アクセシビリティ検証の結果を受けて行った弁護士ドットコムの改善

弁護士ドットコム株式会社

日本最大級の弁護士検索・法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」を運営しています。

この記事は、弁護士ドットコム株式会社による寄稿記事の後編です。
【前編】弁護士ドットコムにおけるアクセシビリティ改善のファーストステップ
【後編】アクセシビリティ検証の結果を受けて行った弁護士ドットコムの改善

前回のアクセシビリティの検証を通じて見えてきた弁護士検索サービスの課題にどのように取り組んでいくのか、意見を持ち寄りました。

登場人物
司会 :太田 良典/弁護士ドットコム アクセシビリティエンジニア
参加者:佐伯 幸徳、山本 香織、金子 剛、青木 麗紗(弁護士ドットコム UX/UIデザイナー)

アクセシビリティはユーザビリティ、障害の有無を越えて

太田:先日の検証について、どのような感想を持ちましたか?

山本:マークアップでの文書構造が大切なのは認識していましたが、厳密さをそこまでは意識しておらず、いつの間にか「それなりにHTMLの文書構造が違和感なければいいや」となっていましたが、HTMLの文章構造がいかに頼りにされているのかという必要性を実感できました。中根さんは、HTMLの知識が豊富でいらっしゃるので、想像以上にサイトを使いこなしていただけましたが、障害の重さやリテラシーの高さによっては、もっと使いにくいと感じる方も多いと思います。

佐伯:マークアップの中でも、見出しの階層をh1、h2など適切なレベルになるようにマークアップしないとわかりづらいということでしたが、モジュール的な共通パーツを組み合わせてページを作る時は、各ページでの文章構造に合わせたマークアップにすることが難しい場合もありますよね。見た目と構造を両立させることは難しいですが、解決方法を考えていきたいです。

ラベルのわかりやすさは、ユーザー様の障害の有無にかかわらず、大事なことだと再認識しました。だからこそ、しっかりと作れば、誰にとってもフレンドリーなサイトになれるのだと確信できましたね。

実現可能性と効果のマトリックスでできることから改善を

太田:具体的には、どのような改善ができると感じましたか?

金子:一般的に、サービスの運用を続けていると、機能が後からどんどん追加されて情報量が過多になってきます。この弁護士検索サービスも同様だと思いました。特に、スクリーンリーダーを使う方は、ノイズとなってしまう情報を避ける事が難しいのではないか、ということが検証で見えてきたので、優先度の低いものは削除して、シンプルな構造にすることが必要だと感じます。

中でも、検索結果画面でリンクの一覧が2回ずつ表示されたり、SEOを意識して設置している長いテキストが繰り返し表示されたり。こういったものは、HTML構造の修正で無理に調整するよりも、そもそものサイト設計を見直すことでなんとかならないかな、と思いますね。

佐伯:検索結果の画面には課題が多いですね。実際に中根さんに、弁護士を検索していただいた時、「ITや障害者問題に強い弁護士」という強みを持つ弁護士を探したかったのに、検索結果では、まず名前、住所、事務所名が出てきて、最後に強みという並びです。見た目としては問題ありませんが、視覚的にとらえられない方にとっては差別化要因を得ることが難しい画面になっていました。

検索結果ページ上部の検索条件を変更するリンクも、検索結果に至るまでの障害となっていましたね。とはいえ、Googleなどから流入したユーザー様にとっては、意味のある情報でもあります。使い方はユーザー様それぞれなので、公約数的な方法をとっているのですが、どこでバランスをとるのかが難しいと改めて感じました。

山本:分野で選べない悩みを抱えた方の場合に検索が難しいというのは、以前から抱えている大きな問題です。フリーテキストで検索できるようにするのも選択肢の一つではありますが、コンテンツ側で、それに対応できるようなテキストを用意できていないという問題もあります。今回のように「障害者/IT/知財」と入れても、ひっかかる弁護士はいないかもしれません。ユーザー様一人ひとりのお悩みにあった弁護士を探してあげるというようなコンシェルジュは、弁護士法第72条*で禁止されていますしね。

弁護士本人に、検索されたときに引っかかるキーワードを設定してもらうというのも一つの方法かもしれません。

佐伯:これって、「ユーザーにちょっと無理してもらったら使えるかな」という自分たちが決めた枠の中で運用してしまっていたんですよね。それを中根さんにはっきりとご指摘いただいて、目が覚めました(笑)。

*弁護士法第72条
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

継続は変化への第一条件、組織を巻き込んで次へのステップを

― 課題は尽きませんが、工数の大小と、効果の大小を考慮して、できるものから取り組んでいかなければなりません。

アクセシビリティ上の課題を整理した図

青木:ちょっとした言葉の言い回しについては、すぐに修正が可能です。たとえば、電話番号が電話番号と認識されなかった。これは、電話マークのアイコンにaltテキストで「電話番号」と入れます。こういう細かいところこそ、意識しなければいけませんね。

お問い合わせフォームの記入欄では、「氏名」の次に「ふりがな」という項目がありますが、平仮名かカタカナなのかがわからなかった。これは「ふりがな (ひらがな)」という記載に直したいですね。

課題を受けて、今回改善されたこと

① 弁護士プロフィールのメニューのタブをスクリーンリーダーに対応させる

② 弁護士検索結果のリンク被りを一つにまとめる

③ 電話番号と確信できるようにする

金子:ユーザビリティやアクセシビリティに取り組むには、組織の中で決定権を持つ方々に課題として感じてもらわなければ、なかなか前に進まないという側面もあります。次回のアクセシビリティ検証には、ぜひ社長や役員の方々にも参加してもらいましょう。

太田:以前は、アクセシビリティというとコーディングにかかわるエンジニアの役割だと思われていましたが、近年ではインターフェイスにかかわるデザイナーが強く問題意識を持つようになりました。けれども、企画や戦略といった上流から理解してもらうことができれば、もっとスムーズに取り組みは進んでいくと考えています。継続してPDCAを回していきましょう。

今後は、ロービジョン(弱視)の方を招いて、アクセシビリティ検証を行う予定です。すべての人にとって「専門家をもっと身近に」するために。これからも、弁護士ドットコムのアクセシビリティへの取り組みは続きます。

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