機能に優先順位をつけるための5つのテクニック

Neil Turner

Neilは、イギリスのAstraZenecaで働くUXデザイナーです。現在さまざまなUXデザインのプロジェクトを率いています。

この記事はUX for the Massesからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

5 techniques for prioritising features (or user stories) to try out

「どれが『なければならない』機能で、どれが『あるべき』機能で、どれが『あってもいい』機能ですか?」

「全部なければならない機能です。」

「全部ですか?」

「はい、絶対にすべての機能がなければなりません。」

「本当に? 全部ですか?」

(ショックのあまり心の中で悲鳴を上げる)

このような話に聞き覚えはありませんか? このような場面に出会った人は、おそらく私のように、製品や企業のオーナーなどの困った人に泣きつくことはせず、心の中で悲鳴を上げたでしょう。

機能に優先順位を付けることは、Webサイトやモバイルアプリはもちろん、トースターや草刈り機にいたるまで、あらゆる製品のデザインや開発において重要なステップです。その製品が何をするためのもので、どのような機能があるべきで、どの機能に重点を置くべきなのかを正確に判断しなければなりません。「そのトースターにホットケーキモードは必要か?」などの、答えにくい質問に答える必要もあるでしょう。

機能に優先順位を付けることは、とても重要ですが簡単ではありません。少なくとも正確な優先順位を付けるとなると容易でないでしょう。多くのチームは、従来のMoSCoW分析(「なくてはならない」、「あるべき」、「あってもいい」という判断)を使っています。

しかし、私の経験上、MoSCoW分析はそれほど有効ではありません。「なくてはならない」「あるべき」「あってもいい」機能を特定できたとしても、その「なくてはならない」機能には、何が「なくてはならない」のでしょうか? どの機能を最初に構築するべきでしょうか? どうしていつもすべての機能が「なくてはならない」に分類されてしまうのでしょうか? 機能やユーザーストーリーに優先順位を付けるにしても、実践するべき5つの優先順位を付ける手法が存在します。

「機能の購入」をする

「機能の購入(Buy a feature)」は、機能の費用対効果を考えることを身につかせることができる、とても良い優先順位付けの手段です。考え方はいたってシンプルです。機能を導入する複雑さに応じて、相対的に機能のコストを決めます。

たとえば、ある機能に50ポンド(ドル、ポイント)の価格を付け、ほかの機能には25ポンドと付けたとします。ここで確認するべきなのは、それぞれの機能に対して相対的にコストを決定をしていることです。そのため、2倍のコストをつけた機能は、導入するのが2倍難しいものになります。

もしユーザーストーリーとストーリーポイント(編注:ユーザーストーリーを実装するのに必要な作業量)の作業を行っているのなら、単純にストーリーポイントをコストとして使うことができます。

すべての機能のコストの見積もりをしたら、製品のオーナーやユーザー、企業のオーナーなどに予算の総計を提示します。そして彼らに、湯水のように資金を使って機能を買い続けたいかどうか聞いてください。購入された機能を把握して、「なぜ買ったのですか?」と聞くべきです。そうすることで、購入理由をしっかりと理解することができます。

「機能の購入」についてもっと知りたい方はこちら

優先順位ポーカー

優先順位ポーカーは、優先順位を付けるための優れた手法です。これはプランニングポーカーの改訂版で、同じようにプレイすることができます。また、ラスベガスのカジノにいるポーカーの名手になりきって仕事場でカードゲームをする言い訳にもなるでしょう。

それぞれのプレイヤーには、機能に対して使用できる優先順位カードのセットが与えられます。普通、与えられるカードは1~5と「わからない」と書かれたジョーカーです。ジョーカーは、決断できない人がいたり、さらに情報が必要であったりするときのためです。あなたはそれぞれの機能を順番に取り上げ、プレイヤーが優先順位を決められるように機能の解説をします。プレイヤーはそれぞれの機能に対してカードを選択して、裏返しのままでテーブルに出します。すべてのプレイヤーがカードを出したら、全員で同時にカードを表にします。そして優先順位について議論し全員の合意を得ましょう。

この手段の本当に優れている点は、全員が納得する優先順位ではなく、合意または決裂にいたるまでのディスカッションにあります。またカードを裏にして出すことで、HiPPO効果(Highest paid person’s opinion)を防ぐことができます。これによって、もっとも権力のある人やもっとも声の大きい人によって、優先順位が歪められることがなくなります。

優先順位ポーカーについてもっと知りたい方はこちら

ペアワイズ比較(一対比較)

あなたの考えるアクション映画トップ10は何ですか? この質問は簡単ではないでしょう。なぜなら、大量の優先順位を付けるのは難しいからです。1度にたくさんのことを考えなければなりません。どれが1番良い映画でしたか? 2番目はどれでしょうか? ではその次は、そのまた次は? 決めごとが多くなればなるほど、決めるのが難しくなります。きっと頭が痛くなって、暗い部屋で横になる時間が必要になるでしょう。

大量のものを1度に評価するよりも、1回に2つだけのアイテムを比較するほうがはるかに簡単です。たとえば機能Aは、機能Bより優先するべきでしょうか? この狭い範囲での比較が、ペアワイズ比較です。すべての順位を1度に付けようとするのでなく、それをたくさんのペアに分割するやり方です。そのため、この名前が付けられました。まず機能Aと機能Bを比較し、しその次に機能Aを機能C、そして機能Dなどと比較します。最終的にすべてのペアを比較するまで続けましょう。

これは長くて骨が折れそうなプロセスに聞こえますが、実際には比較があっという間に終わることに驚くでしょう。ある機能が別の機能より優先されたら、その機能に1ポイントを与えます。そして、すべての機能のポイントを合計したら、優先順位リストのでき上がりです。

ペアワイズ比較法をもっと知りたい方はこちら

「Wow」「How」「Now」「Pow」手法

機能の優先順位付けの作業は、表層的なものになりがちです。問われるのは「ビジネスの価値は何か?」、「ユーザーにとって一番重要なのは何か?」というものだけです。そして、ここに問題が生じます。なぜなら、機能は複雑であるからです。機能を比較する際には、その機能が企業とユーザー双方にもたらす利益だけでなく、その機能を導入するコストも考慮すべきです。

往々にして、スペースシャトルよりもコストがかかるような、大変革が必要な機能ほど魅力的に見えて、比較的導入しやすい機能は無視されてしまします。しかし、かけたコストに対して少しの利益しか得ることはできません。そこで、「Wow」「How」「Now」「Pow」(略してWHNP)手法の出番です。

「Wow」「How」「Now」「Pow」手法では、縦軸にユーザーと企業双方に対する影響力、横軸に導入コストを設定して、機能を配置していきます。そして機能が以下のどのグループの中に当てはまるかを検証します。

  • WOW機能(影響力大、低コスト)―影響力が大きくコストが低い機能で、重点を置くべき機能です
  • HOW機能(影響力大、高コスト)―影響力も大きくコストも高い機能で、いかに導入コストを下げるべきか考えるべきものです
  • NOW機能(影響力小、低コスト)―製品を徐々に改善するために、すぐに導入するべき機能です
  • POW機能(影響力小、高コスト)―バットマンのように、「Pow」のパンチで取り除くべき機能です

WOW HOW NOW POW手法をもっと知りたい方はこちら

機能のトップトランプ

子どもの頃、トップトランプというカードゲームで遊んだことはありますか? このゲームには、より高いスコアのカードを相手に見せて、誰がボスかを示すときのドキドキ感があります。トップトランプは子どもにとって素晴らしいゲームであるだけでなく、機能の順位付けをするのにもとても良いゲームです。やり方は以下の通りです。

編注:トップトランプは、イギリスのカードゲーム。カードに書かれているパラメータから1つを選び、相手の数値と比べて競います。

まず機能のトップトランプのパラメータを決める必要があります。これは、その機能にスコアを付けたり評価したりする方法になります。パラメータには次のようなものがあるでしょう。

  • ビジネスのゴールと望まれる結果(ユーザーの保有率や利用率など)
  • ユーザーの価値観(大好き、好き、大嫌いなど)
  • 導入のしやすさ(数値が高いほど導入しやすい)
  • デザインの方針(シンプル、ワクワク感など)

次に、それぞれの機能につき1枚のトップトランプのカードを作ります。それぞれのカードには、機能の名称と説明、任意の画像やイラスト、パラメータのスコア(10段階)、そしてトータルスコアが記載されていなければいけません。トータルスコアによって機能に順位を付けることもできますが、さらにそれぞれの機能を比較して、トップトランプのバトルを再現することも可能です。もっとも良かった機能を優先しましょう。

機能のトップトランプをもっと知りたい方はこちら


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