正確なテストスクリプトは、受け入れテスト(User Acceptance Test)の根本であり、より深いデータや、事実に沿った結果につながります。反対にシナリオの質が低いと、結果がゆがみ、残りのデザインプロセスに役立てられず、テストそのものが無駄になってしまうでしょう。
そこで私は、CodalのUXデザインチームの数人に、ユーザビリティテストのスクリプトをどのように構築しているのか調査しました。
1. 範囲と対象者を決定する
ペンをとったりGoogleドキュメントを開いたりする前に、明確に調査範囲を設定し、対象者を集める必要があります。調査範囲とインタビュイーは、それ自体で調査と同じ価値があります。この2つによって、スクリプトをどのように書くべきか決まることを覚えておいてください。スクリーンライティングでの用語を用いると、ユーザーに達成するよう求めるタスク(調査範囲)は、スクリプトの物語の大部分を形成し、対象者はその主人公になります。
2. 調査を記録することに同意してもらう
ユーザビリティテストは、のちの解析のために記録するべきです。Webカメラであれ、デジタルレコーダーであれ、スクリーンキャプチャプログラムであれ、参加者に記録する意向を知らせて、明確な同意を得る必要があります。同意を得ることで、カメラを向ける場合は特に参加者を安心させるだけでなく、テストの整合性を損なわないことにもつながります。
3. 基本情報から始める
テストの根幹に移る前に、参加者の基本的な個人情報を記録しましょう。名前や年齢、職業といった、テストに関係するデータなどを聞いてください。「お名前は?」、「年齢は?」、「相乗りアプリは使用したことがありますか?」などの質問形式でも、あるいは単に「あなたのお名前はX、年齢はYですね」と確認するだけでもいいでしょう。
ただ、自然な会話を再現し、参加者の緊張を和らげられるため、ほとんどのデザイナーは質問形式を好みます。また、複数の場所から情報を記録してください。ファイルを破損するかもしれないので、バックアップを取ることを習慣づけましょう。
4. テストに参加している者がほかにもいることを伝える
自分が土台やプロトタイプの一部ではなく、唯一の調査対象者だと考えるのは、参加者にとって自然なことです。調査者と参加者は協力してプロダクトを改善するチームメイトだということを強調し、彼らの恐怖を和らげてください。参加者に誠実でオープンに接すれば、より事実と照応する経験的なデータを集めやすい環境を整えられるでしょう。
5. 思考プロセスを声に出してもらう
UXデザインの大部分は、ユーザーの一瞬の判断を理解し、瞬間的に感じる印象に影響を与えようとする試みです。プロトタイプを操作している間、ユーザーの頭の中で何が繰り広げられているのか判断するのは難しいことです。ユーザーは自分の無意識な反応については認識していないかもしれません。
したがって、参加者にプラットフォームを使っているときの思考や行動、意見を声に出すよううながすことは決定的に重要です。参加者は、特に他人の前では、思考プロセスを喋ることに抵抗を感じるかもしれません。そのため、テストスクリプトを通じて参加者を安心させる必要があります。
6. 開始前に、質疑応答の機会をつくる
このプロセスは、スクリプトの中では1行で記されるだけですが、とても重要です。タスクを開始する前に、実験者と参加者が同じ視点に立っていることを確認しましょう。妥当なら、テストの実施中いつでも質問できることを参加者に伝えることも効果的です。
7. 先入観を与えない会話を考える
ほとんどの受け入れテスト(UAT)はタスクベースで、実施者が参加者にある行為を達成するよう指示します。タスクはプラットフォームの使用状況次第で異なりますが、一般的なものとしては、あるプロダクトを見つける、元の場所に戻る、プロフィールを作るといったものがあります。
注意すべきは、これらのタスクを指示する際に実験者が用いる言葉や言い回しは、タスクの結果に影響を及ぼすことです。たとえば、「では、男性用のオックスフォードシャツを探せるかやってみましょう」と「では、男性用のオックスフォードシャツを探してください」という文の違いを考えます。一見両者に大きな違いはありませんが、前者には、タスクが難しい、あるいはプラットフォームのユーザー体験は質が低いという含意がわずかに感じられます。
参加者が答えの方向性に先入観を持ってしまうと、彼らの回答は必ず台無しになります。このバイアスは、定性調査ではつねに悩みの種になる現象としてよく知られています。スクリプトからバイアスを完全に排除することは難しいですが、できる限り最善を尽くしてください。
8. 自由回答型の質問にする
ユーザーがタスクを遂行中に、実施者は体験の異なる部分について質問することがあります。テストの合間に質問を挟むなら、簡潔に答えられるだけでなく、ユーザーの思考や意見、感情を自由に反映できる余地を残してください。「体験は楽しかったですか?」などの「はい」か「いいえ」で答えられる質問は避け、「体験についてどのように感じましたか?」といった答えが広い質問を心がけましょう。
書いてみましょう
スクリプト作成に苦労していたり、インスピレーションが欲しいと感じているなら、数多く存在するテンプレートを活用してみてください。多くのテンプレートが、今回説明した8つのポイントのほとんどすべてを取り入れているのがわかるでしょう。私のお気に入りは、Webデザインの指導者Steve Krug氏が書いたものです。
UATのベストプラクティスをほかにも知りたいのなら、usabilitygeekの記事などもを参考にしてみてください。何よりも大きなアドバイスは、「まず書いてみる」ことです。