アプリの個人開発者にとって、リソースが限られている中のUXデザインの実践は難しいイメージがあるかもしれません。
ペルソナやカスタマージャーニーなどのUXデザイン手法は企業内のデザイン現場では実践されているイメージですが、これらの考え方は個人開発の現場でも活用できます。
この記事では、個人開発でアプリ内課金ありのゲームを作ると仮定した場合の、簡易ペルソナの作り方を紹介します。
ペルソナとは
ペルソナとは、自分のアプリやサービスを使うことが想定される、架空のユーザー像のことを指します。
ペルソナはただ想像でユーザーを思い描くのではなく、データやアンケート、インタビューなどで取得した定量的なデータと定性的なデータの両方を用いて、構成していきます。
職業、性別、家族構成などの定量的な情報はデータやアンケートなどで、より多くのデータを集めて判断します。性格や趣味趣向など、より個人的で定性的な情報はインタビューによって深掘りしていきます。
ペルソナを作ると何が良いのか
さて、実際の個人開発の現場において、どのようにペルソナが役に立つのでしょうか?
よりユーザーの目線に立てる
四六時中、自分たちのアプリに向き合っている開発者にとって、ユーザー目線で自分たちの成果物を見るのは至難の業です。アプリのさまざまな部分に対して「ペルソナの立場に立った場合、これでいいんだっけ?」と問うだけで、独りよがりな状態から脱することができます。
チーム内で話す「ユーザー」が明確になる
複数人で開発しているプロジェクトの場合、往々にして「ユーザー像」はブレています。たとえば「40代男性」だけでは全くイメージの共有ができず、議論もあっちこっち行ってしまいます。ペルソナの人物なら、○○な環境にいるからきっと○○な行動を取るだろうなど、よりストーリー性のある議論により、メンバー間のイメージの共通化を図れます。
施策を落とし込みやすくなる
例えばアプリの通知を行いたい場合、何時に送るのがベストか? のような悩みが出てきます。そんなときは、ペルソナのユーザーがどのような生活を送っているかを考えてみるのがいいでしょう。通勤時に送るのが良いのでしょうか? はたまた家族との夕ご飯を終えたタイミングを狙ったほうが良いのでしょうか? さまざまな仮説を立てて、検証しやすくなるはずです。
データから定量的な情報を得る
ペルソナづくりのファーストステップは定量的な情報を得ることです。
今回はアプリの課金ユーザーのペルソナを考えるとしましょう。
アプリをプレイしてくれるユーザーは普段どういったアプリで課金プレイをしているのでしょうか? また、自分の企画で想定しているターゲットは果たしてアプリ課金という観点でアクティブなのでしょうか?
こういった問いを細かく詰めていくと、意外と知らないことも多いのではないでしょうか。そこでまず、データを見ながらユーザーのセグメントを探っていきます。
今回は個人開発者でも簡単にアプリ内課金を実装できる「itemstore」から、実際の購買データを参照しました。
Unity, Android, iOSアプリにアプリ内課金[In-App Purchase]を最短10分で簡単実装できるサービス。課金UIの実装から補填などの対応までワンストップで行える。
データによると、課金ユーザーの実態として以下のような点がわかります。
・課金額と課金率ともにゲーム、特にロールプレイングが抜きんでており、他のアプリの2倍近い差をつけている。
・ロールプレイングの平均課金額は¥3,570。最も売れている課金商品は「武器装備などの強化」。
・課金帯は300円のものが最も多く課金されているが、売り上げに貢献しているのは9800円の価格帯
・課金する8割強が男性で、3~40代が57%と過半数を占める。40代がもっとも多く、31%。
・初めて課金する金額は100円~500円が過半数。8割以上のユーザーがアプリを始めて1ヶ月以内に課金している。
参考:課金ユーザーのアプリ内課金利用実態【中・小規模アプリベンダーと個人開発者向け】
特に40代の方に関してはユーザーの3人に1人は課金をしていることになりますので、彼らのインサイトを探ってみるのがよさそうです。
インタビューでより定性的な情報を得る
データを元に課金ユーザーとして、40代男性というセグメントに着目したとします。
では、40代でゲームをプレイしている男性はどんな方でしょうか。ライトなアプリユーザーなのでしょうか、それともヘビーなゲーマーなのでしょうか?
先程の定量的なデータでセグメントをある程度絞ったら、今度はより具体的な情報を得るためにインタビューをします。
インタビューで得たい情報
インタビューでは先程の購買データではわからない、文脈(コンテキスト)を探りに行きます。
40代のスマホユーザーというのはどういった生活をして、どういったタイミングでどんなアプリをプレイしているのか? など今回のテーマに関わりそうな周辺の情報をインプットしていきます。
一般的にインタビューの場合はセグメント毎に5名程度、話を聞くと良いと言われています。
インタビュー例
以下の表は、実際に40代男性5名を対象に、編集部で実施した簡易的なインタビューの結果です。
このような簡単な質問だけでもいくつか気づきを得られます。想定通りのものもあれば、思っていたイメージと少し違う実態も見えてきます。
先の調査にもあったように、カジュアルなパズルゲームなどより、割とヘビーなゲームが好んでプレイされており、それらを通勤時にプレイしている、などより具体的な情報が集まります。
ここから得た情報からさらに具体的な情報を引き出すこともできるでしょう。実際のインタビューでは作りたいゲームなどによって、業種や属性を調整し、より深掘りした質問などをしていきます。
ペルソナを作る
今回のデータとインタビューを参考に簡易ペルソナを作ってみます。
必要最低限の問いに答えるような形ですので、今後開発において、必要な情報があれば随時付け足すこともあるかもしれません。
詳しくかけば書くほど人物像をはっきりと定義できますが、そのためにはより深いインタビューなどが必要となってきます。どこまで詳しく書くかはケースバイケースですが、この人物の背景にある物語や感情などを把握するのが狙いなので、一人の人物として行動を説明できる程度には詳しく書くのが理想です。
よりユーザー目線で開発するために
個人開発者でも簡易的なペルソナを作ることで、よりユーザー目線で開発ができるようになります。大掛かりなユーザーインタビューなどはやらずとも、データによってセグメントを定め、効率よくヒアリングするだけでも発見や気づきを得ることができます。
個人開発アプリにおいて、開発者はアプリ全体のユーザー体験を考えなければなりません。そして中でもマネタイズの設計は、特に難しく、よりユーザーの心理を深く知る必要があります。
ユーザーを知る一つのツールとして、ぜひ簡易ペルソナを活用してみてはいかがでしょうか?
アプリ内課金ユーザーの実態をもっと知りたい方は
今回参照したデータは、数々のアプリの課金環境を提供するitemstoreの実際の購買データを参照しました。itemstoreでは他にも個人開発者が課金に取り組みやすいよう、アプリ内課金に関する調査を行い、ブログで公開しています。
今回の基本的なアプリ課金者のデータの他にも、課金収益の貢献度が高い高額課金ユーザーへのアンケート調査など、課金アプリを開発する方にとって知っておくべき情報をたくさん提供していますので、定期的にチェックするといいでしょう。
itemstoreとは
itemstoreはスマホアプリにアプリ内課金を簡単に導入できるサービスです。システムの導入が簡単で、専用サーバー、ショップUIなども完備しており、アプリ内課金の仕組みがすぐに利用できます。アイテムを購入したユーザーに向けてプッシュ通知を送ることなどもできます。
デベロッパーが今まで工数を割いていた部分をまるごと肩代わりしてもらえれば、もっと新しい課金体験も生まれやすくなりそうです。サービスにご興味あるデベロッパーの方は是非チェックしてみてください。
提供:カイト株式会社
企画制作:UX MILK編集部