POSシステム特有のユーザー体験の障壁

Dennis Lenard

Dennisは過去10年にわたりエビデンスベースのアプローチでUXデザインとUIデザインを専門とする15人の代理店Creative Navyを経営してきました。実践的なビジョンとリサーチへの深い造詣を兼ね備えています。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

User Experience Barriers In POS Systems (2018-04-23)

POSシステム(Point of sale system)は、店舗のレジにて使用され、注文を処理し、顧客を確認するために使われます。動きが遅い店員のレジに並んで待つときのイライラは、誰もが経験したことがあることでしょう。しかし、その不満も行列ができたときに店員が経験する不安と比較すれば大したことではありません。

通常のアプリとは異なるPOSシステム

POSシステムのデザインは、典型的なアプリケーションと大きく異なる点が少なくとも1つあることにエンジニアは注意しなければなりません。標準的なWebやモバイルアプリのユーザー目標はアプリ内で達成されるのに対し、POSシステムでは、ユーザーの目標はつねにオフラインにあります。ある意味では、ソフトウェアアプリはレジの店員が行う袋詰めや顧客対応の妨げにしかなりません。

たとえば、フィンテックアプリでは、最初から最後まですべてがコンピュータの中で完結します。室内の会話など、ユーザーの周囲で起こっていることは、メールのプロセスの障害です。一方で、POSシステムでは真逆のことが言えます。レジ係の役割は、購入した商品に集中し、顧客にフレンドリーに接することであり、POSソフトは会計のために扱わなければならない不快な障害です。やり取りの成功とは、UIの最終ステップまでたどり着くことではなく、消費者に笑顔で帰ってもらうことです。

恐らくPOSシステムのデザイナーは、全体のコンテキストを頭に入れて、非常に批判的な視点でソフトを見なければなりません。つまりデザイナーは、一般的な客とのやり取りの時間を短縮し、イレギュラーな状況によって引き起こる遅延を減らす方法を見つける必要があります。

どのように行列はできるのか

POSシステムに関連するUXデザイナーやシステムデザイナーの目的は、できる限り早く正確にユーザーをサポートするツールを提供することです。これはユーザビリティ上の大きな障壁を減らすことを意味します。この目標を達成するには、行列はどのように生まれるのかを理解することが不可欠です。行列のでき方には2つのパターンがあり、性質が異なります。

まず、顧客の会計には一定の時間がかかります。これは会計ごとにかかる平均時間のことです。各会計には、レジ係が実行しなければいけない多くの典型的なステップがあります。これらのステップはすべて必須な事柄であり比較的一般的です。これらは最適化することができ、1秒節約するだけで、店舗全体のパフォーマンスに影響を与える可能性もあります。このプロセスはどの店舗でも非常によく似ています。

第二に、典型的なプロセスが適用できない、イレギュラーなやり取りや状況があります。これらは例外的な事態であり、店舗やチェーンに特有である傾向があります。さらに、これらのイレギュラーな状況は多種多様に存在することが多く、それによって会計が遅延します。平均的なやり取りで1秒節約しても、イレギュラーなやり取りでは、平均的な取引の10倍から30倍の時間が掛かります。したがって、デザイナーはこの1〜2分の遅延を数秒にまで短縮できる可能性があります。

お店の種類とレイアウトは、デザイナーが制御できないにもかかわらず、重要な要素です。よって、それ以外の要素に働きかけなければなりません。たとえば、レジが1つしかない店では、どんなに顧客の数が上下動しようと、1つのレジの力で応対する必要があります。また、複数レジがあっても、週末などの固定スケジュールでしかスタッフを配置できない店もあります。大規模な店舗では、必要に応じて新しいレジを置くことができるようにシステムを発展させています。

レジの数という側面は、店舗が大量の顧客に対応する際の、基本的な方法に影響します。

デザイナーはすべてのUX要素を制御することはできませんが、以下に示す重大な障害については、POSシステムのデザインプロセスの初期段階で緩和することができます。

システムの遅延

スマートフォンをデザインする際には、デザイナーはハードウェアの問題に気が付かないことがあるかもしれません。しかしPOSでは、デザイナーはユーザーが使用するハードウェアを熟知している必要があります。ほとんどの小売店がタッチスクリーンのタブレットタイプのハードウェアシステムに移行したとしても、この業界には標準的なものがほとんどありません。

システムの遅延はさまざまな問題によって引き起こされる可能性があります。もっともよくある問題は次のとおりです。

応答時間:システムは、膨大なデータベースに問い合わせなければならないことがあります。システムの構造が煩雑な場合、その照合には長い時間がかかることが多いです。たとえば、セントラルサーバー上で検索が実行されるPOSシステムの中には、製品リストを受信するのが難しいものもあります。デザイナーはこのことに留意し、エンジニアと協力して、特に平均的な会計でこの負荷を軽減する方法を見つければなりません。1秒や2秒も問い合わせを待つことは決して許容できません。

ハードウェア:ハードウェアのコストを妥協することを好む店もあります。低性能のタブレットは100ドルから200ドル安く、仮に200個導入するとおよそ4万ドルの節約になります。この計算では、ユーザーにかかるコストは無視されています。しかし、定量化できないユーザー体験の利益を得るために5桁の数字に目をつぶるよう役員を説得することは難しいかもしれません。そこでデザイナーは、見積もりが基本的な仮説に基づいている場合でも、それらを合算することで、時間の観点でユーザー体験のコストを定量化できるでしょう。とても長期的な視点で分析することが定量化の助けになります。

システムが遅くなる重大な問題の1つは、異なるデバイスが互いに通信しなければならない状況です。共通しているのは、カードリーダーやスキャナーとタブレットの通信です。ときには1秒から2秒の遅延が生じることもあります。些細なことのように見えるかもしれませんが、毎回の会計ごとに掛かる時間が増加します。店頭調査では、中心となるPOSに統合されていないデバイスが発見されるでしょう。このようなデバイスは更なる遅延を引き起こます。可能な場合は主要なPOSシステムと円滑に統合されるべきです。

POSシステムとほかのデバイスとの通信

複雑なナビゲーション

製品をスキャンするという基本のタスクはシンプルですが、解決する際にナビゲーションが必要なタスクもあります。たとえば、名前で製品を検索することが、一般的な会計のフローに含まれることがあります。ほかにも、割引を適用したり、過去の会計を見つけたり、ロイヤリティの高い顧客を特定したりすることもあるでしょう。

ナビゲーションが関係すると、処理が非常に複雑になります。POSシステムのデザイナーは、製品や顧客の階層構造に対処しなければなりません。階層分けは細かすぎても、大ざっぱすぎてもいけませんが、現実では妥協することで階層構造の問題に対処しています。しかし、その妥協によって、ナビゲーションの問題を解決する際に新しい課題が生まれているのです。

たとえば、カテゴリーで分類されたメニューを使って製品階層を操作することになれば、レジ係がタップする回数が数回増えます。タップには時間がかかりますし、レジ係が正しいカテゴリを知らずに迷った場合、遅延はよりひどくなります。さらに悪いことに、レジ係がそれに対処している間、彼らは顧客に目を向けることができません。また、レジ係が対応する製品が複数あるかもしれない点も考慮してください。

POSシステムでは詳細なナビゲーションが難しい

一方で、製品を名前で検索することもまた、理想的な解決策ではありません。タブレットに名前を入力するのが面倒なだけでなく、レジ係が正しい製品名を知らなかったり、システムがデータベースで名前を間違って登録していたりする可能性があります。この場合、製品は決して見つけられません。

ナビゲーションは、POSシステムのユーザビリティにとって2番目に大きな障壁であり、残念ながら、解決する簡単な方法はありません。デザイナーは最善の落としどころを見つけるために、ユーザーリサーチの結果、システムの制約に関する考慮事項、店舗が販売している製品を吟味する必要があります。

ラベル

便利なデジタル製品にとって、物事の判断がつくことは基本的な要件です。残念なことに、POSシステムのデザイナーは、重大なユーザビリティの障害を引き起こす多くの課題に取り組まなければなりません。

この記事の中では、ラベルとは文字や名前などの言語要素、またはアイコンや画像などの視覚的要素とします。どちらのラベルもユーザーに負担を課してしまうかもしれません。

  • 文字のラベルは、表示が不完全だったり、略語が使用されていたりすると、ユーザー体験を損ないます。「Caspian Deluxe Beer Promo 0.3L」と「Caspian Deluxe Beer Promo 0.5L」のように、文字列が長すぎたり、非常に似た名前の製品を1文字で見分けたりすることがあるからです。
  • たとえばカテゴリーの名前などにおいて、ラベルは混乱を招く可能性があります。「小さなパン」と「大きなパン」というラベルの境目はどこでしょうか。
  • もっとも大きな問題の1つは、システム内の名前が製品名と異なる場合です。たとえば、「He​​ineken Beer」と「アルコール飲料(度数4%)」というように異なることがあります。

視覚的なラベルは筋の良い解決策に見えるかもしれませんが、問題はそんなに簡単ではなく、実際にはさらなる混乱を招くこともあります。たとえば、画像が小さい場合、多くの製品は非常に似て見えます。多くのPOSシステムが非常に小さな画面を使用していることを踏まえると、それらの画像はまったく認識できないかもしれません。

画像にはほかにも問題があります。ラベルのデザインが変更されるたびに、画像ライブラリを更新し、最新の状態に保つ必要があるのです。たとえほとんどの製品の画像をデータベースから引用できたとしても、一部の店舗で作られる製品には写真家が必要になります。

視覚的なラベルがPOSデザインで混乱を招くことがある

情報過多

POSシステムの典型的な使用場面では、レジ係は情報過多に直面しています。顧客に注意を払い、注意して製品を取り扱い、POSで品物をチェックし、店舗内で起きることのすべてを認識しなければなりません。

インターフェイスの複雑さは、レジ係の注意力に負荷を与えます。与えられた時間内に対処するべき選択肢が多くなればなるほど、より困難になるでしょう。

特に経験の浅いレジ係にとっては深刻です。学習しなければならないインターフェイスが複雑になればなるほど、学習には時間を要するでしょう。ほとんどの場合、レジ係はパートタイムで短期間(1年かそれ以下)しか働きません。したがって、学習エージェントの経験は不可欠です。

1つひとつの画面の複雑さに加えて、それぞれのプロセスが異なったり、レジ係がイレギュラーに適応するために精神的な負担を増やす必要があったりするとき、障害はまた増えます。シフトの終わりに向かって疲れが溜まってくると、パフォーマンスはさらに低下するでしょう。

機能や複雑さを減らしたPOSシステムの例(Image source: Nobly POS)

エラー

顧客の会計をする過程では、エラーが発生するものです。間違いを解消することも、時間がかかる場合には大きな障害になるでしょう。多くの場合、エラーを解決するプロセスには、店の方針に基づく多くの手順があります。また、故意に間違えて、会社に詐欺をすることがあります。

デザイナーは、不正行為を防止する独創的な方法を考え出し、さまざまな種類の間違いを解決するのにかかる時間を短縮することで、差別化を図ることができるでしょう。

結論

この記事では、POSシステムを使用する際にレジ係の能力に影響を与えるもっとも重要な障害をまとめました。デザイナーは、適切なデザイン原則を製品に組み込むことで、システムのパフォーマンスを加速させ、複雑さを軽減し、システム内の対象にラベルを付ける明確な方法を見つけ出し、エラーに対処する時間を縮目ることができます。それによって、ユーザーの負担を軽減できるでしょう。

どの問題も、POSという難題につきものなので、完全に解決できることはありません。しかし、数%でもユーザーへの負担を軽減することで、POSのユーザーが実際に働くときの状況を改善することができるでしょう。


Banner jobs

イベント