タッチポイントの連続でストーリーを作る、イベントの体験デザインとは

UX MILK編集部

モノづくりのヒントになるような記事をお届けします。

近年趣向を凝らした勉強会やセミナーが増えている中で、来場者の体験をどうデザインすれば良いか悩む方も多いのではないでしょうか。イベント設計ではユーザーとのタッチポイントが多くあるため、さまざまなことを考慮し全体の体験をつくっていく必要があります。

今回は『Future of Work』というビジネスカンファレンスのデザインを手がけた、株式会社ビズリーチの田村さんに、イベント設計について話を聞いてきました。

登場人物
株式会社ビズリーチ
デザイン本部コミュニケーションデザイン室 2グループ 田村なほ美氏

コンセプトを重視してデザインに一貫性を持たせる

── 最初に『Future of Work』についてと、田村さんがデザイナーとしてどのように関わっていたのかを教えてください。

田村:働き方改革が注目されている中で、個人ではなく会社として環境の変化に対してどのように適応していくか、そのための未来の経営やこれからの働き方を考える場がFuture of Workです。今回は『Future of Work Japan 2018』として開催し、約2,000名の方に来場していただきました。

私はロゴの段階からFuture of Workのデザインに関わり、全体を通したメインデザインを担当しています。

── ありがとうございます。今回はイベントにおいて、ユーザーとのタッチポイントをどのようにデザインしていくかがテーマです。まずは田村さんが、どのようなデザインをしていったのか教えてください。

田村:最初に行ったのはロゴのデザインです。このロゴは「細胞分裂」をモチーフにしています。Future of Workは、企業が環境の変化に適応して変化や進化をしていくことの必要性を考えるイベントなので、同じように環境に適応して分裂や結合を繰り返す細胞をモチーフにしました。また細胞の結合は、イベントのメインコンテンツのひとつである、ビジネスマッチングでの出会いや繋がりの意味も含んでいます。

── ロゴはピンク色なのですね。今回のようなビジネスカンファレンスではめずらしい色だと思いますが、どのような意味が込められているのですか?

田村:メインカラーのピンクは、暗い夜が明ける様子をイメージしました。朝日が昇るという始まりや、新たな道を切り開き、変化や改革を推進する決意を表現しています。社内のフィードバックでも新しさや面白さを感じたと言っていただき、ピンクをメインカラーにして良かったと考えています。

── イベントコンセプトを大事にしてデザインしているのですね。そういったコンセプトはデザインに一貫性を持たせるために重要だと思うのですが、なにか工夫した点はありますか?

田村:イベントコンセプトをひとつの資料にまとめて、デザインが軸から外れないようにししています。最初からコンセプト自体はあったのですが、明文化はされておらず曖昧な部分がありました。そのため改めてキーワードを整理し、どのようにデザインで表現できるかを話し合い、イベント担当者全体で認識のすり合わせを行いました。

資料では、写真やWebの特設サイトで使うアニメーションのイメージなども含めて定義しています。これは、イベント会社や映像会社と一緒に仕事をする上でも役立ちました。

差別化を意識したイベント前のデザイン

── イベントのロゴやコンセプト以外にもデザインを担当されたものがあれば教えてください。

田村:はい。イベント前・イベント当日・イベント後の3つのタッチポイントに分けてお話していきたいと思います。まずイベント前のデザインとしては、招待として送ったダイレクトメールのデザインにはこだわりました。オンライン上でさまざまな集客施策に取り組んだのですが、オンラインだけでは大手企業の経営者の方などリーチできない層の方がいらっしゃいます。そのような方にイベントを知っていただく手段としてダイレクトメールをデザインしました。

田村:テーマは「多忙な経営者が開封してくれるダイレクトメール」です。

ほかの大きなイベントのダイレクトメールを調べたところ、透明な封筒の中に大きなチラシが入ったものが多くありました。おそらくこういったものが大量に届くのだろう、と想像しその中でどう目立たせるかを考えました。

── ほかと差別化して目立たせるために、どのようなデザインをしたのですか?

田村:よくある透明の封筒ではなく、トレーシングペーパーでできた封筒を使いました。透明な封筒はほかに紛れてしまいますし、安っぽく見えてしまうためです。トレーシングペーパーにしたことで、封筒を開かなくても透かせば中身を一部見ることができ、ダイレクトメールの内容がわかるという利点もありました。また、封筒窓からはSpecial Invitationの文字が覗く形にし、特別な案内であることが伝わるデザインにしています。

── デザインで興味をひく形を作ったのですね。ダイレクトメールを送ってみて、実際の反響はどうでしたか?

田村:大手企業の取締役の方など、名だたる企業の方から申し込みがありました。「目を引くダイレクトメールだったので開きました」との感想もいただきました。さらに、通常1%程度と言われるダイレクトメールの反応率が約4.6%という結果も出ています。実際にアプローチしたかったターゲットに反応してもらえた実感がありますね。

実用性・コンセプト・コンテンツを踏まえて作ったイベント当日のデザイン

── それでは次に、イベント当日のデザインについて聞いていきたいとおもいます。

田村:イベント当日のデザインは「実用性」「イベントコンセプト」「イベントコンテンツ」の3点を踏まえて作りました。私は会場のホワイエ(入り口から観客席までの広い通路)からBGMまで幅広くデザインしています。

参加者の実用性を踏まえたデザイン

── まずは「実用性」を踏まえたデザインについて教えてください。

田村:ホワイエや会場の誘導サインでは、参加者の実用性を踏まえたデザインをしました。当初ホワイエでは、協賛企業のロゴと登壇者のサインを展示することだけが決まっていたのですが、受付に近く参加者がよく通る場所なので物足りないと感じたのです。

そこで、実用的な情報としてイベントのタイムテーブルや会場マップのパネルをデザインし、設置しました。イベント用のパネルは今までにデザインしたことのない大きさだったので、読みやすい文字サイズの設定などに苦労しました。そのため、スクリーンにデザインを投影して同じ縮尺のパネルを作ったりと試行錯誤しました。

── テストも踏まえてデザインしていったのですね。誘導サインではどのようなデザインをしたのですか?

田村:誘導サインは初めイベント会社から設置場所を提示されたのですが、本当にその場所で良いのかを現地に足を運んで検証しました。どのフロアになにが置かれるかを把握して、道に迷いやすい場所に誘導サインを置きました。

── Webでいう導線設計のようなものですね。

田村:はい。イベント会社の方に任せきりにするのではなく、デザイナー主導で率先して設置場所の改善を提案しました。

イベントコンセプトに合わせたデザイン

田村:イベント会場の照明は、イベントコンセプトである変化を意識しています。紫色を使い、朝から夜の時間の流れで色の明るさを変化させることでコンセプトを表現しました。

── ロゴのメインカラーのピンクではなく、紫色なんですね。

田村:初めはピンクで考えていたのですが、照明で使用した場合イベントのイメージと合わなかったため紫を使用しました。元々は朝焼けから日中、夕焼けの流れを照明で表現したかったのですが、現実的に難しかったので時間の流れだけをデザインとして残しました。

── デザイナーが照明まで担当するというのは珍しいと思うのですが、初めから担当することが決まっていたのですか?

田村:イベントの実行メンバーから照明はデザイナーの意見で、と初めから言われていました。過去にほかのカンファレンスに参加して照明が与える印象が強いと感じており、また関われるところはすべてデザインしようと決めていたので、積極的に取り組みました。

コンテンツに合わせたデザイン

田村:会場のBGMは、メインコンテンツのひとつであるビジネスマッチングとの相性を考えて選びました。ビジネスマッチングは、出展者や参加者同士の出会いのきっかけを提供するコンテンツです。無音の空間や、逆に騒がしい部屋だと会話が弾まないため、軽やかな音楽を選んでいます。話しやすさや活気のある雰囲気を演出することを目指しました。

イベント後や外部の体験もデザインする

── イベント前・当日のユーザーとのタッチポイントのデザインを聞いてきましたが、イベント後のタッチポイントではどのようなデザインをされたのですか?

田村:イベント後の体験デザインとして、エグゼクティブチケット(すべてのコンテンツをお楽しみいただけるチケット)ご購入の方向けに、ペンやノートなどの記念品を準備しました。当初配布する予定はなかったのですが、参加者の方の満足度を向上させ、ブランディングの一環にもなるのではと考え提案しました。

── 特に新しいイベントの場合、ブランディングという観点も重要ですよね。

田村:今後も継続して開催していく予定なのでブランディングは重視しました。セッションなどコンテンツの満足度も大事ですが、映像や装飾、照明などデザインによってもブランディングできることはあると思います。

またブランディング観点だと、イベントに参加していない人のことも考慮する必要があります。今回会場内のさまざまな場所にSNSのハッシュタグを掲載したので、写真を投稿してくれる方も多かったのですが、イベントに参加していない人は、その投稿写真を見て「人気があるカンファレンス」などといった印象を持ちます。

そのため、どのような角度で撮影しても登壇者が華やかに見える演出などデザイン面で工夫できる点はある思います。これは今後さらに改善したいポイントです。

アウトプットの積み重ねでストーリーを伝える

── 最後に、田村さんはイベントのデザインにおいてどのような点を面白いと感じますか?

田村:イベント設計は、参加者とのさまざまなタッチポイントにおいて、一貫性やストーリーを感じてもらわなければいけないので、そこが難しさでもあり面白さかなと思います。

あとは自分が作ったものを手にしてる人たちを間近で見ることができるのは、新鮮で刺激でしたね。普段サービスのブランドデザインも作るのですが、そのときは届いた先の人がどう見て感じているのか直接知ることが難しいので。

『Future of Work』はこれからも続くので、今回の反省も活かしつつストーリーを積み重ねていきたいと思います。

── 次回開催も楽しみですね。本日はありがとうございました。

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株式会社ビズリーチ主催の『Future of Work』は今後も続きます。次回は「Inside Sales Conference 2018」と題し、「インサイドセールス」をテーマに掲げた1,000人規模のカンファレンスを12/6(木)に開催いたします。

興味のある方は、以下より詳細をご確認ください。

『Inside Sales Conference 2018』の特設サイトを見る

提供:株式会社ビズリーチ
企画制作:UX MILK編集部