カップケーキ。丸みを帯びて小さな、あの美味しいカップケーキが嫌いな人なんていませんよね? 何年も人々に受け継がれてきた歴史があるカップケーキは、化学、冒険心、そして問題解決のための、豊かなレガシーを含んでいるといえます。
今日は、パン職人がカップケーキを焼くプロセスと、デザインのワークフローがどのように似ているのか、その5つの観点に触れつつ、どうやって私達のワークフローが改善できるかを考えていきます。ちなみに、先に警告しておきますが、ちょっとおなかが空いてくるかもしれませんよ!
1. 必要なツールだけを使う
カップケーキは、デザインという面においてかなり深い歴史を持っています。 中世には、小さな像が刻印されたミニチュアケーキが、読み書きができない一般の人々に聖書の知識を広めるために使われました。 当時福音を広めていた祭司たちは、現代においても販売やマーケティングにおいて多く使われている、シンプルでパワフルな方法をマスターしていたのです。その方法とは人々に無料で食物を与えることです。
食料品店で、新製品の無料サンプルや特定の会社のロゴ入りの無料のスナックを配布しているのは、これらの企業が何百年も前と同じ戦術を使っているということなのです。
デザインプロセスにおいて、コミュニケーションや問題解決の観点から考えることは重要です。あなたが使うべきツールからもっとも抽象的なアイデアにいたるまで。 覚えておいてください、中世の司祭たちは彼らのメッセージを伝えるために複雑なことは何も必要としませんでした。ケーキがすべてだったのです!
おいしいカップケーキを焼くために必要なツールは、鍋、紙型、材料を混ぜるためのボウル、そして焼くためのオーブンです。 何かのメッセージを伝えるのに必要でないものは、おそらくそこにあるべきではありません。 それほど重要ではない思うツールは省いてみて、それでもうまくいくかどうか確かめてみましょう。
2. 計量は慎重に、焼くときは一気に
ゼロからカップケーキを焼くことは、うまく焼けるか、しくじるかのどちらかです。インスタントケーキミックスなどを使用すればほとんどの人がうまく焼けますが、昔ながらのカップケーキで自分の腕を試してみたい場合は、正確なパンづくりの「科学」をよく理解する必要があります。
このように、カップケーキを作る作業はデザインとよく似ています。 たしかに、クリップアートをダウンロードしたり、Illustratorでテンプレートを使用してデザインをすばやく作成することはできますが、ほとんどのクライアントはデザイナーに対して、頭脳を使って問題を解決してくれることに対しての対価を払っているのです。
それを成功させるためには、デザイナーとしての荒っぽくワイルドになりがちな創造の衝動を、適量の「科学」で中和する必要があるのです。リサーチに基づいた、アイデアに関するテスト、クライアントからのフィードバック、リーチしようとするオーディエンス、そして数多くのスケッチなどです。
慎重に計ることが大事です。慎重さを極めた細かい「レシピ」によって、さらに強固なデザインが生まれるのです。
3. 使用する前にすべてを試す
私が共に働いたことのある比較的、細かいベーカリーには、パン職人がその日の仕事を終えた後にする儀式がありました。彼らは、使用したすべての機器、電気製品と、電気を使わない器具をすべて掃除し、それらがちゃんと機能するかどうか確かめるのです。それらをいつも通り使用し、しっかり機能しているにもかかわらず、彼らがこの儀式を行う理由は、1番大事な作業の途中で失敗することのないように、常に100%完璧な状態を保つためです。
充電が足りない、ひびが入っている、または作業に支障をきたす不完全なものがある場合は、翌日までにそれを修復します。これは食材にも当てはまります。パン屋さんの砂糖や小麦粉が足りないときに、翌朝仕事を始める直前ではなく、事前に知っておくほうが得策です。
すべてのツールの機能を確実に把握しておくと、最大の効率を得るためのプロセスを迅速に調整することができます。 常にすべてをテストするという儀式を確立し、必要なすべてのものが「調理」を始める前にいつでも実行できるようにしましょう。最近使用したからといって、それらが正常に機能していると思い込むのは禁物です。 たとえ今はそうでも、次のプロジェクトの最中に、それが正常に機能するとは限らないからです。
そしてこれらは、ハードウェア、ファイルの保存、コードなど、使用するツールに文字通り適用することができます。もう1つ、お伝えしたいのは、デザインのアイデアとデザインブリーフがどれだけ適合しているか、または適合させるべきかということです。クライアントは自身が探しているものが正しいと思いがちですが、テストを通じて彼らのアイデアを改善できる領域を見つけた場合は、躊躇せずにそのことを伝えましょう。
4. 冷却する
冷めきっていないカップケーキに粉砂糖を振りかけたことがある人なら誰でもわかると思いますが、それは大概、うまくいかないものです。熱を持ったカップケーキの上でフロスティングは、ふわふわの曲線を描く代わりに、いたるところでベタベタと見苦しく溶け出すという特性を持っています。面倒だということは重々承知ですが、カップケーキはオーブンから取り出した後に冷ます必要があるのです。そしてデザインにおいても、同じことが言えます。
できあがった新しいデザインをパソコンから即、クライアントの受信トレイに急いで送信する必要はありません。まず、「冷ます」のです。あなたの脳が少し落ち着いて考えるチャンスを得たころを見計らって、1歩下がってもう1度見直してみましょう。 ときには、ある日「正しい」ように見えたものが、次の日には目の前で変化し、クライアントの問題に対して完全に間違った解決策になることがあります。 オーブンから取り出したあと、「休ませる」時間を与えることは古くからのケーキ作りの伝統であり、デザインにおいても同じことが言えるでしょう。
もちろん、仕事に手を付けず、丸1日の間、目にしないわけにはいかないかもしれませんが、締め切りが近づいていたり、期限内にクライアントに渡す必要があるでしょう。しかし不思議なことに、たった15〜30分の休憩でさえ、新鮮な視点を得るのに十分な時間となり得るのです。
5. 美味しい機能だけを入れる
カップケーキに含まれるものは、そのすべてが機能を持っています。 本当です! ちょっと考えてみましょう。オープン前のパン屋さんで、職人がいくつものカップケーキを作る過程で、余分な材料を加えているのを見たことはありますか? 異国的な食材などを1つか2つ加えれば、代わり映えのしないバニラやチョコレートカップケーキを魅力的でおいしいものに変化させることができます。ジューシーなマンゴーの欠片や、またはジンジャーをふりかけたりもできます。しかし、あまりにもさまざまな材料を入れすぎてしまうと、到底食べられない代物となって、失敗に終わるでしょう。
デザインにおいて、機能しないものは取り除きます。 能力のあるすべてのデザイナーはこれを知っているべきであり、知っているはずです。しかし、私を含め、デザイナーたちがときに忘れてしまうことがあります。些細なリマインダーがときに、作業量を減らし、問題の本質にもっとも近づくために必要なすべてとなりうるということを。私の場合は、単純にカップケーキを思い浮かべます。雑然としたデザインを見たとき、「もしこれがカップケーキだったら、おいしいかな?」と自問してみるのです。
嘘みたいに聞こえるかもしれませんが、本当です。実際に自問してみて、それは案外うまくいきます。デザインがうまく作用し、可能な限り単純化され、新しくユニークなものを取り入れることができていたら、そのデザインは、出来上がったおいしいカップケーキを食べながら楽しんでいるとみなします。しかし、何かがうまくいっていない場合は、手のひらに乗ったただの甘い夢を見ている気がします。
デザインを異なる媒体に置き換えて考えることは、仮にそれが架空のものであったとしても、シンプルで、どんな観点からも効果的に機能することを確認させてくれる方法なのです。