーが製品のデジタル環境に慣れて、目標をより簡単に達成できるようにするときに、一貫性は重要な役割を果たします。
- ヘビーユーザーがショートカットを使用できるようにする:使用回数が増えれば、より速くタスクを完了する方法が求められます。たとえば、WindowsもMacもコピー&ペーストのためのショートカットキーを用意しており、経験を積んだら、ユーザーはUIをより迅速かつ簡単に操作することができるようになります。
- 有益なフィードバックを提供する:今どの地点にいるのか、何が起こっているのかを、ユーザーが常に知っている必要があります。あらゆる行動に対して、わかりやすく適切なフィードバックを短時間で表示してください。
複数ページにまたがるアンケートに取り組んでいるときに、ユーザーがプロセスのどこにいるのか示すのは、フィードバックを適用する良い例として挙げられます。逆に悪い例としてよく見受けられるのは、エラーメッセージが意味の通ったものではなく、エラーコードとして表示されるものです。
Windows Media Playerのデザイナーは、この「有益なフィードバックを提供する」ルールを知っておくべきでした。不適切に設計されたエラーメッセージは、上記のようにユーザーには無意味なエラーコードを表示してしまいます。デザイナーは、常に多くの人にとってわかりやすく、意味のあるフィードバックを提供するよう努めなければなりません。
- 完了を伝えるダイアログを設計する:ユーザーに余計な推測をさせないようにしましょう。ユーザーのアクションが何をもたらしたのかをユーザーに伝えてください。たとえば、オンライン購入が完了したときに「ありがとうございました」というメッセージや領収証が示されるのをユーザーは好ましく思います。
- 単純なエラー処理を提供する:間違っていると言われるのを、ユーザーは特に嫌います。ですから、システムはできるだけ間違いを生まないデザインにする必要があります。しかし、避けられないエラーが発生した場合は、ユーザーができるだけ素早く簡単に問題を解決できるように、直感的でわかりやすい指示を段階的に与えてください。たとえば、ユーザーがオンラインフォームで入力を忘れたら、該当するテキストフィールドを目立たせましょう。
- アクションのやり直しを許可する:デザイナーは、ユーザーにアクションをやり直すわかりやすい方法を提供するよう努めましょう。単一のアクションのあとでも、データ入力のあとでも、一連のアクションがすべて終わったあとでも、やり直しはさまざまな時点で許可される必要があります。Shneiderman氏は著書で次のように述べています。
「この機能は、エラーの取り消しができると知らせることで、ユーザーの不安を解消します。これにより、ユーザーは馴染みのない選択肢に興味を向けやすくなります。」
- 内部要因思考をサポートする:ユーザーを行動の主体にしてください。デジタル空間で発生するイベントを、ユーザーが完全にコントロールしているという感覚を与えましょう。ユーザーの期待どおりに動作するシステムを設計し、ユーザーの信頼を得てください。(注:内部要因思考とは、評価の原因を自分の能力や努力に帰属させること)
- 短期記憶の負荷を減らす:人間の注意力は限られており、私たちは短期記憶において一度に約5つの情報しか保持することができません。したがって、インターフェイスは情報を適切に階層づけられ、できるだけシンプルでなければなりません。また、ユーザーに記憶を再生させるのでなく再認させましょう。何かを再認するときには、膨大な記憶から関連する情報をみつける手がかりがあるため、再認することは再生することより簡単なのです。たとえば、テストの選択問題は短文回答問題よりも簡単に感じられます。なぜなら、記憶から答えを呼び出す必要はなく、答えを見比べるだけで良いからです。
Bloomberg Businessweekで「世界でもっとも影響力のあるデザイナー」の1人と呼ばれたユーザビリティ研究のJakob Nielsen氏は、ヒューリスティック評価を含む、いくつかのユーザビリティ法則を発明しました。「再生記憶より再認記憶(Recognition over recall)」という原則は、Nielsen氏によるインターフェイスデザインのためのユーザビリティ10原則のうちのひとつでもあります。
Shneiderman氏の8つの黄金律をAppleはどう適用したか
北米の巨大IT会社であるAppleは、Shneiderman氏の8つの黄金律をデザインに反映したことで優れた製品を生み出した良い例です。Appleは、同社製のコンピュータMacintoshからモバイル端末まで、あらゆる分野で成功を収めています。彼らは、一貫性のある直感的で美しいデザインに誇りをもっています。2014年中頃に公開されたApple iOSのヒューマンインターフェイスガイドラインからは、デザインチームが8つの黄金律をはじめとしたデザイン原則をどのように適用したのかが伺えます。
1.一貫性
「一貫性」と「安定感」は、AppleのMac OSの設計に組み込まれています。 Mac OSのメニューバーは、1980年代または2010年代のいずれのバージョンであっても、一貫したグラフィック要素を含むように設計されています。
Mac OSの外観。 Mac OSのメニューバーは一貫しています。
2.ショートカット
前述のように、Macではさまざまなキーボードショートカットを使用できます。よく使用される例として、コピー&ペースト(Command-XおよびCommand-V)、スクリーンショット(Command-Shift-3)などが挙げられます。
Macは、キーボードショートカットの使用により、マウスクリックなしでの操作を可能にしました。
3.有益なフィードバック
有益なフィードバックの好例としては、デスクトップ上のファイルをクリックすると、ファイルが「ハイライト」されることが挙げられます。また、デスクトップ上でフォルダをドラッグすると、マウスをホールドしている間、フォルダが動いている表示がされます。
Macのデスクトップ上の「Learning」フォルダをクリックすると、ハイライトされます。
デスクトップ上のフォルダをドラッグすると、フォルダが物理的に移動している表示がされます。
4.対話
Mac OSにソフトウェアをインストールすると、画面にインストール過程のどのステップであるかを表示します。
ユーザーがプログラム「Parallels Desktop 9」をインストールすると、現在「ファイルをコピー中」と表示されます。
5.エラー処理
ソフトウェアのインストール中にエラーが発生した場合、優しく、わかりやすいメッセージでユーザーに警告します。直面しているエラーの重大度に応じて、いつ小さく和やかに警告するべきで、いつ大きく深刻に警告するべきなのか考えましょう。しかしどんなときでも、エラーが発生したときにユーザーを叱るようなことがあってはいけません。エラーメッセージは、最終的には人間のユーザーが読んで判断するものです。ですから、適切な言葉と口調を十分に配慮して選んでください。ただ単に「処理」するためのエラーコードのままではいけません。
このように、穏やかな口調のエラーメッセージによって、何が起こったのか、そしてなぜ起こったのかが説明されています。さらに、ユーザー自身が選択したセキュリティ設定によって生じたことを明記することで、依然ユーザーのコントロール下であることを理解させます。(下記の「7.内部要因思考をサポートする」を参照)
Windowsのように、「致命的」や「強制終了」という言葉を使ったエラーメッセージが表示されるのは悪い例です。否定的で不親切な言葉は、確実にほとんどのユーザーを怖がらせてしまいます。
6.アクションのやり直しを許可する
インストールの過程でユーザーが情報を入力している間にミスをしてしまったとき、「罰」のように最初からやり直すのではなく、ひとつ前のステップに戻れるようにしましょう。
ユーザーはひとつ前の操作にすばやく簡単に戻ることができます。
7.内部要因思考をサポートする
ユーザーがプログラムを続行するか終了するかを選択できるようにします。 Macのアクティビティモニターでは、プログラムが予期せずクラッシュした場合に強制終了することができます。
ユーザーはプログラムがクラッシュした場合、プログラムを終了または強制終了することができます。
8.短期記憶の負荷を軽減する
人間が短期記憶で一度に5つの情報しか保持できないことから、Apple iPhoneは画面下部にあるメインメニューエリアに4つのアプリアイコンしか固定できないようにしています。これは、記憶の負荷だけでなく、一貫性も考慮された原則です。
どのiOSのバージョンでも、画面下部に同じメニューを表示することで、一貫性のルール(第1のルール)を実装することに成功しています。またこれは、短期記憶の負荷を減らす方法(第8のルール)の成功例でもあります。このように、人間は短期記憶で一度に5つの情報しか保持できないので、Apple iPhoneは、iOS 4かiOS 7であるかどうかに関わらず、画面下部のメインメニューエリアに固定できるアプリケーションアイコンを4つに制限しています。
ワークシート:Shneiderman氏の8つの黄金律をインターフェイスデザインに適用する方法
デザイナーの仕事は、直感的でストレスのないUIを作成することで、ユーザーの生活をより便利にすることです。 Shneiderman氏のインターフェイスデザインの8つの黄金律は、この仕事にとても役立つでしょう。以下に、これらのルールを適用する際に役立つワークシートを掲載しました。
こちらからPDFをダウンロードできます。
まとめ
Ben Shneiderman氏の「インターフェイスデザインの8つの黄金律」に従えば、Apple、Google、Microsoftのような、生産性が高くストレスのないUIを設計できます。MacやPCからモバイル端末やVRなどの将来発明されるだろうインタラクション技術まで、人間とインターフェイスのインタラクションをデザインする限り、この8つの黄金律はデザインプロセスにおいてもっとも重要であり、見過ごすことはできません。まずは、付属のワークシートを使用して、これらのルールを適用する方法を学んでください。
関連記事
Ben Shneiderman氏の8つのゴールデンルールについての詳細はこちら
https://www.cs.umd.edu/users/ben/goldenrules.html
Jakob Nielsen氏のユーザビリティ10原則についての詳細はこちらhttp://www.designprinciplesftw.com/collections/10-...
iOSヒューマンインターフェースガイドラインについての詳細はこちら
https://developer.apple.com/library/prerelease/ios...