ステークホルダーも自分と同じ人間である

Tom Greever

トムは、ウォールマート、Tモバイル、ウェルズファーゴなどのクライアントを持つウェブとモバイルアプリの制作会社BitoviでUXディレクターをしています。彼は、小さな代理店から会社内部のチーム、またはフリーランサーと、様々な環境で15年もインターフェイスをデザインしてきました。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Stakeholders are People Too
この記事は、以前掲載した「ステークホルダーとの共感を育む4つの方法(前編)〜(後編)」を再編集したものです。

ジムは数年前私のところで働いていました。彼は若くて情熱的なデザイナーで、自分が信じるミッションを推し進めるため、ある非営利団体の新しいプラットフォームを構築していました。彼はユーザー中心のアプローチを採っていたので、いつもユーザーを第一に考えていましたが、同時に傲慢でもありました。

ステークホルダー(出資者や利害関係者)や幹部の方々が疑問を呈し、批判をすると、彼は自己防衛的になりました。彼は、ステークホルダーには分からないのだ、と思いました。そして、「あなたはユーザーではありませんよね。」と言い聞かせました。しかし、ステークホルダーたちの懸念に注意を向けなかったので、彼の言い分は言い訳としか受け取られませんでした。

最終的に、ジムのプロジェクトへの資金調達は打ち切られ、彼は仕事を失いました。彼はユーザーを理解していたし、才能もあったのですが、自分のステークホルダーに対する共感を持てなかったので、エンドユーザーを助けることができませんでした。彼は、成功の鍵を握っている人々を理解しなかったので、結果として彼らの支援を失ったのです。

これは、不幸な(しかし本当の)話で、多くのデザイナーのスキルセットに欠けていると考えられるものを示してくれています。それは、ステークホルダーの要求や期待に共感する能力です。

共感が行動を促す

「共感」は、今UX業界では大変な流行語です。デザイナーがユーザーに対する本当の共感を持つことができたら、もっと良いアプリケーションが作れるという考えを支持する本やブログ記事がよく見られます。それは本当ですが、ステークホルダーについてはどうなのでしょう? デザイナーがプロジェクトを成功させるための支援を得ようとするなら、プロダクトオーナーやビジネスアナリスト、そして幹部に対してさえ、共感しなければなりません。

共感が重要なのは、それが単なる理解を超えるものだからです。共感は、行動するよう動機づけられるほどに他人の体験を共有できる能力です。共感は、不正から市民権を守る力となっています。それは、がんに対する認識や支援を向上させるためのイベントが行われる理由です。それがあるために人々は気遣い、行動を起こすのです。共感は理解の究極的な形です。

共感を育むことは、プロジェクトをステークホルダーの視点で見て、しばしばプロジェクトに見られる防衛的、防御的感情を捨てることです。共感できるデザイナーは、ステークホルダーの提案は現実に基づいており、重要であることを受け入れます。デザイナーが共感を持っているときは、ステークホルダーの視点を理解できるだけでなく、実際の行動に駆り立てられるのです。彼らは、ユーザーの苦痛だけでなく、ステークホルダーの苦痛も感じるので、自分のデザインを修正したくなるのです。

これは、デザイナーがステークホルダーの提案にすべて従わなければならない、という意味ではありません。単にコミュニケーションの優先度が自己防衛から団結心に切り替わったということだけです。ステークホルダーとデザイナーは、同じチームにいて、同じゴールを達成しようとし、同じビジョンを抱いているのです。

共感を育む

他の人に対する共感を育むことは、その人を知るということを意味します。デザイナーがステークホルダーの要求を効果的に満たすためには、時間をかけて彼らの役割や、個人的な興味、好みといったものを理解する必要があります。共感に向けたプロセスは、単にステークホルダーも人間であることを思い出すこと、質問をすること、彼らと共通の体験を作ること、関係の構築に寄与するような方法で彼らが必要としていることについて考えること、などが関係します。

ステークホルダーも自分と同じ人間である

最初のステップは簡単です。ステークホルダーも人間であることを思い出すことです。チームに参加している人々も、現在のプロジェクトから注意をそらしかねないこと(生活のこと、仕事のこと、人間関係のことなど)に対処しています。その結果、彼らの態度や反応は、意見を述べている対象より、会議の外のことに関係があるかもしれないのです。

デザイナーは、プロジェクトから一歩引いて、プロジェクトに関わるメンバーについて考えてみる必要があります。彼らの名前や顔や役割を思い出してみましょう。彼らはそれぞれ掛け替えのない個人なのです。彼らは皆、感覚や感情や、今の毎日に影響を与える過去を持っているのです。彼らの一番重要な関係は、友達や配偶者や親、または子供といった、仕事の外にあります。彼らは仕事が終われば、病院にいる家族に会いに行ったり、子供を陸上の試合に送り迎えしたり、残りの夜を一人でテレビを見て過ごしたりするのです。

デザイナーは、自分の仕事に対する人々の反応はデザインとは何の関係もないかもしれないことを知る必要があります。必要な回数だけ止まって、プロジェクトに参加している人々を見て、思い出してください。彼らも人間なのだと。このように考え方を切り替えるだけで、他の人に対して辛抱強くなれたり、ステークホルダーの要求を満足することに集中できたり、新しい考えを受け入れたりできます。その結果、デザイナーは意見に対し、生産的に対応できるのです。これが団結心を生みだすための最初のステップです。

質問をする

ステークホルダーに対する共感を育むのに一番いい方法のひとつは、彼らに質問することです。ユーザーインタビューと同じテクニックを使ってステークホルダーが必要としていることを理解しましょう。イエスかノーで答えられる質問は避けるべきですが、かといって、通常の社会的な行動を超えてはいけません。単純に、彼らが伝えたいことを伝えてもらうようにしましょう。一般的な質問から始めましょう。

「最近なにかいい映画を見ましたか?」

「今週はどんな予定ですか?」

「最近どうしていますか?」

このような基本的な質問はありきたりに思えるので、かなり無視されがちですが、どんな状況でも使えるのです。さらに、こちらが耳を傾けていることがわかるような方法で、彼らの個人的な関心について質問してみましょう。

「先週のプレゼンはどうでしたか?」

「お子さんの具合はよくなりましたか?」

「天文学がお好きでしたね。望遠鏡を買う場合のアドバイスをしてくれませんか?」

深い質問をすることで、共通の関心があることがわかります。しかし、我々はさらにそれより深く入り込みます。現在のプロジェクトに関する質問をすることは、ステークホルダーのゴールや、そのゴールがデザインに対する彼らの反応にどのように影響しているかを理解するためのよい方法です。

「どのような場合にプロジェクトが成功したと考えますか?」

「このプロジェクトに関する問題のなかで、なにが一番あなたにとって不満ですか?」

「このプロジェクトでやめたほうがいいと思うものはなんですか?」

概して、多くのよい質問をすることが、ステークホルダーへの共感を育むための鍵となります。

共通の体験を作る

次に、デザイナーがステークホルダーと共感するためには、共通の体験を作る必要があります。他人の視点で見ることができないということは、多くの場合、共通の関心や体験がないことから生じています。我々は全員、他人と何らかの共通点を持っています。鍵となるのは、このようなつながりを作る方法を見つけることです。特に、コミュニケーションの断絶や誤解が起こったとき、ステークホルダーと共通の体験を持つことは、皆が同じチームに属していることを思い出させることになります。共通の土台があれば、誤解を克服するのは容易なのです。

共通の体験を作るには簡単な方法がたくさんあります。ランチに出かけたり、一緒にお酒を飲んだりするだけでも効果があります。会話の内容は、仕事であれ、人生であれ、最新のテレビ番組であれ、なんでもいいのです。遠くに離れたチームの場合は、まるでデスクに立ち寄るように、チャットやビデオで挨拶するだけでもいいでしょう。大切なのは、会話から、エゴや分刻みの仕事のプレッシャーを取り除くことです。いつもチームとして働いている環境以外のことで、何かを一緒に積極的に体験するのです。

共通の土台を見つけることも、何気ない会話を始めることと同様に簡単です。たとえば、彼らは最新のモバイルデバイスを持っているかもしれないし、人気のブランドを身につけているかもしれないし、デスクの上にパリからのお土産が置いてあるかもしれません。意識的に会話をして、共通点を指摘することは、共感を育むのに役立ちます。しかも、それはステークホルダーに対し、我々デザイナーもピクセルを動かしているだけの人間ではないことを示してくれます! 我々も人間であり、お互いに関係を築くことができれば、もっと容易に一緒に働くことができるのです。

彼らが必要としているのはなにか

最後に、デザイナーはステークホルダーの視点から物事を見ようとすれば、彼らの必要としていることについて考えなければなりません。共感を育むには、他人が必要としていることを重視した考え方を持つことが必要です。他人のためにちょっとしたことをするだけで、彼・彼女は尊重されていると感じることでしょう。

デスクに立ち寄ったり、コーヒーに誘ったり、メモを残したりするだけでもいいかもしれません。もう少し踏み込むなら、プレゼンを手伝ったり、会議でメモを取ってあげたり、デザインに関して感想を伝えたりしましょう。人のために役立とうとすると他人の視点から見ざるを得なくなりますし、これは会話だけでは不可能なことなのです。

私があるクライアントのオフィスをよく訪ねていたとき、ジェニファーのデスクの近くに寄ったらメモを残すことを習慣としていました。「トム(私)が来たよ」とか、「ジェニファーはすごい!」とか、メモは馬鹿げたものでしたが、そのあとで、彼女はすべてのメモを取っておいていたことがわかりました。私のメモがほほ笑ましいので、取っておいて時々読んだ、というのです。おそらくこれが理由で、ジェニファーと働くことはいつも楽しく、プロジェクトで彼女と意思の疎通をすることはいつも容易でした。私は彼女を個人として尊重する時間を取っていたため、彼女はいつも私の強い味方の一人でした。

小さな(そして適切な)贈り物をあげるのもこの種の関係を築くためのいいアイデアです。多くの会社は贈り物を贈ることについて方針を定めており、これは賄賂のつもりではありません。しかし、小さな贈り物を贈ることは、個人的なつながりを作って共感を促すことにより、関係を強化することができるのです。私はかつてあるクライアントがサルサソースが好きだとネットに投稿していたのを見て、地元で作ったサルサソースを一瓶プレゼントしたことがあります。それは小さな行為でしたが、我々が二人とも同じチームに参加しているという感覚を生みだし、私は彼の世界を垣間見ることができました。

このような価値観を表現し、共感に満ちた雰囲気を高めるためには、以下のようなことをしてはいかがでしょうか。

・プレゼンのスライドを作る手伝いを申し出る

・会議に早めに着いて、準備を手伝う

・チームの次の会議にお菓子や飲み物を持っていく

・少し時間をとってオフィスを歩き回り、みんなに挨拶する

・休暇中に、チームのみんなのために小さなプレゼントを買う

・感謝の気持ちを表す手書きのメモを渡す

デザイナーは、ステークホルダーが自分だけでは作ることができないものを作るというサービスをするためにチームに加わっているのです。デザイナーがなにかをしてあげたり、小さな贈り物をあげたりすることによりこのサービスの姿勢を示せば示すほど、成功に直接影響を与える人々の視点で見ることができるようになり、デザイナー自身が成功する確率も高くなるのです。

流行語を超えて

ステークホルダーと共感するためには、デザイナーはプロジェクトに参加する人々の見方を理解しなければなりません。

・彼らも人間であることを思い出しましょう。彼らも生活のなかで、他に予測できないことをいろいろ抱えているのです。

・たくさん質問をしましょう。人をよく知る一番の方法は、その人についての質問をすることです。

・共通の体験を作りましょう。他の社会的な場面で一緒に作業をする機会を設けて、共通の土台を作りましょう。

・彼らが必要としていることについて考えましょう。何か親切をしてあげたり、小さな贈り物をあげたりすることは、人々を尊重する環境を作るのに役立ちます。

デザイナーがステークホルダーと効果的にコミュニケーションを取ろうとするのなら、ユーザーに自分を重ね合わせるときと同じスキルを使う必要があります。ステークホルダーとの共感を育むことは、自分の要求だけでなく、ステークホルダーの要求を満たすように自分のデザインを位置づけることにつながります。最終的には、よい関係を築くように集中することが、よいコミュニケーションのチャンネルを作り、うまくデザインのプロセスを進めるために一番重要な要因なのです。


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