現代では、誰もがコンテンツを話題にあげています。コンテンツの重要性を強調したり、充実していないことを嘆いたり、あらゆる問題のソリューションとして提示したりしています。
たとえば、Webサイトのアクセス数が減少したら、「新しいブログコンテンツが必要だ」と答え、見込み客を獲得できなかったら、「ポッドキャスト番組さえあれば」と不満を吐露し、売り上げを奪われると、「競合はインタラクティブなインフォグラフィックや動画を表示していたからだ」と述べるでしょう。コンテンツを増やすことが唯一絶対の解決策だと考える人たちは、問題の本質を見直すべきだと私は考えます。
問題はコンテンツの不足ではありません。世界はこれ以上のコンテンツを欲していませんし、人々は膨大なコンテンツに途方に暮れています。Web広告や記事、フィード、メール、検索結果、果てしない情報が毎日生まれ続けていますが、ユーザーはその大多数を必要としておらず、気にも留めません。
現実は厳しく、人々はあなたのコンテンツに興味がないのです。
どのような業界であれ、ユーザーは自分のニーズにマッチした、魅力的で役立つコンテンツを求めています。的外れで品質が低く、不誠実なコンテンツが垣間見えると、コンテンツだけでなく、制作している企業やサイトからもすぐに離脱してしまいます。潜在顧客や顧客は、たとえ企業やプロダクトが現代的なデザインに包まれていようと、大げさな広告やセールストークを好みません。彼らが求めているのは、ヒント、インサイト、便利な情報です。したがって、コンテンツ作成には顧客重視のアプローチが不可欠になります。一面にコンテンツを散りばめる保守的なアプローチから脱却しましょう。この記事では、顧客中心のコンテンツとは何か、顧客中心のコンテンツがどのようにブランドや企業、クリエイティブチームに利益をもたらすか説明していきます。
顧客重視のコンテンツ:原動力と差別化要素
顧客重視のコンテンツはターゲットユーザーの知識に基づいており、彼らに関連付けて表示されます。顧客を中心に据えた企業は、より付加価値の高いコンテンツを制作することで、競合他社と差別化することができます。何よりもユーザーのニーズに重点を置くことで、企業の目標を達成し、より大きな成功につながる土台を築くことができるのです。それにもかかわらず、コンテンツの作成は往々にして、ステークホルダーの希望や自分たちの主観的な要求、ユーザーニーズの憶測を基に構築されます。
ユーザーを置き去りにすると、次のようなコンテンツになります。
- 自社がどれだけ優れているか宣伝する
- プロダクトやサービスを売ることが重視されている
- 誇大広告や流行語にまみれる
- 難解で複雑で、業界内の知識や視点で書かれている
- 価値や利益がわかりにくい
- 顧客とのタッチポイントがバラバラである
これらの間違いを避けるためには、コンテンツを企画する最初の段階から、顧客に注目して始めるべきです。つまり、「マーケティングチームが製品Xの動画を必要としている」、「営業チームは製品Yの販売を促進したい」といった会話ではなく、「転職希望のJaneは、問題xを解決する手助けを必要としている」というように、ターゲットユーザーに焦点を移してください。コンテンツのトピックやフォーマット、チャネルを考案する前に、コンテンツ作成の原動力を生み出すのは誰か、何か、いつかを把握することが大事です。
顧客重視のコンテンツの作成
誰がコンテンツを使うのでしょうか? 顧客重視のコンテンツデザインは、ユーザーを的確に把握することから始まります。
コンテンツのターゲットユーザーを特定するのは難しくありません。問題は、商品開発や営業、マーケティング部門が、ユーザーではなく、プロダクトの購買層やマーケットの観点からターゲットを決めてしまうことです。態度、行動要因をまとめたデータを使わずに構築された顧客プロファイルは、浅薄で一面的になります。
たとえば「ターゲットユーザーは、34歳~45歳の既婚女性で、平均1.2人の子供がいて、世帯年収は970万円以上」といった方向性では、充実したコンテンツを思いつくことはできないでしょう。ターゲットを特定するときは、デモグラフィックやセグメント、ラベルをまとめる従来のやり方だけでなく、次のような疑問にも答えましょう。
- ユーザーの目的は何か?
- ユーザーが抱える問題や疑問は何か?
- ユーザーが求めている情報は何か?
- ユーザーのニーズや行動を喚起したきっかけは何か?
- ユーザーのマインドセットは何か? ユーザーの趣味、信念、考え方はどのようなものか?
顧客の明確な人物像を設定し、コンテンツ開発プロセスを通してそれらを念頭に置き続けることで、情報を取得するためにもっとも適切な調査やコンテンツ、UXのツールを活用することができます。
ペルソナは、チームがターゲットユーザーに注目し続けるための優れた方法です。また、共感マップを使えば、ペルソナや、彼らを取り巻く環境をさらに深めることができます。顧客の視点からプロセス全体を幅広い視野で分析するには、ジャーニーマップが有効です。これを使えば、ユーザーのモチベーションやプロセス、コンテンツが役割を果たす段階を可視化することができます。
顧客が必要とするコンテンツは何か?
データを分析し、ユーザーが何を検索しているか、どのように提供すべきかを理解しましょう。
誰かが目標を達成したり問題を解決したりするのを助けるためには、その人の状況を把握する必要があります。ターゲットユーザーの問題やニーズを理解する最善の方法は、彼らに聞くことでしょう。既存の顧客は、検索に至った背景、マインドセットを明らかにして、評価や決断の要因を引き出す最適な情報源です。
どのようなプロジェクトでもユーザーとチャットやインタビューをして情報を得ることが理想ですが、時間やリソース、アクセスの問題が絡むことが多いです。しかし幸いなことに、時間や予算が限られているチームも、人々の要望や嗜好、ニーズ、検索内容といった情報にアクセスできる情報の宝庫があります。
- アンケート、世論調査
- ソーシャルメディアサイトでの行動やインタラクション(シェア、いいね、バイラルコンテンツ)
- 掲示板での質問やスレッド(Quora、Reddit、 Q&Aサイト)
- チャットやカスタマーサービスの記録
- コメントやレビュー、感想(自社のサイトや競合のサイト、ECサイト)
- コンテンツのパフォーマンスや、Webサイトの分析
- キーワード調査ツール
- 二次調査
補足説明:キーワード、質問、リサーチの役割
検索データは、ユーザーがどのようなコンテンツを求めているかだけでなく、コンテンツがどれほど需要があるかも特定することができます。人々が検索しているトピックやフレーズを把握すれば、価値の高いコンテンツを作り出すことができます。
また、検索数を考慮すれば、そのトピックに関するコンテンツに投資する価値があるかどうか選定できるでしょう。オーガニック検索や新しい訪問者を増やしたい場合、検索数は特に重要です。一方で、既存のユーザーの体験を改善するためにコンテンツを追加したければ、Webサイト内部の検索データを分析することで、新しいコンテンツのアイディアが見つかるかもしれません。
Buzzsumo、Answer the Public、 SEMrush、SEOMoz、Google Keyword Plannerはコンテンツ改善に効果的なツールの一例です。
いつ、どこでコンテンツを必要としているか
ターゲットと、ターゲットが求めるコンテンツを明確に把握した上で、最後の要素となるのが、いつ、どこでコンテンツが必要になるのか計画することです。顧客がコンテンツをどのように扱うのか知ることで、もっとも良いフォーマットや発信方法を選ぶことができます。リサーチや購入過程の段階、使用状況を理解すれば、最善のアプローチは短いブログ記事なのか、動画なのか、インフォグラフィックなのか、Webセミナーなのか、長いホワイトペーパーなのか決断しやすくなるでしょう。
不統一な体験を提供しないよう、インタラクションがチャネルを横断したり同時に起こったりすることを念頭に置いてください。一貫した体験を提供できるように、コンテンツの提供やタッチポイントすべてを検証しましょう。
特に大企業では、顧客データやチャネルの管理が部署で分断され、情報が共有されずにサイロ化していると、この作業は一筋縄ではいきません。コンテンツチームを異なる分野から集めたり、コンテンツ審議会を設置したり、管理プロセスを構築することで、協力体制を築いてください。
顧客重視のコンテンツのヒント
一貫性を保つ
同じ種類や品質の情報を提供することが、顧客の信頼につながります。サイトに何を期待すべきかわかり、一貫した運営を頼りにできるなら、人々は信頼できる情報源とみなします。コンテンツや、オンライン、オフラインの体験を一貫して提供すれば、最終的に潜在顧客を顧客に、既存顧客をロイヤリティの高い顧客に引き上げることができるでしょう。
ユーザーに適した言葉を使う
共通言語を使用することで、より良いコミュニケーションや本当の繋がりが生まれるでしょう。ターゲットユーザーに相応しい言い回し、表現、言葉のニュアンス(顔文字など)を取り入れてください。適切な言葉遣いは情報を発見する際にも重要な役割を担っています。したがって、ユーザーがQ&Aで使用しているキーワードをコンテンツに採用しましょう。
パーソナライズする
リアルタイムのインタラクションや態度、または過去の行動や取引のデータを用いて、できる限りコミュニケーションを調整してください。
おもしろく、役に立つ
ストーリーテリングは感情移入させたり体験共有させたりするのに効果的ですが、価値を提供する効果も忘れないでください。すぐに実践できるヒントを紹介したり、リソースにリンクさせたり、関連するコンテンツソースに誘導したりしましょう。
ブランドに忠実である
人々が注目するコンテンツの作成に邁進していても、自分たちの印象に反するもののふりをしてはいけません。作成するコンテンツは、雰囲気や口調も含め、ブランドから逸脱しないようにしましょう。
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以上のヒントや顧客中心のアプローチを実践すれば、より顧客を満足させるコンテンツにつながるでしょう。コンテンツと顧客をつなぐためには、単にコンテンツを作るのではなく、適切で信頼できる本物のコンテンツを配信することが必要です。説得力のあるコンテンツとは、変化するコンテンツです。顧客をコンテンツ作成プロセスの中心に据えれば、誰もが幸せになる結果をもたらすでしょう。