デザイン業界ではアクセシビリティがしばしば話題になりますが、実際どのように計画し、デザインするのでしょうか? 私たちが暮らすような多様化した世界では、幅広いユーザーに貴重な体験を提供できるよう、彼らをサポートする必要があります。私たちにとってのゴールは、一部のユーザーだけではなく、すべてのユーザーが利用できる体験を作り出すことです。
カナダ統計局で実施された2012年の調査から、13.7%の人々が何らかの障がいを持っていることがわかりました。このデータから、私たちのユーザー層にも特別なニーズを抱えた人々がいると推定できます。もしそのユーザー層の抱えるアクセシビリティの問題を解決することができたなら、私たちは全てのユーザーにとって良い体験を提供できたと言えるでしょう。
障がいは、認知能力や身体、精神、聴覚、視覚といった多様な形で人々に影響を与えます。しかし、障がいによって製品やサービスの使用が妨げられるべきではありません。ユーザーが障がいを持っているということは、そういったユーザーはそれぞれ異なるニーズを持つことを意味します。製品やサービスをデザインするときに、これを念頭に置けば、すべてのユーザーのニーズを満たすことができます。
しかし、ここで1つ問題があります。私たちは、障がいを持って暮らしている人々のニーズについて話し合うとき、共感力に欠けているのです。たとえば、公共団体は「アクセシビリティに対応」していなければならないと見なされがちです。しかしアクセシビリティを必要条件にすると、なぜアクセシビリティが求められているのかを見落としてしまいます。アクセシビリティに対応する手引きが書かれた管理規則に従っているかを確かめるために、デザインや開発のプロセスを使うことになるでしょうが、このようなアプローチにはまったく人間味がありません。
最近、私たちAkendiは金属製品を売る会社と仕事をしました。この会社はとても興味深いデザインの問題を抱えていました。オフィスにいる従業員も倉庫にいる従業員も、全員同じシステムを使っていたのです。colourblindawareness.orgの調査によれば、一般的に倉庫で働く従業員の多くは男性で、12人に1人が色覚異常を持っています。
私たちのクライアントである金属製品会社は、色覚異常を持つ従業員に適したシステムを作る必要があると説明してくれました。彼らはアクセシビリティを満たして欲しいとはひと言も言いませんでした。「作業員の何人かと話をしたところ、私たちのシステムを色覚異常のある従業員に対応させる必要があると言っていました。」と、人間味にあふれた立場から要件を説明してくれました。彼らは決して、色覚異常を従業員の能力を制限するものとして見なしていませんでした。そうではなく、従業員が仕事をできるように企業側が対応する必要があると考えていたのです。
我々がデザインしたシステムには、色覚異常をもつユーザーが働きやすいよう、色を変更する仕様はありません。代わりに、ツールをデザインする最初の段階からユーザーのニーズを念頭に置いて作りました。色覚異常の有無に関係なく機能するデザインを確保することで、特徴的なアクセシビリティの機能を持たない、シームレスなシステムになっています。
この会社が際立っているのは、色覚異常という問題の扱い方です。彼らは、ユーザーである毎日企業で働く従業員に共感していました。従業員同士の距離が近かったため、互いを思いやる関係が生まれていたのです。この事例と同じように、私たちも見知らぬユーザーに対して共感し、アクセシビリティに対応した包括的なデザインを作ろうと努力することができるはずです。
ここでは、包括的で利用しやすい世界づくりに熱心に取り組んでいる素晴らしい企業を紹介します。
Accessible Icon Project
Accessible Icon Projectのゴールは、有名な車いすのアイコンを捉えなおすことで、よりアクセシビリティの高い世界を作ることです。デザインを社会活動に活用することで、障がいのある人々の能力の認知を変えようとしています。
Stop Gap Foundation
トロントに住んているなら、おそらくStop Gapの設置したスロープを見たことがあるでしょう。彼らは車いすで利用できないカナダ中の店舗に、自作のスロープを提供しています。
Made by Dyslesia
Made by dyslesiaは、Virginの創設者であるRichard Branson氏などの著名な失読症の人々が牽引する世界的なチャリティです。Made by dyslesiaの主な目的は、失読症の認知を高め、学習障害を持つ人々は不利で成功できないという不名誉を取り除くことです。
Rogers & The Broadcasting Accessibility Fund
近年、私たちAkendiは弱視や盲目のテレビユーザーに関する調査を実施するために、Rogers and The Broadcasting Accessibility Fundと提携しました。調査の結果、STB(編注:放送信号を変換してテレビモニターに表示するための機器)やリモコンは目に障がいを持つユーザーにまったく対応しておらず、彼らは阻害されていることに不満を募らせていました。Rogersは現在、すべてのユーザーにとって利用しやすいテレビ体験を作り上げるために活動しています。こちらから調査結果の詳細をダウンロードして読むことができます。
満たすべき必要条件としてアクセシビリティを見なすのをやめて、ユーザーが何を必要としているのか考え始めれば、より包括的で利用しやすい世界を作ることができるでしょう。