ユーザー体験を実感するドッグフーディングのメリットと実例

小山田 翔子

株式会社GMOペパボ UXデザイナー。ホスティングサービス、電子書籍プラットフォーム、アプリ開発などを経て、現在はtoB/toCのEC領域のサービスデザインに従事。今後の労働人口減少社会に対するサービスに強い関心がある [Facebook][twitter]。

ドッグフーディングとは、自社の製品を自分たちで日常的に使い、改善の必要な箇所を探ることです。この手法には、以下のようなメリットがあります。

ドッグフーディングの4つのメリット

1. 共感できる

その商品のユーザーが、何が嬉しく何が怖いのか、肌で感じることができます。

2. ユーザーテストの仮説を立てる元になる

ユーザーテストをする際には、その様子をただ闇雲に観察するのではなく、仮説を立てて観察することが必要です。「ここが問題なのではないか」という仮説を立てるには、あらかじめドッグフーディングで製品を検証しておくことが有効です。

3. 全体の体験を「小さく」「継続的に」試せる

ドッグフーディングでわかることは、ユーザビリティだけではありません。

「この製品を使うと、このように生活の幸福度が増した」など、「製品を使った全体的な体験のサイクル」を、小さなサイクルで試していくことができます。

また、たとえばEC系システムであれば、配送会社のシステムと連携して使うなどの場面があります。このようなときに、自分たちのシステムを「他のシステムと一緒に使う体験」をすることができます。

4. 自分が開発する製品の社会的存在価値を実感できる

「この製品がユーザーの実際の生活に組み込まれたら」と想像しやすくなり、自分たちが毎日開発しているものに対する意識が変わります。

GMOペパボでの実例

「カラーミーリピート」について

弊社の「カラーミーリピート」は、定期販売をしたい事業者が、決済機能付きランディングページを作成し受注発送を行えるサービスです。

ここで実際にドッグフーディングを実施した例を紹介します。

ドッグフーディングを実施

「カラーミーリピート」は、EC事業者の中でも「定期販売をしたい人」と言う、ごくマイナーなユーザーをターゲットにしています。

つまり、ユーザー要求を予想しにくい環境です。

そのため、UXデザイナーが中心となり、社内でティッシュを定期販売しています。

ここでは、3ヶ月で毎月平均5人のユーザーに箱ティッシュを売っています。値付け〜仕入れ〜在庫管理〜拡散〜受注〜梱包〜発送〜クレーム受け〜売上受取までを継続的に一貫して行いながら、そのときの「状況・気持ち・起こったこと」のログを取っています。

ドッグフーディングで体験したこと

ユーザーの気持ちが「上がる」体験

  • 売れる
  • 在庫が予測できる
  • 発送スケジュールが予測できる
  • ストック型で売り上げが増える
  • 売り上げが予測できる
  • 「単発でなく定期的に売れる」と言う定期販売のメリットを体感できる
  • etc….

ユーザーの気持ちが「下がる」体験

  • システムのバグに遭遇する
  • テスト購入するのが怖い
  • 新規購入者が増えない
  • 購入者に解約される
  • 決済が走るタイミングがわからない
  • 購入者に自動で送られるメール内容がわからない
  • 在庫を抱える
  • 予想以上に売れる
  • etc….

このように、たった3ヶ月のドッグフーディングでも、ユーザーの全体的な行動や気持ちを体感できました。

ドッグフーディングのそのあと

上記のログを元に、以下の様なことを行いました。

  • 危機的な問題はすぐ修正する
  • 機微な事象に関しては、ユーザーテストの仮説の根拠とする
  • 別で作成したKPIツリーやグロース図と照らし合わせて、修正するべき箇所の優先順位付けをする
  • ユーザーの気持ちが上がった箇所については、このサービスの利点として、営業やランディングページで強く宣伝する

結果として、冒頭で述べた「4つのメリット」の他、システム上の危機的な問題の発見にも役立ちました。

注意すべきこと

簡単そうに見えるドッグフーディングですが、以下のように、少しだけ注意することがあります。

おおげさにせず、最初は小さく始める

真面目な人ほど、ユーザーの環境を完璧に再現して始めようとしてしまいます。すると時間がかかり、結局始められなくなってしまいます。

ユーザーの環境に近付けるのは、ドッグフーディング開始後に少しずつ行うこともできます。ドッグフーディングと開発業務と並行させる場合は、特に気軽に始めることを重視しましょう。

ステークホルダー役を巻き込む

特にtoBの製品であれば、ユーザーはひとりで業務をしているわけではないでしょう。上司や取引先といった、ステークホルダーと一緒に製品を使っていることが予想されます。

その場合は、ユーザーの上司・顧客・取引先など、それぞれ、チーム内で役割を割り振って、そのふりをしてもらう(ロールプレイする)とよいでしょう。

あくまで「仮説立ての根拠」に留める

ドッグフーディングをしていると、たくさんの改善箇所に出会います。あまりにもたくさんの問題が発生し、パニックになるかもしれません。

そのような場合は、プロダクトオーナーと話し合いながら、危機的な問題はすぐ解決しましょう。真偽が問われるものに関しては、インタビューや実ユーザーでのテストなど、ユーザーの実際の声を集めて検証しましょう。

新規登録については別で検証する

ドッグフーディングは、ユーザーが製品の運用をしているフェーズをテストするものです。そのため、新規登録から運用開始までのテストは、必ず別の手法で行いましょう。

事象に名前を付ける

製品が起こす複雑な事象とその結果としてのUXに、「◯◯事件」など、少し笑える名前を付けて呼ぶのがおすすめです。事象の全体像を思い出しやすくなり、開発業務が楽に進みます。

まとめ

ドッグフーディングは、システム開発の分野だけでなく、人生のすべてにおいて使える手法です。「自分」と「ターゲットユーザー」の属性が遠い場合は特に有効です。

ぜひ、この記事を機会にさまざまな分野でご活用いただけるよう願っております。


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