音声デザインの導入ハードルを下げる、Alexaの取り組み

Dylan Wilbanks

Dylanは、インサイトやデザインオペレーション、チームリーダーシップを提供する個人のコンサルタント会社Hêtreを運営しています。高等教育機関、財務管理、グリーンエネルギー、テック企業などで約20年のキャリアがあります。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Alexa Skill Blueprints and the Promise of User-Centered Voice Design

私たちは今、音声デザインの転換期に直面しています。何年もの成功と失敗を経て、AlexaやSiriのような音声アシスタントが広まってきています。技術に敏感な家庭では、音声アシスタントとスマートスピーカーのようなデバイスが当たり前になってきています。

AlexaとSiriが主流となりつつある今、AmazonとAppleは、システムを簡単に構築する方法を考える必要に迫られています。これは現時点で、AlexaやSiriの導入ハードルが高いためです。たとえばAlexaのエコシステムは開発者駆動なため、習得が難しいものです。非開発者が独自の機能を構築するためには、習得しやすいシステムでなければなりません。

このことを念頭に、Amazonは数週間前、Alexaの導入ハードルを下げるためにSkill Blueprintsを立ち上げました。このような大きくて難易度の高いプロジェクトこそ、私たちのようなUXデザイナーが手を貸し、正しい道を指し示すことができる領域です。導入ハードルの高さと習得の難しさは、ユーザーの利用を妨げます。システムが難しく専門用語が多すぎると、ユーザーは導入を拒んでしまうのです。

Alexaの導入ハードルを下げる挑戦に当たって、Skill Blueprintsのユーザビリティチームは2つのことに取り組みました。選択の制限と、既存メタファの活用です。

選択の制限

Skill BlueprintsのWebサイトを立ち上げると、ユーザーが彼ら自身のサービスを作るための20個ほどの「設計図」が表示されます。これらの中には、書き換えて使うことのできるインタラクションはほとんどありません。質疑応答や穴埋めのような簡単な書き換えのみになります。

設計図では、音声スキル開発者が構築するインタラクションのおよそ80%が既に作られています。ユーザーの選択が必要な箇所を制限することで、非開発者が大きなミスを起こすことなく、システムを簡単に設定できるようになりました。

ユーザーが慣れたUIの活用

自分でコーディングする代わりに、Skill BlueprintsのシンプルなWebフォームのインターフェイスがよく使用されています。AmazonはSkill Blueprintsのデザインで、新しくて奇抜なインタラクションに挑戦しているわけではありません。AlexaのAPIはフォーム形式の質問と応答で構成されている、簡単なWebインターフェイスです。これは標準的なフォーム構成と入力欄でできており、他のシステムと何ら変わりありません。

これらのデザイン判断は、同社のUXチームがSkill Blueprintsをただの処理として扱わなかったことを示唆しています。ユーザー調査や体験の構造化を行い、そしてそれらのイテレーションを回したのでしょう。Amazonのデザイン現場では同社のサービスを処理的に扱ってしまうことが、長らく問題でした。ほとんど戦略もなく、開発者や管理者の気まぐれに対応するのみで、A/Bテストの結果なら何でも支持していました。その結果は矛盾だらけで、しばしばユーザーの体験を妨げていました。あらゆる決定が縦割りで行われると、サービスに一貫性がなくなるだけではなく、複数の製品にまたがるユーザ視点と目的を見失う危険があります。

Amazonは、デザイン組織としてのこの縦割りに悩まされていると自覚しています。そのため、AWSのような中央集権型のデザイン組織を通して業務に取り組んだり、126 Labsのようなエージェントモデルやスタジオモデルの採用を進めています。このような思想がAlexaチームにも浸透してくるのは良い傾向です。

実際に使ってみる

Alexa Blueprintsがどのようなものかを知るには体験するのが一番だと思うので、実際に使ってみることにしました。

Alexa Blueprints上の選択肢は多くはなく、簡単に始められます。設計図の中から1つを選んで、既存のサービスをコピーし自身で好きに編集することができます。カスタマイズはガイド形式です。目的達成と簡単なセットアップに焦点を当てているため、この種のガイド形式のセットアップでよく目にする余計な作業は省かれています。

Skill Blueprintsへの最大の不満は、スキルのセットアップとアップデートです。スキルのアップデートには毎度数分時間がかかり、他サービスと比べて長いです。それも単純な設定変更ではなく、大半の場合はコードとしてクラウドにアップロードしなければなりません。ただしそれさえ乗り越えれば、Alexaはどんなくだらないジョークにもすぐさま反応します。

コードを書く手間を省いたアプリケーション構築は、インターネットの歴史を通して追求され、Yahoo PipesとGlitchの『リミックス可能な』アプリケーションスタイルで終止符が打たれました。AmazonがAlexaアプリケーション構築を簡単にできるように着手したことは、音声アシスタント発展の前兆となる出来事です。

Skill Blueprintsにおけるデザインの実践は、ユーザー体験では、便利なアプリケーションを作るには、人々が何度も利用しに戻ってくることが重要だという当たり前のことを確信させました。この確信が、AlexaのエコシステムをSiriよりも優れたものにするでしょう。Amazon全体にとってAlexaが、他の場面でAmazon製品を使う人々のために、製品をどうデザインすべきかを考えるきっかけとなることを願います。


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