人間中心設計(Human-centered design :HCD)とは、プロダクト開発者が人々に設計プロセスを説明するために使用される用語です。HCDとは、すべての問題解決プロセスで、プロダクトを利用するユーザーの視点を意識しつつ問題の解決策を見つけていくというものです。
この記事では、HCDの4つの基本原則をまとめました。
1. 個々のユーザーに注目する
なにをデザインするにせよ、いつもプロダクトユーザーのことを念頭に置いてください。彼らは抽象的な「ユーザー」ではありません。あなたのプロダクトとコミュニケーションをとる実在する人物なのです。プロダクトは、ユーザーがそれぞれの目標を達成するために役立つ単なるツールにすぎないことをくれぐれも忘れないでください。
ユーザーがプロダクトを使う真の目的を見極めることが重要です。
見極めのプロセスは簡単な質問から始まります。それは、誰のためにこれを作っているのか? ということです。自分自身のためにプロダクトを作っているのでない限り、利用者の目線に立ってまず考えてみなければなりません。
- 誰がこのプロダクトを利用するのでしょうか?
- どのような状況(時間、場所、装置など)で、プロダクトを1番利用すると予想できるでしょうか?
ターゲットユーザーを定義したら、次はユーザージャーニーを理解しなければなりません。JTBD(job to be done)フレームワークと呼ばれるツールは、この点で非常に参考になります。
_____のとき、私は_____がほしいので、_____することができます
このフレームワークは、重要なユーザージャーニーに気づき、解決可能性を思い描くためのすばらしい方法です。
2. 根本的な問題をみつける
すべての問題を解決しなければならないかというと、そうではありません。Don Norman氏は、問題を根本的な原因とそれに付随する症状の2種類に分けました。彼は、まず解決しなければならないのは根本的な問題だと主張しています。そうすることで他の問題を完全に解決することにつながるからです。もちろん、根本的な問題をつきとめる調査には時間がかかりますし、プロダクトチームは十分に議論する時間が無いことがしばしばです。しかしどんなに時間がかかっても、これをはっきりさせることはデザインプロセスに不可欠です。デザイナーがこの部分を怠ると、根本的な解決に繋がらない間違った問題解決に時間をかけてしまうことにもなりかねません。
ですから、ここは投資と考えましょう。
投資を行えば行うほど、時間とエネルギーが節約できます。
3. 全体のユーザー体験を考える
ユーザージャーニーの一部にだけ注目して、他の部分に目がいかなくなってしまってはいけません。部分的に改善しても、全体的なユーザー体験が向上するわけではありません。なにを実現し、最終的に達成したいかといった全体像を常にイメージしてください。
プロダクト購入までのユーザーの流れがとてもスムーズなのに、カスタマーサポートにたどり着いたら途端に対応が遅くなるというようなECアプリを想像してみてください。プロダクトの購入体験がいくら良くても、全体的なユーザー体験はあまり良くならないでしょう。
ユーザーは、デジタル面と物理面の双方を含むすべてのタッチポイントで良好な体験をする必要があります。
4. 常に自分のデザイン判断をテストする
デザイン解決のアイデアやプロトタイプ作成にどれだけ時間を費やしたとしても、常に実際の人に対してテストしてみなくてはなりません。テストセッションからのフィードバックは、改善が必要なデザイン部分を見つけるのに役立ちます。
実際のユーザーの代わりに、家族やチームメンバー、株主でデザインをテストしてはいけません。なぜなら彼らはユーザーの代表になり得ないからです。デザイナーや開発者さらにはUXの研究者でさえ、偽の合意効果と呼ばれる、他の人も自分と同じように行動するだろうと考える傾向に悩まされます。言い換えれば、製作者は、プロダクトユーザーを自分と似たような人物だと想定してしまうのです。もう一度言いましょう。
あなたはユーザーではありません。
だからこそ、実際のターゲットユーザーを観察するだけで貴重な洞察が得られるのです。