なぜユーザーは無償のアンケートを引き受けるのか

Jeff Sauro

Jeffは、統計とユーサビリティに関するコンサルティング会社である、MeasuringU社の創設者であり、1,000社以上の顧客を抱えています。彼は、統計やUXに関する、20ケ以上の文献と5つの本を執筆しています。

この記事はMeasuring Uからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

WHAT MOTIVATES PEOPLE TO TAKE FREE SURVEYS?

見返りなしで企業のアンケートに回答したことはありますか?

賞品がもらえたり割引を受けられたりといった、回答した時間に対して明確な埋め合わせがまったくないようなアンケートに回答したことはあるでしょうか?

もしあるならば、あなたはどのような動機があって回答したのでしょうか? 単に興味があって、暇を潰したかったからでしょうか? それとも、プロダクトや企業に対して、肯定的な姿勢や否定的な姿勢を表明したかったのでしょうか?

実証研究には参加者が必要です。特にオンラインアンケートでは、多くの回答者を必要とします。アンケートはUXリサーチでもポピュラーな方法です。

アンケートや遠隔でのUX調査といったオンラインリサーチを実行するには、リサーチャーは、無償の回答者と有償の回答者の両方に頼らなければなりません。これまで私たちは、アンケートを向上させる方法費用についての考慮、オンラインパネルの活用、そしてアンケートに負荷を与えてしまうものについて議論してきました。

しかし、無償でこのようなアンケートを受ける動機は何でしょうか? 見返りもなく時間を費やしてくれる参加者は、より企業やプロダクトに満足している、あるいは不満を持っている可能性が高いのでしょうか? わざわざアンケートに回答するのは、本当に怒っている人か本当に喜んでいる人だけではないでしょうか?

人々にアンケートを受けてもらうためのヒントはオンラインで探せば数多く見つかります。しかし、無償でアンケートに答える動機についてはほとんど記載されていません。

興味を持つことがアンケート参加につながるという主張は見つけました。ほかの参加理由として、認知的不協和、優れた自己認識、ある種の義務感も存在します。

人々が無償のアンケートに参加する理由をより理解し、参加者の姿勢が全面的に肯定的なのか否定的なのかを知るために、私たちは2つのオンライン調査にまたがる独自のリサーチを実施しました。

最初の調査は2017年8月に実施されました。参加者に無償のアンケートに回答したことがあるか尋ね、続いて動機としてもっとも当てはまるものを選んでもらうよう頼みました。参加者はデスクトップやモバイルのオンライン広告によって集められ、325の回答を回収しました。

2つ目の調査は2018年11月に実施され、525名が参加するアメリカの有償のパネルを利用しました。どちらのデータソースにおいても、参加者は「その他」を含む事前に用意された選択肢(オンラインの情報から抽出したもの)から複数の回答を選ぶことができました。事前に定義されたカテゴリー毎の結果は図1の通りです。

図1:2つのオンライン調査による、アンケート参加者が無償でアンケートを引き受けた理由。複数の選択肢を選択できるため、合計値は100%を上回る。

回答が多かった理由は、自分の意見を表明したかったから(42%)、現状のあり方を変えたかったから(33%)、アンケートがおもしろそうだったから(32%)でした。注目すべき点として、問題を抱えていた(ネガティブな体験をしていた)人は13%しかいません。対照的に、ポジティブな体験をした人は倍以上いました(29%)。「その他」を選んだ人は5%のみでした。したがって、少なくとも私たちが用いたサンプルでは、これらの理由で人々が無償でアンケートを引き受ける動機を十分に説明できたようです。

感情を評価する

この第1の分析が示唆しているのは、回答者は無償のアンケートを引き受けるに当たって、否定的なバイアスよりも肯定的なバイアスを持っていることです。有償の参加者と無償の参加者との違いをさらに調査するために、2018年11月のアンケートでは、有償のアンケートと無償のアンケートとで、実施した企業やプロダクトに対する感情を7段階で答えてもらいました(1=まったく気に入らない、7=非常に気に入っている)。無償のアンケートを行った企業には次のようなものが含まれます。

  • Bradburn Apartments
  • AT&T
  • Time Warner/Spectrum
  • Adidas
  • Kroger
  • Community Care Behavioral Health
  • Atkins
  • Google
  • Target
  • Ubisoft
  • Verizon
  • Six Flags Great America
  • CenturyLink
  • NJ transit
  • Papa John's

有償のアンケートを行った企業の例は次の通りです。

  • Starbucks
  • Capital One
  • Amazon
  • Popeyes
  • Swagbucks
  • Burger King
  • Mechanical Turk

結果、約3分の1(32%)の参加者がブランドやプロダクトのために無償でアンケートを受けたことがあり、38%が有償でアンケート(このアンケートを除く)を受けたことがあるとわかりました。興味深いことに、感情のスコアの平均値は有償のアンケートに参加した人のほうが10%高い(5.5 vs 5)という結果になり、その差は統計学的に有意でした(p<0.1)。

感情のスコアの分布は図2に示しています。どちらも肯定的なバイアスが視認できますが、有償の参加者と無償の参加者の分布には違いがあります。無償の参加者と比較すると、明らかに有償の参加者のほうがもっとも好意的な7(最上位)のスコアを選んでいます(31% vs 19%)。また否定的な反応については、有償の参加者(8%がスコア3以下)よりも無償の参加者(14%がスコア3以下)のほうが多くなっています。

図2:有償、無償の回答者におけるブランドに対する感情の分布

さらに、92名の参加者(サンプルの約16%)が有償、無償の両方のアンケートを受けたことがあることがわかりました。参加者間のばらつきを抑えるためにどちらも回答したことがある参加者だけに絞っても、同じようなパターンが見られました。有償のアンケートを実施した企業はこちらでも高いスコアを獲得しましたが(有償5.6 vs 無償5.4)、統計学的に有意ではありませんでした。

参加者が認識した企業には幅広いバリエーションがありましたが、いくつかの企業は無償のアンケートと有償のアンケートを複数回実施していました。たとえば、10人の同答者がWalmartの無償のアンケートを受けたと回答し、うち1人が同社の有償のアンケートも受けたと回答しました。このような小さな規模のサンプルにおいてさえ、同じパターンが現れました。有償でアンケートに参加した回答者と、無償で参加した回答者の間には、1ポイント(統計学的な有意性の境界)という比較的大きな差がありました(5.4 vs 4.3、p = 0.125)。

軽減効果

有償のアンケートで感情のスコアが高いのは報酬を得たからなのか(ある種のハロー効果)、単に無償で参加した回答者が有償の回答者よりも満足度が低い(またはまったく満足していない)からなのかは不透明です。

また、アンケートを実施した調査会社が統計の姿勢に影響を与えた可能性もあります。たとえば、数人の回答者は有償のアンケートをSwagbucks、Mechanical Turk、Opinion Outpost(すべてアンケートの実施会社)から引き受けたと回答しています。したがって、アンケートを実施している会社とアンケートの対象になっている会社を回答者が区別していなかった可能性があります。ただ、Walmartのような有名なブランドを比べた場合でも、有償の回答者のほうがわずかにスコアが高いパターンを確認できました。この点については、さらなる分析でより詳しく調べられるでしょう。

まとめと成果

人々が無償のアンケートを引き受ける動機について、2つの調査から次のことが明らかになりました。

興味がある、変化に関与したいといった、本質的な動機が重要です。無償のアンケートを引き受ける主要な要因は、興味であり、意見を表明したいという思いであり、企業の変化に影響を与えたいという願望です。

すべてのアンケートにおいて、若干の肯定的なバイアスが存在します。一般的に、有償のアンケートであっても無償のアンケートであっても、アンケート参加者は対象の企業やプロダクトに対してわずかに好意的な態度を持っています。

有償のアンケートに対する態度は無償のアンケートよりも好意的です。驚くべきことに、有償のアンケートを実施した企業に対する感情は、平均値でも最大値でも無償のアンケートを上回っていました。有償のアンケートを提供するMechanical Turkのような企業の影響が考えられるものの、このパターンは同一の参加者で比べた場合でも、同一の会社(Walmart)で比べた場合でも同じでした。

今回の調査では、セクションバイアスが存在する可能性があります。私たちは参加者をオンライン広告と有償の委員会という2つの方法で集めましたが、それによって参加者の類型に偏りが生まれた可能性があります。たとえば、無償でアンケートを引き受ける参加者を代表できていないかもしれません。というのも、彼らはオンラインの有償アンケートを引き受けそうにないからです。この点は今後のリサーチで詳細に検証したいと思います。


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