ユーザーをだまさないデザインの考え方

Paul Boag

PaulはUXのデザイナーでありデジタルトランスフォーメーションの専門家です。彼はユーザーを促進するためのウェブやソーシャルメディア、モバイルの活用を、非営利やビジネスの分野で手助けしています。

この記事はboagworldからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Is it ever okay for designers to manipulate people?

デザイナーとしての私たちの仕事は、人々がやりたくないことをやるように強いることではありません。彼らを説得してすぐに行動させ、クライアントに競合ではなく私たちと仕事をしてもらうことです。

自分の仕事のモラルについて考えたことはありますか? 突き詰めれば、デザイナーの役割は、人々を説得して何かをさせることでしょう。つまり、私たちが得意とするのはCTA(Call to Action=行動喚起)を達成させることなのです。

使用する言葉からデザインのレイアウトまで、私たちには人々を操ることができる強い力があります。見てほしいと思うものをユーザーに見させたり、クリックしてほしいものをクリックさせたりすることが可能です。感情や心理学、デザインを駆使して、私たちが望む方向へユーザーを向かわせることができます。しかし、私たちは、そもそもユーザーをその方向に向かわせるべきなのでしょうか? 

だますことの危険性

上記のような方法で人々を操ると、危険な道を歩むことになります。ユーザーは今まで以上に賢くなっていて、私たちが使用する罠に敏感に気付きます。このような「ダークパターン」は、ユーザーが家族や友人に愚痴を言う対象です。デフォルトで既にチェックしてあるチェックボックスや、自動的に買い物かごに追加されるアイテムなどが当てはまります。

しかしユーザーをだまして、したくないことをさせることに成功しても、結果的には無駄にコストがかさんでしまいます。

ユーザーを操っても怒りしか生み出しません。(編注:1通あたりたった99セントで読めるニュースレターを友達に送ろうというポップアップですが、ウィンドウを閉じるためのリンクが「1通あたりたった99セントも払う価値のある友達や家族がいないから結構」という煽り文言になっています)

ユーザーを操ってニュースレターに登録させるのは、もっとも有名なダークパターンの例です。メールアドレスを獲得する手段には、さまざまなものが存在します。しかしそれらは労力をかけるに値するものでしょうか? 

ニュースレターへの登録の事例のように、何かするようにユーザーをだますと、ユーザーは「バイヤーズリモース」に苦しめられます。彼らはデータを渡してしまったことを後悔するでしょう。また、登録を解除しようとするとき不満を募らせるでしょう。これらは結果的に、サイトの評判を害することにつながります。ユーザー同士で不満が共有される場合はなおさらです。

もちろんニュースレターだけが、人々を操る事例ではありません。結果として操った代償は高くつき、ブランドが傷ついたり、サポートに高いコストが必要になったりします。操られたユーザーは、私たちにもほかのユーザーにも不満を言うでしょう。

では私たちは、ユーザーを操るような行為は、断固として拒絶するべきなのでしょうか? 実はこの質問に対する答えは、白黒をはっきりできるものではありません。

人々を操ることは許されるのか?

正直になりましょう。私たちの仕事は、クライアントに最善の解決策を与えてあげることです。ある程度、ユーザーを説得して行動を誘うことは避けられません。少なくとも、政府のような功利的な組織で働いているのでなければ発生します。

ではその線引きはどこにあるでしょうか? どんなときに人々を「操る」のが許されるのでしょうか? それは、ユーザーの意図に依存すると私は考えます。ユーザーは何を達成しようとしているでしょうか? 

ユーザーの意思に反して、ユーザーに物事を強いてはいけません。

ユーザーを説得して、意思に反することをさせるべきではありません。しかし、「先延ばしにするよりも実行するべきだ」と説得するのは許されると私は思います。また説得して、競合ではなく私たちと共に行動させるのも許容されるでしょう。

私たちの仕事は、人々が行動を起こすのを妨げる心理的障壁を克服しやすくすることなのです。たとえば人々は、以下のような理由から行動を起こせません。

  • 忙しすぎる場合や怠け者である場合。行動を簡単に行えるようにする必要があります。
  • 行動に起こすべきだという確信を求めている場合。実行するように説得する必要があります。
  • 間違うことを恐れている場合。安心感を与える必要があります。

慈善活動はこのわかりやすい例です。私たちは皆「寄付したい」と言いますが、それを行動には移しません。寄付するためには、上記のような障壁を乗り越える必要があるからです。時間やお金などが障壁になります。

寄付しやすくしたり、労力を見えなくしたり削減したりできたのなら、そのとき私たちは仕事を達成したと言えます。たとえば、クレジットカードでも慈善活動として寄付できるようにしたらどうでしょうか。

私たち人間は矛盾した存在です。自分のやりたいことをいつでも行うわけではありません。また、興味のあることばかりを行うわけでもありません。

なぜ人は自分のやりたいことを行わないのか

人は心の中に葛藤を抱えています。私たちデザイナーは、この葛藤を解消する手助けをすることができます。この葛藤は、知性と爬虫類脳(編注:本能をつかさどる脳)の間に生じるものです。爬虫類脳とは、人間の脳の中でもっとも原始的な部分です。瞬間的に作用し、もっとも基本的な生存に関する特性をつかさどっています。

知性と爬虫類脳の間で、人間の中で葛藤が生まれます。私たちデザイナーは、知性が勝つように手助けをすることができます。

ダイエットが持続できないのは爬虫類脳の作用のせいです。爬虫類脳が瞬間的に作用して、私たちは食べたあとの結果に気が向かなくなります。また、お金に余裕があっても購入を妨げるのも爬虫類脳の作用です。これは爬虫類脳がお金を失いたくないと考えるからです。爬虫類脳は近くのものしか考えられず、ほとんどの怠ける原因になります。

デザイナーとしての私たちの仕事は、爬虫類脳に打ち勝つ手助けをすることです。募金であれ臓器提供であれ、旅行に行くことであれ、ユーザーがしようと思うことをしやすくしてあげましょう。行動を妨げている障壁を取り払えるように爬虫類脳を操ることは、何も問題もありません。

自分自身をだまさないこと

しかし私たちは、自分自身をだまさないように注意しなければなりません。私たちが歩くべき、正しい道が存在します。強制することと障壁を克服しやすくすることは、まったくの別物です。しかしときに、この2つの違いを見きわめるのが難しいこともあるでしょう。

ハイビジョンTVを購入するのを不合理に嫌がっている人に、克服する手助けをするでしょうか? または買える余裕のないものを購入するよう強制しているでしょうか? 私たちがデザイナーとして考えなければならないのは、このようなモラルの問題です。


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