Atlassianが見据えるデザインシステムの先にあるもの

Ryan Clark

RyanはThe Sceneryのデザインオペレーションリーダーです。The Sceneryはデザインシステムや製品チーム、ビジネスなどを測定するプロダクトエージェンシーです。

この記事はUXPinからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

The Future of Design Systems

デザインシステムを作っているプロダクトチームは多くあり、デザインシステムも発展しています。

私たちはAtlassianのAlex氏(デザインチーム主任)とVenn氏(シニアデザイナー)に、どのようにAtlassianのデザインガイドライン(ADG)を発展させてきたのかと、将来この業界がどこへ向かうと予測しているのかを直接伺いました。

縦割り状態を解消する

Atlassianのデザインシステムチームは、デザインや開発、コンテンツ、イラストなどさまざまな分野をまとめています。Alex氏とVenn氏は、これらの分野を相互に繋げることこそが業界の将来にとって重要だと信じています。

デザインシステムにおける微妙なニュアンスのすれ違いなどはそれぞれの分野の違いから来ていると考えられており、ADGのチームはこれらの縦割りな状況は今後なくなるであろうと考えています。Airbnbの「React SketchやUXPinの「Design from Codeのようなツールは、デザイナーが現実世界の要素をモックアップで使うのに役立っています。この根底には、デザイナーがよりエンジニアのように考え、カスタマイズ可能なコンポーネントを構築する方法を理解して、エンジニアと共に働くようになっていくという流れがあります。

このような知識の共有には、各部門で利用できる正しい情報源を作るという実用的なゴールもあります。これにより、デザイナーやエンジニアなどの職種がコンテキストを共有でき、さらにロードマップやバックログも共有し、スプリントやスタンドアップミーティングを一緒に行う1つのユニットとして動けるようになります。よりマクロなレベルでは、正しい情報源があることでシステムを担当するコアチームと製品自体を担当する補助的なチームの間に透明性が生まれます。

このような協調関係は、Atlassianに新たに入社するデザイナーやライター、エンジニアにも利益をもたらしています。オンボーディングには現在数週間がかかっていますが、Alex氏は「新しい社員がADGを使うことで、数週間ではなく数日で製品をリリースできるようにしたい」と語ります。これは中心となるデザインシステムを使うプロダクトチームの速度を劇的に変えて、新入社員とビジネスの両方を手助けする可能性をもっています。

またイノベーションの見通しを立てるのにも役立ちます。ベースシステムを導入することで、新しいチームメンバーは、ADGによって基本的要素を素早く作成しつつ、創造力をほかのことに使うことができます。どのようなデザインの課題に取り組んでいても、「これを本当に必要としているのか?」と「どのようにソリューションを機能させるべきか?」という2つの問いにいつも直面します。これまでは、デザイナーはビジュアルを重視していましたが、デザインシステムがコアとなるUI要素を提供することで、彼らがほかのことに目を向けることができるようになります。つまり、システム全体をその都度考え直すのではなく、もっともインパクトがあるところでイノベーションを起こすことができます。

体験のためのデザイン

ADGのようなデザインシステムはUI要素を標準化し、それによってチームが製品の体験をより深く理解できるようになります。Atlassianのチームは、ADGによって、自社の製品が常に思いやりと一貫性のあるユーザー体験を提供しているという期待が育まれると信じています。Alex氏は次のように言います。

「それはユーザーの感情に触れ、Atlassianが提供する体験全体について考えるということなのです。これこそが私たちにとっての特効薬です。」

この目標を念頭に置いて、ADGチームは、プロダクトチームがビジュアルよりも製品の問題を解決できるように手助けをしています。そのためADGを使うデザイナーは、「このフォームはどのような見た目であるべきか?」ではなく、「どうすればこのフォームを可能な限り最高な体験にすることができるか?」や「このフォームは必要だろうか?」という疑問についてより深く考えることができます。このように思考が変わることで、チームは表面的なデザインの問題よりも、顧客のより深い感情やビジネスのニーズにつながる問題に対処できるようになり、あらゆるシステムのコアバリューに到達することができるのです。

システムが体験を考える助けになることのもう1つの興味深い利点は、ブランディングチームなどの関係部署との交流が促進されることです。ベースシステムを用いることで、ブランド体験を製品に反映させ、製品のインタラクションにより注力できるようになりました。将来的にシステムはより成熟し、すべてのインタラクションがブランド全体との関連性をもとに見直すことができるので、この傾向は今後も継続していくでしょう。

感情と共感

Atlassianのようにデザインチームがユーザーの課題に取り組むようになるほど、「共感」はさらに重要になります。現在、エンドユーザーに対する共感を生み出すのに役立ち、成長につながるいくつかの戦略に注目しています。

戦略の1つは、チームのローテーションです。現在、製品チームのデザイナーは、製品デザインがどのようにシステムに反映されるのか理解するために、デザインシステムチームに交代で配属されます。これによってデザイナーは特定のチームの視点からのみ製品を理解するのではなく、全体的な視点から製品がどのように形作られるかを理解するという、ADGチーム特有の洞察力が得られます。

「これによって、ユーザーからのフィードバックの最前線にいる人がシステムをデザインする作業を助け、システムをより強固にすることができます。製品のフィードバックが、システムを担当するプラットフォームチームにも共用されるとは限らないので、これは有効です。」

この仕組みはシステムに新しい視点をもたらす助けになるだけでなく、隣接した製品チーム内に、指定されたコンテキストの中でシステムを最大限に活用する方法を理解するエバンジェリストを作りだすことができます。さらにAlex氏は、将来的にほかの役割や責任へ発展する余地があるとも予測しています。

ADGの将来のためのもう1つの重要な戦略は、デザインのフィードバックをやめ、チームが分析を通して製品を理解し、さらにユーザーを理解することです。製品を理解すれば、プロセスと実装の問題が明らかになります。これは、コンポーネントをどのように構築し、維持するかという課題に対する重要なインサイトです。「ユーザーリサーチや指標に基づくことで、パフォーマンスの悪いコンポーネントやパターンを特定することができます。」とVenn氏は言います。こうした改善の結果、チームはユーザーニーズに対処するために即座に方針転換できるようになり、JiraやConfluenceなどの製品でユーザーのフィードバックに素早く取り組めるようになります。

さらに、同じく共感を軸として、システムにおいて重要なトピックであるアクセシビリティに対処し、よりユーザーに寄り添っていきたいと考えています。

「デザイナーとして私たちは、製品を誰でも使えるようにする責任があります。」

デザインシステムは、Atlassianの各製品における思いやりのある体験を、どのようなユーザーでも差別なく利用できるよう手助けをするべきです。共感の基盤は発展しているので、将来的に製品はこのコアバリューを簡単に実行することができるでしょう。

明るい未来

デザインシステムの未来は、Atlassianにとっても業界全体にとっても明るいものです。システムそのものが発展する余地はまだまだありますが、もっともエキサイティングなのは、システムがコンポーネントだけでなくユーザー体験の改善をする手助けする方法が無数にあるということです。

デザインシステムはたくさんのコンポーネントや変数、ドキュメントから成るものですが、ADGの目標は1つ、すべての顧客のために思いやりのある快適な体験を作ることだけす。たくさんのAtlassian製品のユーザーとして、私たちはチームがこのビジョンを完璧に実現させていくのを見ることが嬉しく、ワクワクしながら彼らの行く末を見たいと思います。


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