誰がインターネットをダメにしたのか?

Roxanne Abercrombie

Roxanneはライブチャットやビジネスプロセス自動化を専門とする英国に本拠を置くソフトウェアハウスであるParker Softwareのオンラインコンテンツマネージャです。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Who Broke The Internet?

インターネットを壊したのは誰でしょうか? インターネットには、ゴシップや嘘が溢れていますが、もちろんPAPER誌のKim Kardashian氏のようなセレブの写真によって壊されたのではありません(編注:同誌のBreak The InternetというコーナーにKardashian氏が登場した際、その過激な写真が話題になりました)。インターネットは、企業によって壊されているのです。

もしかしたら、あなたは最近オンラインでのユーザー体験がひどくなっていると気づいたかもしれません。デザインやコンテンツが突如として悪くなったのではありません。ジャーニーそのものが、だんだんと崩壊しているのです。これは、比喩でもあり現実でもあります。

訪問者を捕まえてコンバーションを達成することを目指して、企業は「エンゲージメント」の戦略をどんどん積み重ねています。しかし、その結果のほとんどはエンゲージメントからはかけ離れた苛立つようなものばかりです。私たちWebサイトの訪問者は、コンテンツの波にのまれています。しかも、そのコンテンツは欲しいものでも必要なものでもありません。

この不快なジャーニーが、Kardashian氏のきわどい写真以上にインターネットを破壊しているのです。

2018年の企業のWebサイトへの訪問

もはや企業のWebサイトを邪魔されずに閲覧することはできなくなりました。今では、以下のようなジャーニーがほとんどでしょう。

1. Webサイトを訪問する
2 . すぐさま出てきたインタースティシャルを閉じる
3. クッキーを有効にしろと言われる
4. アドブロックを無効化することを強いられる
5. 位置情報を提供しろと言われる
6. プッシュ通知を受け取るか聞かれる
7. 担当がチャットで話しかけてくる
8. e-bookのダウンロードを進められる
9. メルマガを登録しろと言われる
10. サイトの評価をお願いされる
11. …

どこかの時点で離脱し、そしてサイトを訪問することは二度とありません。

このように書いて読んでみると面白いかもしれません。しかしこのような状況におかれた場合、この苦痛なユーザー体験はまったく面白くないでしょう。

実生活と結びついたオンライン

私たちがサイトを閲覧するジャーニーがいかに破壊されているかは容易にわかります。ここ数年間、オンラインとオフラインの両方においてカスタマー体験が大幅に簡素化されています。現在75%の顧客が、ブランドに関わるあらゆる場面で、一貫性のある体験を期待しています。これはWebサイトやスマホ、対面のいずれの場合でもです。さらに75%の人たちが、過去の購入履歴を把握していて、それに基づいたレコメンドをしてくれるブランドから購入する傾向にあります。

サイトを活性化させることで、利益が生まれることは明らかです。そのため、あらゆる企業にとって、Webサイトにおける体験と対面接客における体験で一貫性を保つことは重要です。つまり、ブランドは快適で便利な、個人に向けたオンラインのユーザー体験を設計しなければなりません。

さらに、スマートテクノロジーがついに実現されるようとしています。

人工知能(AI)の発達とECツールによって、訪問者に合わせたパーソナライズができるようになりました。今では、Webサイトの訪問が実店舗に行くことと、それほど違わなくなったのです。つまり、私たちはWebサイト上で歓迎され、リアルタイムにサービスを受け、スペシャルオファーを貰うようになったのです。

それ自体は、十分な進歩でしょう。Webサイトは賢くインタラクティブになっており、以前よりも早く効果的にサービスを提供することができます。ところが、企業は限度を超えてしまいました。Webサイトの訪問者にとって魅力的なユーザー体験を作ろうとするあまり、多くのデジタル系企業が好ましくないジャーニーを作成してしまっているのです。

家具屋の問題

家具屋に行った際の苦痛を知っている人は多いでしょう。お店に入るとすぐに、愛想の良い店員がうしろについてきます。見ているだけですと言っても、その店員は店中であなたにつきまとってきます。あなたの周りをうろついて、絶えずあなたの目線を追いかけ続けて、5秒以上ソファを見ると厚かましく商品を勧めようとします。当たり前の結果として、想定より早くその店を去ることになり、入店時よりも不機嫌になるでしょう。

この体験は、今の多くのWebサイトを通した体験とさほど変わりません。押しの強い販売員の代わりに、ポップアップや許可のリクエスト、チャットへの招待、スライドイン広告、インタースティシャル広告などが表示されます。ポップアップやバナーによる全面攻撃が閲覧体験を破壊し、スクロールを阻害します。

良いものが多すぎる

Webのエンゲージメントに関して言うと、正しいバランスを保つことは言うほど簡単ではありません。結局、ちょっとしたエンゲージメントが素晴らしいものとなるのです。たとえば、あるポップアップではコンバーション率が50.2%も高くなることもあります。同じくWebサイト上でのチャットの招待では、105%のROIを記録することもあります

Webサイトの訪問者が根本的にマーケティング戦略を嫌っているわけではありません。事実、ユーザーを驚かせて喜ばすような巧みな事例はたくさん存在します。優れたポップアップが効果的に機能しているのは、適切なコンテキストにおいて適切なコンテンツが適切な瞬間に提供されるからです。Selzの例のように、見た目がある程度良ければ私たちは干渉を許容するのです。

ところが、私たちはこのことを忘れがちです。あるコンバーション戦略が結果を出しているのを見ると、Webサイト中に同じような手法を導入したいと思うのは自然なことです。そしてスクロールごと、クリックごとに訪問者を「エンゲージ」し始めます。こうして、すべてが崩壊してしまうのです。

ベストプラクティス

では、どのようにして押し売りすることなく、Webサイトでユーザーをエンゲージすることができるでしょうか? 以下に簡単なベストプラクティスをいくつか紹介します。

許可リクエスト

EU一般データ保護規則(GDPR)によりユーザーの権利に注目が集まっています。これはUXにとっても朗報です。新たな指針の元で、データ管理者(すなわち企業)は必要な顧客データを必要な範囲だけ処理しなければならず、必要な期間だけしか保管できません。

WebのUXに関して、これはユーザーへリクエストする許可と、そのリクエスト方法の両方を見直すときが来たということを意味します。許可要求は別々にし、オプトインをアクティブにする要求が必要です。そして、細かいオプションを提供することで、異なるオプトインに応じてユーザーが同意することができます。

またなぜ許可をリクエストするのかも明確にすべきです。たとえば、訪問者がいるエリアだけに関連するものを提供されることを知れば、位置情報へのアクセスをより許可しやすくなるでしょう。なぜサービスが許可を要求するのか理解するのは有益であるとアプリユーザーの82%が回答しました。またそれを心に留めておくこともWebユーザーにとって重要であると言っています。

何にしても、ユーザーがサイトに到着してから5秒後にプッシュ通知の許可リクエストを送るのはやめてください。コンテンツを推す前に、その価値を証明しなくてはなりません。

ポップアップ

ポップアップが有益なことは否定できません。しかしポップアップは許しがたいほどのストレスにもなります。(TripodのEthan Zuckerman氏はポップアップを開発したことを謝罪しました。)

優れたポップアップは、ユーザーがWebサイト内で十分滞在した後に、邪魔をしない瞬間に表示されます。目安としては、Webサイトを訪れてから60秒後や、平均滞在時間の60%の時点でのポップアップを出すのがもっとも効果的です。この段階までにユーザーは十分な興味を示しますので、表示が遅れてエンゲージの見込みを逃さないようにしましょう。

優れたポップアップは、閲覧しているページや訪問者に関連したわかりやすく魅力的なコンテンツです。オプトアウトするのはもったいないと恩着せがましいことはしません。魅力的なオファーやサービスを表示して、その提案に基づいた最小限の情報をリクエストしましょう。

また、画面全体を占有せずクリックで消しにくいようなことのない、見た目の良いものである必要もあります。(Forbesの巨大なすきま広告を見てみてください。)ポップアップは考慮して展開し、押し付けがましいものではなく魅力的なものにすべきです。

ダイアログ

Webサイトの訪問者向けにダイアログを作成するのは、どんな場合でも価値があります。チャットは、オンラインでウィンドウショッピングをする人たちをコンバーションさせる優れた戦略であり、実際チャットをしたユーザーは通常よりも4.5倍もの価値があります。さらに、チャットがあることで、購買が38%も向上しています。しかし、ユーザーにチャットを強要してはいけません。

ページをクリックするたび、またクリックしたあとにWebサイトの訪問者をチャットに勧誘するポップアップを表示してはいけません。再訪問するたびに、同じ自動メッセージが表示されるのをユーザーは嫌います。そのようなことをしなくても、ユーザーはWebサイトの右下でチャットを見つけることができます。

そのため、チャットへの招待は訪問者の役に立ちやすい場合にのみ使用してください。サイトを訪問したばかりの人は、おそらくまだ助けが必要ではないでしょう。一方でFAQに1分間滞在している訪問者は、サポートの提案を受け取ることで恩恵を受けるはずです。

同じようなアプローチが、フィードバックのためのフォームにも当てはまります。サイトに滞在している時間が30秒の訪問者はフィードバックをしたくないでしょうが、サイトの4ページ目にいる人や、長いブログ記事の最後に到達したばかりの人なら、よりフィードバックを提供したいと思うはずです。

オンライン上でデートしているように、訪問者へのダイアログの作成を考えましょう。あまりに急かしすぎてしまうと、訪問者はサイトから離脱してしまいます。しかし、関心に基づいて入力してもらうことで、意味のあるインタラクションの火付け役になりやすくなるでしょう。

インターネットの崩壊

私たちの大切なインターネットが破壊されています。セレブたちや彼らの資産のことは忘れましょう。企業やその攻撃的なエンゲージメント戦略が被害をもたらしているのです。

オンラインのユーザー体験に関して言えば、パーソナライズ化としつこさの間のバランスは微妙です。またエンゲージメントといら立ちの間のバランスも同じく微妙でしょう。多くのWebサイトは、きわめて重要な均衡をまだ見つけ出していないのです。

企業のみなさん、覚えておいてください。Webサイトをナビゲーションする場合、コンテンツをクリックしてほしいクリック数よりも、コンテンツを消すのに必要なクリック数のほうが多い場合、ジャーニーは大きく壊されてしまいます。


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