esportsがゲームにもたらす新しいユーザー体験について聞いてきた

三瓶 亮

1983年東京生まれアメリカ育ち。ガラケー時代からモバイルコンテンツの企画・デザインなどに従事。現在はUX MILK編集長/プロデューサーとしてメディア、イベント、関連サービスなどの企画やデザインをしている。パンクロックとゲームが好き。Facebookはこちら

UX MILK編集長で、ゲーマーでもある三瓶です。

みなさんはesportsをご存知でしょうか? esportsはさまざまなゲームで競い合うプロスポーツであり、年収1億円を超えるプロ選手もいるほど世界的に注目されている競技です。

今回は、「esportsのユーザー体験」について聞くという、なんとも面白そうなお話をいただきウェルプレイド株式会社さんの代表・高尾さんとデザイナーの石川さんにインタビューをしてきました。

登場人物
高尾 恭平 氏 / ウェルプレイド株式会社 代表取締役 COO
石川 光彦 氏 / ウェルプレイド株式会社 デザイナー

左:石川氏、右:昭和世代にはたまらない懐かしいロゴTシャツで登場した高尾氏

日本独自のesports展開を考える

── まずesportsについて馴染みのない読者の方もいると思うので、まずはesportsとはなにかについて簡単に教えてください。

高尾:野球やサッカーといったスポーツと同じように公平性を保つためのルールがあり、かつ電子デバイスを使って行われる競技がesportsだと思っています。たとえば、極論、将棋をPC上で行えば、それはesportsになると考えます。

近い将来、esportsは野球やサッカーのようなスポーツと同じように、違和感なく観戦できるようなものになると思っています。

── なるほど。世界的にはesportsはかなり盛り上がっていると思うのですが、日本ではどういう状況なんですか?

高尾:「esports」というキーワードをよく耳にするようになり、多くの方が興味を持ち始めてきたという状況でしょうか。

また、日本全体の状況がどうかというのとは別に、ウェルプレイドとしては、「プレイヤーに市民権を」というビジョンを掲げ、素晴らしいプレイをしたゲームのプレイヤーが野球やサッカーの選手と同じように賞賛される社会になることを目指しています。それを基準に考えると、「ゲームしていてお金を稼げるなんて羨ましい」という声を耳にすることがあるくらいなので、まだまだこれからだなと感じています。

── その状況において、これからウェルプレイドとしてはどういった方針の取り組みをされるのでしょうか?

高尾:海外の成功事例をそのまま持ってくるのではなく、日本独自の展開を考えていこうという方針です。

たとえば、ハリウッド映画が流行っているから日本でもハリウッド映画作ろうというのは違いますよね。なので、日本にあった形でesportsを盛り上げられるようにいろいろ仕掛けているところです。

── 日本独自とはどのように展開していくイメージなのでしょうか?

高尾: モバイルゲーム市場の成長を見るとわかるように、日本ではモバイル端末でゲームを遊ぶという文化がかなり浸透していますよね。そのため、日本のesportsも今後は、モバイルを中心に発展していくのではと考えています。

── たしかに、esportsの動画を見るとスマホゲームが結構多くて意外でした。ちなみに日本ではどういったジャンルのスマホゲームがesportsとして流行っているのでしょうか?

高尾:トレーディングカードゲーム(TCG)や、リアルタイムストラテジー(RTS)といったジャンルのスマホゲームが日本では盛り上がり始めていて、大会や放送も結構目にするようになりました。

esportsの企画におけるプレイヤー目線の重要性

── ゲームタイトルのesports展開というのは、どのように企画されているのですか?

高尾:まず、ゲームタイトルによってesports展開を行う目的と展開の仕方が大きく変わってきます。

たとえば、プロ選手が生まれることを目指すゲームタイトルの場合は、大会の賞金も高額となるので、その賞金を手にするに相応しい実力者が決まるように、極力、運の要素を省いた大会ルールや運営方法を検討します

一方で、esportsタイトルとして展開を行いたいが、ゲームの世界観と賞金というものが合わないこともあります。そういったゲームでも、大会ルールや運営方法を綿密に検討するという点では同じですが、報酬は金銭ではなくプレイヤーがゲーム続けるモチベーションとなるものを設計します。

── 世界観によってesports展開が変わるということは、演出の仕方なども変わってきますよね。

石川:ゲームにおいて世界観というのは非常に大切な要素です。また、世界観といった要素に限らず、プレイヤーにはそのゲームタイトルへの思いやこだわりがあります。そのため、演出やデザインを考える上で、そのゲームのプレイヤー目線に立つということが非常に重要です。

ウェルプレイドでは、esports展開を企画/デザインする以前に、そのゲームタイトルを必ずやり込んで、上位ランクまで到達することを全員で心がけています。

高尾:プレイヤー目線をもって設計しないといけないので、ディレクターもデザイナーも全員プレイして共通認識を持つように意識していますね。

石川:また、プレイヤー目線に立つという点では、そのゲームタイトルをやりこむだけに限らず、コミュニティーに入り込んで情報を得るということも心がけています。

コミュニティは、そのゲームタイトルに強い思い入れのある方々が集まる場です。そこでやりとりされる情報はとってもニッチな情報ではあるのですが、そういった情報を番組構成の参考にすることもあります。そうすることで、視聴者からの信頼が深まり、番組への評価も高まります。

esportsにおける観戦者の体験

── 観戦者側のユーザー体験について意識している点はありますか?

石川:「プレイヤーに市民権を」というビジョンを最初にお伝えしましたが、観戦する方が選手に憧れを抱くようなデザインは意識していますね。

たとえば、毎週末に開催される『ドラゴンクエストライバルズ』の大会を中継する番組内で優勝者を表彰するシーンがあるのですが、そのシーンでは「そこに自分の名前も乗せたい!」「この人すごい!」と見ている方が思うようにデザインをしています。

高尾:また、ほかのスポーツと同じようにゲームの試合にもドラマ性があるので、ゲームのプレイ画面だけではなくプレイヤーをどのように映すかも大事です。観戦者の感情に訴えかけるには、どのシーンを切り出すべきかを考えます。また、esportsの配信は生放送が多いので、熱いプレイが生まれたその瞬間を切り取り、瞬時にその熱量を伝える必要があります。なので、ここでも「ユーザー目線」が重要になってきますね。

鉄拳配信時のMC席画面:画面左側にこれから戦う選手と何回戦目かを表示

石川:あとは、細かいところになってきますが、試合に関するさまざまな情報があるので、どの情報をどう画面上に表示するかという設計にこだわっています。たとえば、生放送では途中から見始める方もいるので、いま試合ではなにが起きていて、どういう状況なのかを都度わかりやすく伝えていくというのを意識しています。

── スポーツ中継みたいな作り方をしているんですね。ゲームの配信ならではの工夫はありますか?

石川:ゲームのUIにはプレイする上で必要な情報がぎっしり詰まっているのですが、観戦者にとってはあまり関係ない情報もあります。なので、そういう情報を見極めて、その上に観戦者にとって必要な試合情報を載せるというのはよくやりますね。

たとえば、これは『ドラゴンクエストライバルズ』の配信画面です。世界観も壊さないように気を付けながら演出は考えていますね。

ドラクエライバルズのゲーム画面

── ゲームのUIに完全に溶け込んでいますね。

高尾:あと、トレーディングカードゲームでは、プレイヤーが操作するUI上ではそのプレイヤー自身のカードしか見ることができないのですが、配信では相手のカードもリアルタイムで合成して見えるようにしています。

カードの効果をリアルタイムで合成し表示

カードゲームには、カード1枚で戦局が変わるという状況がよくあります。その際、視聴者としては、そのカードを使用してどんな効果があったのかが見たいんですよね。その効果を見せるために、僕らは先回りしてそのシチュエーションのためだけの演出を用意しています。

ここまで観戦者側の体験を考えて、リアルタイムに編集するのは大変なことです。本来であれば見えないところを観戦者には見えるようしてあげるのは工夫の1つですね。

── 普通にゲームをするのとはまた違った楽しさがありそうですね。

高尾:面白いと思いますね。第三者だからわかる面白さみたいな。

しかし、何でも見せれば良いのではなく、引き算も大事だと思います。たとえば、『#コンパス【戦闘摂理解析システム】』という3対3のチーム対戦ゲームの場合、両方のチームのプレイ画面を映し出すこともできるのですが、ウェルプレイドではあえて一方のチームしか映していません。なぜなら、観戦者にとって同時に2つのゲームプレイを追うことが難しいからです。

ウェルプレイドリーグロゴ

── インタビュー前に『ウェルプレイドリーグ』を見てみたのですが、実況もありゲストもいて本当にテレビ番組みたいですよね。

高尾:僕らは『クラッシュ・オブ・クラン』というゲームタイトルを用いて『ウェルプレイドリーグ』という自社リーグを開催しています。そこでは毎週ゲストをお呼びしたり、試合の前後に解説を入れたりしているので、野球番組と近いところはありますね。

たとえば、試合前に「みんなどうやって攻める?」みたいな解説をしているんですね。「ここをこう攻めると良いのでは?」「こうきたら難しいですね」みたいなことを言いながら。

ウェルプレイドリーグ:対戦相手の村を攻めに行く際のブリーフィング

── なるほど、観戦者にも考える余地を与えてあげているのですね。

高尾:そうですね。視聴者に「俺だったらこう攻める」みたいな考える時間を持ってもらうことで、試合を自分ごとに感じれるよう演出をしています。

あとは、その答え合わせとして試合中に「いまはこういう意図でこういう戦術を使っていますね」という解説を入れる。これも、リアルタイムで戦術の説明画面を表示してますね。そうすると、まだ始めたばかりの初心者の方でも「あ、そういう戦術なのか」と理解できて、一気に楽しくなるんですよね。

新しい価値を提供するのがeスポーツ

── 少し話は変わるのですが、ゲーム会社さんはどういうメリットがあってeスポーツ展開をしているのですか?

高尾:ゲーム会社さんによって目的が異なる部分もありますが、ユーザーの継続率につながるというメリットが大きいと思います。

いまは良いゲームが次々と出ていて、飽和しているくらいの状況といえます。そのため、多くのタイトルがある中で、自社のタイトルをいかに長く遊んでもらうか、いかに遊んでもらう理由を見つけてもらうかがポイントとなってきています。

そのためには、もちろんゲームを面白くする努力は必要ですが、ゲームを続けてもらったその先にどんな価値を提供できるかというのが次のステージかなと。

── ゲームを続けたその先の価値ですか?

高尾:ゲームをやりこんだ結果として賞賛されたり、報酬が貰えたりといった価値ですね。頑張ってうまくなれば、ほかのプレイヤーや番組視聴者、大会の観戦者から、賞賛されるというゲームであれば、よりプレイしたくなると思います。そういったゲームを続ける動機をつくるのがesportsの役目の1つだと思っています。

── なるほど、深いですね。やっぱりesprotsでは大会がメインになるのですか?

高尾:「esports展開を成功させる」という中長期的な視点に立って施策を考えているので、ゲーム会社さんとは比較的長いお付き合いになることが多いです。そのため、大会を開催するべきだと思ったら大会を提案しますし、大会はまだ早いと思ったらオフ会のようなカジュアルなイベントを提案します。

クラロワ日本一決定戦時の様子

ゼロイチを体験できるのがesportsビジネスの楽しさ

── esportsのビジネスとしての面白さは、どのようなところにありますか?

高尾:esportsの市場はまだまだ未開拓の部分ばかりなので、やったらやった分だけ開拓されていく市場です。市場のゼロイチの部分を体験できるので、そういうフェーズが好きな方にとっては面白いと思います。

実際、ゲームに強い関心があったわけではないけど面白そうだからと入社した社員も最近増えていますね。

── 最初は大会運営くらいのイメージしかなかったのですが、ゲームというコンテンツをeスポーツを通してプロデュースしていくのは面白そうですね。

高尾:プレイヤーも観戦者も熱量がすごいので、そういった感情部分をどう伝えるかの設計にはやりがいを感じますね。特に、コミュニティを作ることから始めて、大会で歓声があがる状況や、涙している方をみると達成感が大きいです。

そこまでの感動を生み出すことってあまりできる経験ではないですし、なおかつ新しく挑戦できる領域ばかりっていうのは、eスポーツくらいしかないんじゃないかって思っています。

── ゲーム好きとしては、eスポーツでゲームが盛り上がるのはとても楽しみです。本日はありがとうございました!

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今回インタビューしたウェルプレイド株式会社の高尾さん、石川さんも登場するイベント「UX MILK Workstyle 13 feat. Well Played」が7月19日(木)に開催されます。

記事では伝えきれなかったesportsのユーザー体験も聞けるので、興味のある方はぜひご応募ください。

※応募は抽選制です。

開催日:7月19日(木)19:30〜
応募期限:7月12日(木)18:00まで
抽選発表:7月13日(金)

イベント詳細&参加申し込み

提供:ウェルプレイド株式会社
企画制作:UX MILK編集部


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