追加されるUI要素の立証責任は誰が負うのか

Paul Boag

PaulはUXデザイナーであり、デジタルトランスフォーメーションの専門家です。非営利団体や企業のWeb、ソーシャルメディア、モバイルを使ったユーザーとの結びつきを支援しています。

この記事はboagworldからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Where Does the Burden of Proof Lie for New UI Elements?

会社として、Webサイトに掲載するコンテンツを「なぜ載せないのか」ではなく「なぜ載せるのか」といった判断基準で選ぶように行動をシフトさせるべきだ。

「我社のアプリをダウンロードしてください」と表示するバナーが、多くのWebサイト上に現れるのが好きではないと、最近Twitterに投稿しました。また、そのようなバナーは迷惑で注意を削ぐものにほかならないので、Webサイトの管理人はバナーを削除するべきであるとも述べました。

あなたのアプリをダウンロードしたいならばとっくにApp Storeにでも行っている

驚くほどのことではありませんが、twitterで多くの反響がありました。なぜ広告主がユーザー体験を損なっているのか、多くの人が私に正当な理由を述べるように求めてきたのでした。彼らは私のクレームを裏付ける確かな確証を求めてきたのです。正直なところ、私はそのような確証はもっていなかったのですが……。

もちろん彼らの反応は公明正大であり、非難することはできません。しかし、私は考え込んでしまいました。なぜ立証する責任が私にあるのでしょうか。なぜ私がWebサイトからある要素を削除する必要性を立証しなければならないのでしょうか。なぜその必要性を立証するのはUIを作る人たちの仕事でないのでしょうか。

簡潔なWebサイトを維持するためには

デジタルチームがこの問題といつも格闘していることはよくわかっています。彼らはいつもユーザー体験を簡潔にしようと、組織をまたいで仕事仲間と闘っています。しかし、彼らは削除したい全てのUI要素について議論しなくてはならないわけです。もっというと、より多くのUI要素をいれようとするリクエストの嵐に耐えているようなものです。

不必要なUI要素の排除を正当化し、証明する必要性自体をなくすときが来ました。その立証責任は、UIデザイナー自身ではなく、彼らに対してUI要素の追加をリクエストする人々に移行するべきです。

今こそ新しいアプローチを採り、不必要なUI要素排除の正当化自体をやめるときです。その代わりに、UI要素の追加をリクエストする人々にそれらを追加する正当性の立証責任が降りかかる形にしましょう。しかしそれを実現するためにどうしたらいいのでしょうか。

どのようにして立証責任のありかをシフトさせるのか

このためには、デザイン原則があるかが大変重要になってくるかもしれません。UI要素を加えることを望む側に立証責任があるという考えや、全てのUI要素にその存在を正当化する義務があるという考え方をすることによって、私たちは新しい前提に立つことができます。

デザイン原則はWeb上での活動を順調に進める上で 役に立つ参照元です

多くの場合、デザイン原則を作り出すことに対する反感を少し買うかもしれません。しかし「全てのUI要素はその存在の必要性を立証しなければならない」等の意見は、大枠で見れば大変筋の通ったことだと考えられます。ある特定のUI要素に対して議論をする時のように、人々が必ずしもその考え方に反対するわけではないでしょう。

立証責任のシフトに正当な理由をつける

もちろん私たちUIデザイナーが何の正当な理由も付けずに、責任を逃れることができると言いたいのではありません。幸運にも、すでに例をあげたようにデザイン原則については確固たる議論がなされており、なぜ立証責任がUI要素をデザインに加えることを希望する人々の側にあるのかを説明する理由があります。

それほど前ではありませんが、認知負荷についての記事を書いたことがあります。そこでは、認知負荷はどのようなWebサイトのコンバージョン率にも、大きな影響を与えると説明しました。あまりにも膨大な情報を処理しなければならない時、ユーザーはミスを犯し、情報を完全に見逃してしまうのです。最悪の場合、ユーザーはそのサイトの利用を完全に諦めてしまいます。

認知負荷の重大さは、仕事仲間に次のビデオを見せるとで簡単に実証することができます。不必要な情報が多いと、必要な情報(ゴリラ)に対して目がいかないことがわかるでしょう。

Webサイト利用時にそれだけに集中していることは滅多にありません。多くの場合、子供の叫び声からテレビの音まで、集中力を削ぐさまざまなものに囲まれています。それらに加えて、集中力を大いに削ぐものとして、Webサイト上に不必要な要素が多すぎることがあります。

Webサイトに加えるすべての要素がユーザーの認知負荷を高め、彼らがサイトをナビゲーションするときに悪い影響を与えます。

「我社のアプリをダウンロードしてください」と銘打つバナーがWebサイトに対して悪影響を及ぼすことを示すデータはありません。しかし、私はWebサイトに加えられた全ての要素が、ユーザーが感じる圧倒されるような感覚を高めることをよく知っています。

認知負荷の影響が大きいため、全てのUI要素はそれを加えることで認知負荷が高まってしまうデメリットよりもメリットが上回ることを証明する必要があります。またこれは新しいUI要素の追加を提案する人々に対して、正面切って立証責任が突き付けられることも意味します。

データに頼らずに正当性を立証する

誤解しないでいただきたいのですが、データは非常に役立ちます。しかし多くの人々がデータの提示を求めるときは、彼らがあなたの意見に同意しておらず、あなたの意見の正当性を証明できないようにする戦術であったりします。ここで述べてきたように認知負荷についての知識によって裏打ちされたデザイン原則を作ることで、私たちは立証責任のありかをUI要素の追加を提案する人々へとシフトさせることができるのです。

問題はスクリーン上により多くのUI要素を加えることと、コンバージョン率減少との間の直接的な相関関係の立証が難しいことにあります。これは「アプリダウンロード」リンクをクリックした人数の測定よりも困難な場合があります。そのためデータの有限性を理解するこし、データの代わりとして行動心理学のより普遍的な考え方や人間の集中力に対する認知負荷の重大さを学ぶことが必要です。

今こそデザイン原則を作るべき

願わくばこの記事がデザイン原則デジタルプレイブックを作る、よりよいきっかけになれば嬉しいです。もしこれらを実行に移さない言い訳をし続けるのであれば、今後の社会人生活の全てを、Webサイトに施したい小さな改良点についていちいち議論することに費やすことになるでしょう。


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