Webのフォームでは、「John」と 「Smith」というように、姓と名に分けて尋ねるものがあまりにも多いです。しかし問題になるのは、そのように二分割できない名前を持つユーザーに対して、フルネームや好きな名前を記入する欄を設けていないことです。
姓と名という慣習は、アメリカ人にとっては文化的にも個人的にも大多数の期待に沿っているかもしれません。しかしほかの国々に出身地や家族のルーツがあるユーザーも考慮に入れるなら、多様な文化に敏感になるべきです。少し視野を広げて簡単な調整をするだけで、どのような人にも対応するフォームを作ることができます。
現在のフォームの問題点
現在のような簡単にパーソナライズできる時代では、企業は訪問者の情報を上手に活用しようとします。「親愛なるJohn様」、「Smith様一家へのごあいさつ」などと言えればいいのですが、こうしたパーソナライズはユーザーの嗜好を考慮に入れる必要があります。
名前が分かれていない、もしくは1つの名前しか使いたくない人は、「姓」と「名」の両方に記入することに不満を感じるかもしれません。有名人では、Madonna氏やBeyonce氏がその例です。さらに生じる可能性が高い問題として、3つ、4つ、5つに名前が分かれている人々は、2つのフィールドに名前を収めることができません。
多くのデザインの特徴を基にテンプレートや既存のモジュール、暗黙のスタンダードが生まれたことで、デザイナーの視野は狭くなり、Web全体にこの問題が広がっています。私たちの連絡先フォームやリードではあまり見かけない要件ですが、支払処理などの法的要件のせいで問題がより複雑になることもあります。
型に合わない名前を持つ人々にとにかく枠に収めるようにうながすことは簡単です。私の場合、自分の名前に「H.」が入っていると主張すると、大抵は姓か名どちらかの欄に記入するように言われます。しかしこの提案通りに記入すると、スペースや句読点によってバリデーションエラーになってしまうことが多いです。また、「親愛なるMark H.様」や「親愛なるH. Anbinder様」といった望まない体験をすることもあります。
解決策は?
唯一の解決策は、人々に名前を提供してもらうことです。任意の部分だけ頼むのではなく、名前全体の入力を要求しましょう。
正確に自分だけの連絡先を識別するためなら、人々はフルネーム、あるいは自分の好きな名前を提供してくれるでしょう。家や会社にJohn Adams氏とJohn Quincy Adams氏という2人がいるとしたら、適切な名前のほうにメールを送ることができれば混乱は避けられるでしょう。たとえメールを受け取ってから間違いに気づけるとしても、名前を提供してくれた人やイベントに登録してくれた人自身に、わざわざ似た名前の同僚宛か自分宛かを識別させるべきではありません。
上のような事例はめずらしく思えるかもしれませんが、私にはコーネル大学の同じ学部にJohn Parkerという名前が2人いた経験があります。名前以外で厳密に2人を識別する方法はないと伝えたら、彼らはサービスを利用してくれないでしょう。彼らが自分の好きな名前を記入するのは、自分を識別したいからだけでなく、混乱を避ける必要があるためでもあるのです。
たとえ必須項目ではないとしても、ミドルネームのフィールドを追加するだけでは理想的な解決策になりません。私の名前やJohn Quincy Adams、James Earl Jonesといった名前には対処できるでしょう。しかし、歌手のLorde氏の本名であるElla Marija Lani Yelich-O’Connorには対処できません。
ミドルネームというアプローチは、私のベトナムの友人であるNguyen Ngoc Kim Khoi氏にも通用しません。さらにNguyenはファーストネームではなくファミリーネームなので、「親愛なるKhoi様」と機械的に対処すると、失礼になることがあります。4つに区分けされる名前はベトナムやアラビア語圏では非常に一般的ですし、ほかの多くの文化でも同様です。
またこれらの例は、どれもMartin Luther King Jr.牧師のように牧師を示す「Rev.」や、取得が難しいPh.Dを使用したい人が用いる敬称や接尾辞に対して対処しようともしていません。Frank Sinatra氏がネバダ大学ラスベガス校とスティーブンス工科大学で名誉学位を取得したあと、「Dr.」がついていないことで人々に抗議したという出来事もありました。
必要なものを手に入れる
人々に好きな名前を尋ねることには、さらなる正当な理由があります。「親愛なるJohn」と呼んだり、会議出席者のファーストネームを目立つようにネームバッジで示したりできるからです。
HighEdWeb会議は、フォームで名前を尋ねる際に優れたソリューションを提供しています。フルネームとともに、挨拶で使用したい名前も訪ねているのです。加えてこのフォームでは、挨拶で使いたい名前の付け方とその理由を明確にするために、挨拶は「Alice」フルネームは 「eg Alice D. Cook」といった例を挙げて文脈に合わせた記入例を提供しています。
さらに、バリデーションスクリプトはできるだけ寛容にしてください。たとえば、重要なデータベースコードに干渉するとしたら、名前にバックスラッシュを使わないように警告するでしょう。しかしアポストロフィを拒否してしまうと、Scarlett O'HaraやM'Lynn Eatentonといった名前が弾かれてしまいます。同じようにハイフンも拒絶してはいけません。
まとめ
幸いなことに、このようなフォームを作成するために必要な変更はほとんどありません。既存のファーストネームのデータベースフィールドを、識別できる好きな名前を求める欄として活用するか、必要なパーソナライズができるようにフィールドを追加するだけで済みます。これらのような短くて簡単な変更作業だけで、より包括的なユーザー体験にすることができます。
もし多くのWebサイトと同じように姓と名の2つを尋ねるフォームを持っているなら、この記事でフォームにいくつかの変更を加えるべき理由と、変更する方法についてのアイデアを提示できていると幸いです。