リリース前に合意を得るためのフォーマルデザインレビュー

Arin Bhowmick

Arinは、サンフランシスコにあるIBMの副社長です。現在はIBM Cloudのデザインチームを率いています。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

How to Run a Successful Design Review (2018/11/13)

ソフトウェア企業のUXデザイナーのように、私たちもたくさんのデザインレビューを実施します。製品開発を成功させるためには、デザインプロセスの全工程でデザインレビューとフィードバックをすることが決定的に重要です。中でもデザインレビューがもっとも大切になるタイミングの1つは、製品を公開する直前です。この段階ではデザインはすでに完成し、プロトタイプに反映されています。

実際にデザインを見直す段階も大切ですが、この最後のレビューにおいて、正式なプロセスを構築することもまた重要な要素です。デザインレビューのプロセスを標準化することで、製品をデザインする際に毎回そのプロセスを使い回せるようになります。

デザインチームは納期に間に合わせようと必死に働いているせいで、この最後のデザインレビューを忘れてしまうことが多いです。会社は、よくこの最終ステップにかける時間と費用はないと考えがちですが、製品をリリースする直前にデザインレビューを実施することは、製品だけでなく、何よりもエンドユーザーに大きな効果があります。

なぜフォーマルデザインレビューが有効なのか?

(編注:フォーマルデザインレビューとは、さまざまな専門家が集まり、デザインを評価して問題点を徹底的に抽出するデザインレビューのこと)

ソフトウェア企業では、どんなに優れたデザイン制作物でも、資源と技術の制約や納期のプレッシャーに影響されます。デザインチームから製品管理部門、開発チームへとデザインが引き渡されていくうちに、デザインは時間やビジネスによるさまざまな制約を受けて、まるで伝言ゲームのように変化していきます。結果的に伝言ゲームと同じように、デザインチームが想定したものとできあがったものが、乖離していることが多く見られます。

デザインレビューによって変化するもっとも重大な側面は、ユーザーのニーズに焦点を当てられるようになることです。私たちが最近実施したデザインレビューでは、デザインの責任者が「アクセシビリティを考慮すると色の選択が最適ではない」と製品を評価しました。フィードバックによってデザイナーは、このような詳細な部分からであっても、ユーザーのニーズに立ち返ることができたのです。誰でも利用できる製品を制作することは私たちのチームのデザインにとって重要な要素であり、デザインレビューがもつ強みの1つでもあります。

最終段階でフォーマルデザインレビューを実施することで、公開されるデザインがデザインチームが当初思い描いていた通りに、ユーザーのニーズに合った形で制作されているかどうかを確かめることができます。このメリットは長い目で見れば、製品、ユーザー、そしてチーム全体に成功をもたらすでしょう。

デザイナーへの利点

デザイン評価を行うIBMのチーム

フォーマルデザインレビューは、製品や会社の事業に影響を与えるだけではなく、デザインチーム自体にも利益をもたらします。会社がリリースするさまざまな製品のデザインレビューに参加して、異なる製品チームから集まったデザイナーと関わることで、デザインのビジョンや戦略、哲学がすべてのデザイン工程で共有されるでしょう。

たとえば、私たちのチームでフォーマルデザインレビューを導入してから、デザインリーダーの1人は、密接に関係する製品同士でデザインを一貫させるよう率先するようになりました。フォーマルデザインレビューは、ほかのチームが制作している製品を観察し、製品同士でより一貫したデザインを制作する機会になるのです。

チームの作品をほかのチームと評価し合うことで、チームの士気が高まり、知識が共有され、それぞれのチームを資源として見られるようになります。デザインチームがグループやプロジェクトごとに孤立しやすい大企業において、これは特に重要です。チームメンバーが直面している問題や解決した課題を評価することで、その経験を制作物に還元することができるでしょう。

デザインレビューを上手く実行するには

リリース直前のデザインレビューがそれほど重要ならば、どのように優れたデザインレビューを実施しればいいのでしょうか? この章では、私たちのチームで行っているレビューを基にいくつかのガイドラインを共有したいと思います。

フォーマルデザインレビューには色々なやり方があります。遠隔でも対面でもできますが、いずれにしてもデザイン、マネジメント、開発のチームからそれぞれ重要な意思決定者に参加してもらい、全員が発見を得て、次の目標を知れるようにしましょう。また、新しく偏見のない視点を取り入れるために、元のデザイン作業に携わらなかったデザイナーを含めてください。最後に、デザインの規格を維持するために、経営層に制作物を公開する最終許可を与えることも大切なステップです。

ここからは、デザインレビューを導入する際に実践できるいくつかのヒントを紹介していきます。

解決策を練る前に問題を突き止める

まず、優れたデザインレビューは、解決策について議論することよりも、ユーザー体験の問題を突き止めることに重点を置きます。解決策を編み出すのは次の段階であり、編み出すにはこのようなデザインレビューよりもはるかに徹底的な議論が必要です。フォーマルデザインレビューでは、ユーザー体験の質に影響を与えるかもしれない問題を発見して記録します。その問題の原因がデザイン自体に欠陥があるからなのか、開発過程や事業のプロセスに制約があるからなのかを議論します。理想的には、少なくとも3人のデザイナーが評価対象のデザインにフィードバックを提供すると良いでしょう。

ノートをとる

デザインレビューでは、1人のデザイナーが記録係になってすべてのフィードバックのメモを取ることで、そのほかのデザイナーが自分の意見を述べることに集中できるようにしてください。開発者やマネジメントチームから選抜するよりも、フィードバックをより正しく解釈できるデザイナーを記録係に指名するほうがいいでしょう。

リーダーを決める

加えて、1人のデザイナーにレビューのミーティングを牽引してもらうのも優れた方法です。リーダーは、すべてのステークホルダーの代表が参加していることを確認し、フォーマルデザインレビューの内容について全員の理解を統一することから始めましょう。また、議論を誘導することで、議論が解決策の話に脱線することなく、ユーザー体験の問題に焦点を置き続けることもリーダーの役目です。さらに、全員が自分の意見を発表できる時間を確保し、記録係がすべてのメモを取れるように議論のペースをコントロールする必要があります。

熟練のデザイナーをメンバーに含める

記録係とリーダーに加えて、フィードバックを提供することだけに集中し続ける第3の参加者が必要です。第3者の役割には、デザインの種類やガイドライン、デザインレビューの会議でよく起こる問題とそれらの対処法について熟知しているデザイナーが最適でしょう。繰り返しますが、製品の制作に携わっていないデザイナーに参加してもらい、偏見のない視点を取り入れることも重要です。

チェックリストを使う

デザインレビューで参照できるように、スタイルガイドとパターンを用いると便利です。

デザインの質を評価する際には、デザインのガイドラインに加えて、スタイルガイドやパターンを参照するとよいでしょう。徹底的に見直すためには、見落としやすい点が書かれたチェックリストを使うことも有効です。情報アーキテクチャやナビゲーション、インタラクションデザイン、ビジュアルデザイン、アクセシビリティ、ヘルプやドキュメントといったデザインに関するすべての側面がチェックリストで網羅できるようにしましょう。

デザインレビューに先立って、チェックリストをそれぞれのチームに提示することで、会議の前に自分たちの制作物を見直すことができます。また、会議中に評価者に提示することで、デザインの基本的な必要事項をチェックすることができるでしょう。

結論を記録する

デザインレビューの最後には、見つかった課題をリリーススケジュールに組み込み、デザインの問題点としてラベリングし、緊急度を適切に設定するべきです。その後、製品チームは考えられる解決策について議論します。問題点が適切に対処されたならば、製品をリリースする準備が整ったといえるでしょう。

経営層の許可を得る

デザインチームの取締役から最終的なデザインを承認してもらうことが最後の大切なステップです。この最終承認によって、すべてのデザインレビューにおいてデザインの規格を維持し、製品の制作に関するデザインチーム内での意見を一定に保つことができます。

私たちのチームのデザインレビュープロセスについて、インサイトを共有してくれたRami Alayanに感謝します。

 


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