デザインの意思決定に関わる者は皆「デザイナー」か?

Paul Boag

PaulはUXデザイナーであり、デジタルトランスフォーメーションの専門家です。非営利団体や企業のWeb、ソーシャルメディア、モバイルを使ったユーザーとの結びつきを支援しています。

この記事はboagworldからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Is it a genuine shock to argue we are all designers?

多くの企業にとってデザインがビジネスの要になり、デザインの意思決定を行う人の数は急増しています。 しかし、これは従来のデザイナーの役割に対してどのような意味を持つのでしょうか?

最近私はJared Spool氏の、デザイン思考を経営の中心に組み込もうとする企業の動向を伝える、素敵なプレゼンテーションを見ました。

プレゼンテーション全体は、優れた体験を顧客が求める世界に適応しようとする際に、組織が直面する困難についての素晴らしいインサイトで溢れていました。その中でも、Jared氏のある一言が特に耳に残っています。

デザインの成果に影響を及ぼす人は誰でも、デザインの意思決定をしており、それゆえデザイナーなのです。

大規模な組織で仕事をした経験を持つ私にとって、この発言はとても共感できるものでした。実際に、デザインの訓練を受けていない人々が、企業におけるデザインの意思決定の大部分をしているのです。

「デザイナーではない人々」が毎日デザインの意思決定をする

このことについて少し考えてみましょう。デザインの多くの側面についての最終決定は、デザインの訓練をほとんど、あるいはまったく受けていない人の集団によって行われることがよくあります。サイトのトップページに表示されるものからブランディングまであらゆる意思決定がなされるのです。

また、同僚によってなされるデザインについての間接的な意志決定もあります。表示速度などのサイトパフォーマンス会社がWebプロジェクトに資金をいくら投じるかなどの決定は、すべてユーザー体験に影響するため、ある意味でデザインの意思決定といえます。

デザインは市場において企業を差別化する重要な要素であるため、このような状況はますます増えていくでしょう。デザインが重要なものになればなるほど、企業はより多くの意思決定をしなければならず、より多くのステークホルダーが関わるようになります。

私たちはデザイナーとして、どのようにこの事態に対応するべきでしょう。

デザイナーでない人の介入を拒否するべきか

私がTwitterでJared氏の引用文を共有した際に受け取った反応はとても興味深いものでした。回答の大半は、Jared氏のコメントがデザイナーという職種を毀損していると感じた「プロの」デザイナーからのものでした。曰く、デザインはプロの手に委ねられるべきであり、誰もがデザイン上の意思決定を下すべきであるという考えは恐ろしいと言うのです。しかし、それは現実的でしょうか。 

@ElanaKurtz
自分をデザイナーだと思っていないなら、デザインの意思決定に影響を与えるべきではないし、デザイナーに仕事も任せるべきではないでしょうか? …おっと。Twitter

「プロのデザイナー」がデザインに関連するすべての意思決定を行うという考え方はスケールしません。企業が雇う必要があるデザイナーの数を考えたら、法外な費用がかかることは目に見えています。

そして、もちろん私たちの仕事は多くの専門分野にまたがります。デザインの仕事とほかの分野の仕事の間に明確な区分はありません。その境界はぼやけていて、多くのコラボレーションが必要です。

つまり、答えは何でしょうか?

熟練デザイナーの将来の役割

プレゼンテーションにおいてJared氏は、最終的にはすべての従業員がデザインの意思決定を行うという考えを受け入れるべきだと主張しています。彼は、すべての人がある意味デザイナーになると説明します。

私はこの発言に100%賛成です。私たちはすでにそのような現実の中にいて、それについて愚痴をこぼしていても何も変わりません。非現実的で、可能性と視野が狭い役割を得るために戦うことは自殺行為です。

その代わりに現代のデザイナーの役割は、日常的に健全な意思決定をするのに必要なデザインスキルを持つよう、同僚に教育することだと私は考えています。正規のデザインの訓練を受けているデザイナーは、ピクセルをいじる時間を減らし、同僚に協力する時間を増やす必要があるというのが私の意見です。

それだけではなく、より重要なデザイン上の問題に対処し、デザイナーでない人が操作できるスタンダードを設定することに焦点を置く必要があります。 Jared氏は次のように言います。

もし誰もがデザイナーであれば、もっともデザインスキルの高い人は大きな問題を解決することになり、同じダイアログボックスの異なる25の状態を示すワイヤーフレームは作成しないでしょう。

彼の言う通りです。私たちデザイナーは、提供できる、提供するべきことがたくさんある中で、多くの時間を単調な仕事にかけすぎています。

意味の議論、しかし根本的な教訓

Jared氏のコメントでもっとも人々を苛立たさせたのは、デザインをする人ならすべてデザイナーであると言い切ってしまった点だと思います。多くのデザイナーが、自分の役割が損なわれたとコメントしていました。この立場も理解できますし、共感することさえできます。しかし、それはJared氏が伝えたかったことの重点を履き違えているのではないでしょうか。

建築材料の中に汚物を混ぜる者は石工ではない。
@philpalmieri

デザイナーの定義についての議論は終わることがないでしょう。しかし、私がTwitterで目撃した会話の中に、より重要で根本的な教訓があります。 それは、規律として私たちデザイナーは自分たちの役割を大切にしすぎるあまり、結果的にその役割を十分に表現できなくなり、もっとほかにもできることがあるのに、インターフェイスをレイアウトする以外のことができなくなるのです。


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