エンジニアとデザイナーの思考からチームの多様性を考える

三瓶 亮

UX MILK編集長。株式会社メンバーズ LXグループ所属。LX(ラーニングエスペリエンス)にまつわる新規事業立ち上げなどをしています。ゲームとパンクロックが好きです。 Facebook / Twitter

サービス開発の現場においては様々な人が関わり、1つのアイデアを形にしていきます。
これまでにないアイデアや発想が必要なときには、物事の捉え方や課題解決の手段が多様な人たちを集める必要があります。

「多様性があるチームは強い」という考え方は最近認知されつつあるのですが、これを実現するには多くの課題があります。特にエンジニアとデザイナーはお互いのスキルも思考の癖も異なることから、意見が食い違うことも多々起こります。

お互い納得いくまで話し合って前に進むことができれば問題ないのですが、延々と議論が続き、平行線のまま前に進まないことや、議論を放棄してしまい結局声の大きい人の意見が通るような事態になってしまうと多様性の意味も薄れてきてしまいます。

ここではエンジニアとデザイナーの課題解決の思考を整理するとともに、多様性のあるチーム作りに役立つ手法を紹介します。

不確実性に向き合うエンジニア、アイデアを膨らませるデザイナー

どんなに優れたアイデアでも動くシステムを作らないと意味がありません。エンジニアは抽象的で不確実性の高い要求を分解して、動くシステムに落とし込むために論理的思考が重視されます。つねに実現可能性を考えるところから逆算して考える必要があります。そのためアイデアが小さくまとまってしまう可能性があります。

一方、デザイナーは直感的な判断も重視されます。客観的な分析データよりも現場でのヒアリングから得た示唆を重視することもあります。実現可能性よりもアイデアを膨らます作業を優先することは、不確実性を膨らませる行為にも近いものがあります。また、デザイナーは言葉で表現するよりもイラストやプロトタイピングで先に形にしてしまうほうが得意なことが多いです。

多様性のあるチームを作るためになにが必要か

では、エンジニアとデザイナーの能力が最大限活用できる多様性のあるチームを作るためにはなにが必要でしょうか? 1つの手段として効果的なのは、それぞれの担当を決めずに各領域をとりあえずやってみることではないかと考えます。

解決事例 モブデザインによる開発

上記のような課題解決策として弊社ではモブデザインを取り入れています。これは3人以上の人数が集まってその場でデザインを固めてゆく方法です。デザイナーだけではなく、エンジニア、プロジェクトオーナー等を巻き込んで大型ディスプレイの前に集まってデザインを詰めてゆきます。

写真は弊社でモブデザインにより画面仕様を固めてゆく時の様子です。

モブデザインをやる場合の手順(弊社の場合)

モブデザインを取り入れたい方のために、弊社で行う場合の手順をご紹介します。手順は全部で4つあります。

  1. 1. デザイナーは今回発表するデザインのゴール(どういった課題を解決するか)を事前に共有する
  2. 2. 参加者には事前にプロトタイプを公開して、手元のPCやスマートフォンで見られる状態にしておく
  3. 3. デザイナーはプロトタイプのデザインに至った背景、悩んでいるポイントを伝える
  4. 4. 課題解決となる意見や改善点を出し合う、デザイナーはSketch等のツールでその場で修正して比較する

紹介した手順の中でも、発表するデザインのゴール(どういった課題を解決するか)をしっかりと取り決めておくことが成功の秘訣です。デザインには人によってこだわりや好みがあり、必ずしも正解があるわけではありません。モブデザインで発表するデザインの課題設定をないがしろにしてしまうと、意見が割れた場合や話が脱線した場合に本来解決したい課題以外の議論やフィードバックになってしまう可能性があります。本来立ち戻る場所を明確にしておくことでチームメンバーは適切なフィードバックを行うことができます。

モブデザインのメリット

モブデザインはデザインの途中段階を見せる行為でもあるので、より完璧を求めようとするデザイナーにとっては多少の歯痒さがあるかもしれません。しかしそれを上回るいくつものメリットがあります。たとえば以下に挙げるようなものです。

  • デザイナー、エンジニア、ディレクター、プロジェクトマネージャーなど役職を超えた意見交換ができる
  • デザインの課題やプロセスを口頭で伝えることで、自分自身の整理にもなる
  • 技術的な観点や仕様上の制約についてもその場でフィードバックがもらえる為、開発の手戻りが少ない

モブデザインを導入することで、ビジネス要求・システム的な制約・UXなどの話をその場で詰めていくことができます。様々な視点を取り込みつつ、デザインを練ることができるのは大きなメリットです。またデザインを作り込んでいった背景が開発メンバーに共有されるので、後々になってイメージの齟齬が生まれるのを防ぐことができます。

お互いが補完しあうことが重要

専門性のある領域がありながらその他の領域までカバーでできる人材同士がお互いに補完しあうことで、直感と論理思考をバランスよく組み合わせて、新たな製品や技術を生み出すことができます。

多様性のあるチームにおいて重要なのは同じ課題を一緒に考えるという姿勢からはじまります。デザインやプログラミングというのは課題解決の道具でしかないという姿勢で、お互いが補完しあって仕事に取り組むことが重要ではないでしょうか。


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