失敗をきちんとデザインするということ

Michelle Brown

ユーザーリサーチを活用してデザイン改善をするシニアエクスペリエンスアーキテクト。

この記事はAkendi Blogからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

HOW TO FAIL BETTER THAN UBER

「失敗の話をしよう」

この言葉は過去に例を見ないほど、賞賛されるようになったと思います。Googleで「失敗」を検索すると、「なぜ全ての成功は失敗から始まるのか」「なぜ失敗は成功にとって良いのか」といった刺激的な記事のタイトルが多く出てくるでしょう。また失敗は「早く失敗せよ、多く失敗せよ」のように、リーンUXのアプローチの中でもよく登場する概念のひとつです。

そんな状況の中で、私は革新的な意見を述べたいと思います。

失敗は悪いことです。

そう、それはこんなにもシンプルなことです。失敗を望まないのは人間の直感的な反応でしょう? 失敗を望まないのには理由があります。失敗は良い目標にはなり得ないのです。

失敗を美徳として褒め称えたり、「早く失敗せよ、多く失敗せよ」といった言葉の背景にある考え方を掘り下げている記事を実際に読んでみると、そこでは失敗は素晴らしいものだとは、まったく語られていないと気づくでしょう。それよりも、何かが上手くいかないときに進んで変化を起こすことが大切だ、といった考えについて語られているのです。

進んで変化を起こすことは、失敗を受け入れることではありません。失敗を避けようとすることです。何かが上手くいっていない状況の中で変化を起こさなかったり、それに対して順応しないのであれば、あなたはすでに失敗しています。

それでも私はこの記事で失敗について、本当の失敗について話したいのです。

どんなに避けようとしても、失敗が起こるときはあります。私たちは完璧ではないので、いつの間にか、失敗していることもあります。

しかし失敗が起こったときに、毅然と予測した上で失敗するか、惨めに燃え尽きるように失敗するかを選ぶことはできます。

これがデザインをする上で失敗に備えるべき理由です。ここではまず、失敗の例としてUberの話をしましょう。

ひどい失敗

最近Uberにサインアップしようとしましたが、それは気絶するほどひどい失敗例でした。

UberのWebサイトには、自分たちのサービスは「もっとも簡単に使える方法」だと誇らしげに書かれています。一連の経験をしたあとに、これは誇大表現だったとわかりました。

App StoreでUberのアプリをダウンロードして開きました。電話番号を入力する最初のステップが終わりかけたところで、次のようなメッセージが現れたのです。

あなたのアカウントは現在利用できません。詳細はt.uber.com/account-disabledをご確認ください

これまでにUberのアカウントを設定したことがなかったので、このメッセージの意味がまったくわかりません。とにかくエラーメッセージに表示されているアドレスをクリックしようとしましたが、リンクではありませんでした。

まずアプリとモバイルブラウザとの間を何度か行き来してみた後に、この件についてより詳しい情報が得られることを願って、さきほど表示されたアドレスを入力しました。

表示されたページでは、姓、名、携帯電話番号、最近の過去2回のUberの利用詳細、メールアドレスの入力を求められました。

Uberを使用したことがないので、過去2回の利用詳細を入力する部分に何を書けばよいのかわかりません。

この時点でUberの利用を止めるのが合理的だったのかもしれませんが、その前に最後の手段を試してみようと思いました。もしかしたら、Webサイト上でならアカウントを設定できるかもしれません。 そこでUberのWebサイトを開いて「登録する」をクリックしました。

すべての入力フォームに入力し、「私はロボットではありません」にチェックを入れ、「登録ボタン」をクリックしました。 そして待ちました。さらに、待ちました。

「登録する」をさらに数回クリックし何か起こることを期待していましたが、表示される画面は何も変化しません。

画面をスクロールして上の方に戻ると、電話番号記入欄の下に赤いエラーメッセージが表示されていることに気がつきました。

最悪なことに、テキストの下の部分が隠れていてエラーメッセージを読むこともできません。

やっと役に立つアドバイスが得られそうな最初の部分だけ読めて、そこで終わりです。残りのテキストが読めるのではないかと思ってそのボックス部分を選択し、エラーメッセージを下にスクロールしようとしました。何も起こりません。

ここまで試して、私はUberのアプリをアンインストールしました。そしてこれならばUberよりもタクシーの方がよいと気がつきました。

なぜこんなにひどい経験になったのか?

ここでの問題は、すべてがうまく作動して何も問題が起きない「最高のケース」だけを想定してUberがデザインしている点にあります。

そのため「最高のケース」から逸脱したときには、とてつもなくひどい経験になってしまうのです。

1. エラーメッセージの情報が有益でなく、場合によっては読めない
2. 表示されたWebサイトのアドレスはリンクが埋め込まれておらず、テキストの選択すらできない
3. ヘルプページが状況に関連しておらず、有益でない
4. ユーザーアクションへのフィードバックが、ユーザーが見ている画面の外側に表示される

このような状況では、サービスの使用方法について明確に案内されたと感じられず、ユーザーは自分自身で解決策を推測するしかありません。 このような対処方法では、Uberに会員登録したりWebサイト上で何かをする気にはなりません。ユーザーは離れていき、どこか他のサービスの方へ行ってしまうでしょう。

洗練された失敗

ここまでは、失敗に対して上手く対処できていない例を見てきました。ここからは、ユーザーが失敗したときの様子により配慮している会社を見てみましょう。

West Jet

West Jetを使ってフライトを予約しようとしたときに、目的地まで飛ぶフライトがない日程を選択してしまったとします。このときWest Jetでは、「その日のフライトはありません」というメッセージが、ただ表示されるだけではありません。代わりにフライトが予約可能な日と、その費用が確認できるカレンダーを表示しています。

これによってユーザーの目的達成を助けるような他の方法を示し、指定した日にフライトがないことを知って、他の航空会社のサイトに移動してしまうことを防いでいます。

この場合11/3のフライトは予約できませんが、11/2なら良さそうです。

Netflix

友人に勧められた「Housebound」という映画観たくてたまりません。とてもよいホラー映画らしく評判も高いので、怖がる準備はできています。Netflixで調べてみると見たい映画はありませんでしたが、「結果が見つかりません」というメッセージの代わりに、Netflixから選べる「Housebound」と似た映画のリストが表示されました。

West Jetのときと同じようにNetflixでもまた、ホラーが無性に見たい気持ちを満足させてくれる別の映画を薦めることで、ユーザーがNetflixを使用するのをやめて、どこか他のサービスを利用するのを防いでいます。

Pay Scale

ユーザーに見せるべき、関連コンテンツが無い場合はどうすればよいでしょうか?

ユーザーに退屈なエラーページを表示する代わりに、Pay Scaleでは失敗の瞬間を楽しい経験に変えています。

まずPayScaleの人気コンテンツをユーザーに提案し、見つからないコンテンツが本当に必要な場合はどうするか聞いてきます。そして最後には、滅多に出会えない紫色のリスを見つけたと知らせてくれます。

サイトで機能していないページを探す行為を、隠されたイースターエッグを探すような楽しい経験に変えてくれるのです。

洗練された失敗が明暗をわける

これらの会社は、自分たちのすべての経験を考え抜き、何かがうまく行かないときにはユーザーをサポートしたいと思っています。ただ見た目が良いだけのアプリやサイトと一線を画しているのは、この細かな配慮なのです。

もしあなたのシステムが何らかの方法でユーザーに失敗させてしまったら、その影響を最小限にすることを考えるのがよいでしょう。 エラーメッセージがきちんと読めるかどうかを確認する時間さえ取らないようなことは論外です。


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