ポップアップ、ダイアログ。呼び方はどうあれ、画面に現れるこの小さなボックスを当然のものと考えてはいけません。アプリの中では比較的「小さな」要素ですが、アプリのユーザー体験においては非常に重要なものです。
ポップアップは、ユーザーがアプリ内でプロセスを最後まで進める助けとなります。その一方、デザインを間違えると、ユーザーをイライラさせてしまいます。
幸運なことに、ポップアップは容易に解決できる課題であり、正しいツールとガイドラインがあれば簡単に改善できます。この記事はその方法を示すためのものです。
すべてのポップアップが同じではないので、ポップアップの主な使い方を5つに分け、最適化のルールを示しました。以下の説明に従えば、あらかじめ決めたポップアップの目標に近い結果が得られるでしょう。
「招待」と「アプリ評価」のポップアップ
アプリ開発者は、ユーザーを増やし、口コミの評価値を上げ、バイラルの可能性を高めたいと考えるでしょう。そう思わない人はいません。しかし、ほとんどのユーザーは価値のある見返りがないとアプリを友だちに紹介したり、評価したりしないと覚えておくべきでしょう。
Uberの報酬ポップアップ
開発者は、このような不満を持つかもしれません。「友だちに紹介するなんて、シンプルで簡単な作業でしょう。なぜユーザーは、リリースしたての小さなアプリを助ける親切心を持てないのですか?」しかし残念ながら、現実はそう簡単ではありません。
上記の「作業」という言葉に注意してください。まさにほとんどのユーザーは、「友だちに紹介する」と「アプリを評価する」という行為を作業だと見なしているのです。このとき「返報性の原理」が重要な役割を果たします。ユーザーに何かをお願いする前に、ユーザーに何かを与える必要があります。それは上図のUberのような無料乗車券という形かもしれませんし、アプリの全体的な価値や楽しさかもしれません。ユーザージャーニーの中のいくつかの有効な場所や機会でポップアップのA/Bテストを実施するのは優れた手段の1つでしょう。これによって、最終的にどこにポップアップを置くべきかについて統計的に有意な結果が得られます。
アプリからアプリストアやソーシャルメディア、メッセージプラットフォームに、できるだけ円滑に誘導できるよう徹底することも大切です。
ユーザーが紹介リンクを見つけるのは「簡単」ですか? モバイルデータ通信とWi-Fiのどちらでも同じように動作しますか?
これらの疑問は、考慮すべき重要な要素です。時間をかけて2つのポップアップを分析して最適化すれば、アクティブユーザーや新しいユーザーを獲得でき、満足のいく結果となるでしょう。
「(賢く)求めよ、さらば与えられん」という聖書の教えを忘れないでください。
「プッシュ通知」のポップアップ
プッシュ通知は、ユーザーのエンゲージメントやリテンションにおいてきわめて有効なツールです。多くのユーザーにとって、プッシュ通知はアプリと接する主要なチャネルとなりつつあります。ユーザーはもはやアプリを開くことさえせずに、プッシュ通知を介して必要なもののほとんどに直接アクセスできます。したがって、ユーザーにプッシュ通知を送る権利を獲得して維持することは、エンゲージメントとリテンション戦略にとって重要な要素になるはずです。
Androidでは、状況はきわめてわかりやすくなっています。許可のリクエストはAndroidManifest.xmlの一部、インストール前にユーザーが見るすべての許可リストの一部にあります。
他方、iOSでは少し事情が異なります。iOSでは、許可を求めるポップアップはアプリのコードの中で作動させる必要があり、ユーザーには下の図のようなポップアップが示されます。
画像ソース:Xtremepush.com
ユーザーが「許可しない(Don't Allow)」をタップしたら、事実上ゲームオーバーです。ユーザーが自ら通知の設定をしない限り、禁止された状況は覆りません。よって、ユーザーが許可を求められたときに「OK」を選ぶかどうかは決定的に重要です。
プッシュ通知をできるだけ承認してもらうために、以下の2つのアプローチをおすすめします。
- ユーザーがどれくらい積極的にプッシュ通知を受け入れているかを評価できる自前の許可ポップアップを作成してください。これによって、ユーザーが「OK」をタップしたくなるまで許可の申請を待ちながら、ユーザーの態度と嗜好を理解することができます。
- もっとも適切でユーザーに納得してもらえるタイミングだと判断したときに初めて許可を求めてください。そのタイミングは本当にニーズがあるのでしょうか? 適切なコンテキストでユーザーに通知許可を求める理由をわかりやすく説明しましょう。
モバイルアプリのデータアクセス
プッシュ通知の許可と同様の特徴を持つのがデータアクセスのダイアログです。ここではiOSのアプリを例に紹介します。データアクセスのポップアップとは、位置情報やカレンダー、連絡先情報、リマインダー、写真などへのアクセス許可を求めるものです。データにアクセスを求めることはチェックボックスの記入のように単純ではないので、モバイルの開発者はよく注意しなければなりません。
Appleが同社の許可リクエストのガイドラインで言及しているように、「人々はアプリが情報にアクセスすることの便利さを理解していますが、プライベートなデータはきちんと管理したいと考えています。たとえば、写真に位置を自動的にタグ付けする機能や近くの友人を見つける機能を求める一方で、それらの機能を無効にする選択肢も求めているのです。」
このような種類のポップアップでは、その許可とアプリとの関連性がわかるように心がけましょう。ユーザーの位置情報へのアクセスを求める電卓アプリには決してなってはいけません。
どれだけ当然だと思っても、Appleから提供されたテキストスペースを用いて、アプリがその情報を必要としている理由を説明しましょう。ユーザーが行動を起こしたあとに、関連する情報への許可を求めるのも優れた方法です。たとえば、ユーザーがアプリを使って動画を作成したら、それを友達にシェアしたいと思うでしょう。「Facebookで動画をシェアする」ボタンをタップしたら、すぐにソーシャルメディアのアカウントの利用許可をユーザーに求めるのは、完璧なタイミングと言えます。「Aを実行するためにはBを実行しなければいけない」という確かな説明が与えられるので、ユーザーが許可を受け入れる可能性はずっと高くなります。
さらに詳しくは、データアクセスの許可に対してユーザーが臆病にならない方法についての記事をご覧ください。
「エラー」のポップアップ
ポップアップは、ユーザーに許可を求めるのに加えて、開発者がユーザーとコミュニケーションをとるための重要な手段でもあります。特にアプリ内のエラーではそういった側面が強いです。
エラーは起きるものです。ただ、エラー時のエラーだけは起きてはいけません。つまり、エラーが起こったときに、ポップアップでユーザーをさらに混乱させて、状況を悪化させてはいけないということです。
たとえば、ユーザーの請求先住所が間違って書かれていると、購入手続き中に「エラー」が生じます。もしポップアップに「エラーが発生しました。購入手続きは完了しませんでした」と記載されていたら、ユーザーはエラーの原因を推測しなければなりません。そうではなく、このときユーザーに強調すべきなのは、エラーが起こった理由とユーザーが修正すべき住所の場所です。ポップアップによって推測を強い、ユーザーが不満を抱いてしまったら、コンバージョンからは遠ざかるということを理解しておく必要があります。
さらに、ユーザー側の対処が必要なエラーでは、エラーが発生したことと実行するべきことをユーザーに伝えるだけではなく、適切なときに行動を起こすようユーザーに指示しましょう。「はい」、「いいえ」といった漠然とした文言ではなく、「消す」、「元にもどす」、「マイプロフィールへ行く」といった行為を明確に示す言葉遣いを努めてください。
もしアプリ内で技術的なエラーが発生したら、ポップアップを活用してユーザーに手を差し伸べ、問題解決に取り組んでいることを伝えましょう。これによって、アプリに人間的な要素が加わり、ユーザー体験を大切にしていると示すことができます。
「フィードバック」のポップアップについてもっとヒントが欲しい場合は、Nick Babich氏の記事『ダイアログデザインで重要な5つのルール』をおすすめします。
自信を持つ
私たちは、実際の状況を耳障りの良い言葉で隠したいわけではありません。ユーザーの中には、ポップアップが次のように見えるユーザーもいます。
画像ソース:OSXdaily.com
しかし、すべてのユーザーが否定的なわけではありません。ポップアップを簡単に改善し、最終的にエンゲージメントとコンバージョンを高める力があなたには備わっています。
まずは、モバイルアプリを分析するプラットフォームを必ず手に入れましょう。たとえば、私がおすすめするAppseeは、ポップアップのパフォーマンスやアプリのユーザー体験に与える効果を観察することができます。それらのインサイトによって、確かな確信を持って反復し、テストし、検証することができるようになるでしょう。
ポップアップは不当な非難を受けているかもしれませんが、考え抜いて巧みに活用すれば、モバイルアプリをまったく違うものに変えてくれるでしょう。