「機能を売るのではなく、ベネフィットを売る」のは本当に正しいか

Roxanne Abercrombie

RoxanneはParker Softwareのオンラインコンテンツマネージャー。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

The Fallacy Of Not Selling Features

「機能を売るのではなく、ベネフィットを売れ」

この格言は長い間絶対的に正しいものと信じられてきました。この理論が言わんとするところは、ユーザーは必ずしもあなたのプロダクトを買うこと自体に興味を持っているわけではなく、それを購入することによって、効率が上がる、生活が楽になる、あるいは自分たち自身が向上する、といったことに興味を持っているということです。

確かにこれは説得力のある理論です。ただ問題は、各種の技術的なプロダクトやビジネスサービスにおいては、この理論が不完全であることです。この理論によると、ユーザーは細部を見ずに、マーケティングが主張するベネフィット(便益・恩恵)を疑うことなく受け入れ、感情のままに従ってものを購入するということになります。

しかし実際には、特定の機能を伝えないとユーザーはそのプロダクトを理解できません。ベネフィットと機能はこの格言が示すように対立するものではありませんし、両方を無視しても構わないのです。

ベネフィット vs 機能

ベネフィットと機能はまったく正反対なものではないということは確かですが、明らかな違いがあることも事実です。機能は、あなたのプロダクトが明確に持っているものです。一方、ベネフィットはあなたのプロダクトが一般的に生み出すことができる、結果です。その結果には計測可能な結果も感情的な結果も、両方含まれます。

つまり、機能とはあなたのプロダクトまたはサービスを構成する「もの」であり、ベネフィットとは、それらの機能がなぜユーザーにとって画期的であるのかを強調する販売促進のための「理由」なのです。

機能を売ること、ベネフィットを売ること、それぞれ異なる戦略を表しています。Jason Friedがこのように言っています。

『これが我々のプロダクトができることです』と『これが我々のプロダクトを使ってあなたができることです』という2つの言い方にはあまり違いがないように聞こえますが、完全に別のアプローチなのです。

機能を後部座席に追いやる

ベネフィット主導のアプローチにおいては、機能はどちらかというと面白みに欠けるため、後部座席へと追いやられているようです。明らかに「人々は機能について単純に気にしていない」ようです。機能は「技術的なものであり、無関係なもの」という言い方をされます。

一方でベネフィットには人を惹きつける力があります。ユーザーのために彼らの生活がどのように良くなるかという絵を描き、ユーザーに将来待ち受けている信じられないような発展を想像させます。

この角度から考えると「機能ではなくベネフィットを売れ」という格言に含まれる核となる理論は非常に理にかなっています。あなたのプロダクト自体やその仕組みにではなく、ユーザーとユーザーの問題にフォーカスを置くというのは合理的なことです。

しかしよくあるように「A方式はダメ、B方式は最高だ」というような総括的な意見はあまりにざっくりしすぎていて盲目的に受け入れることはできません。この例で言えば、ユーザーの購入の最終決定に対して機能が与える影響を無視するというのは間違った考えです。

実際、あなたのプロダクトの機能を十分に紹介できるかどうかが、新たなユーザーを獲得するのか、競合に奪われてしまうのかを決めてしまうこともあるのです。

流行に敏感なユーザー

ベネフィットを売ることによって、ユーザーの感情に訴えることができれば最高です。とはいえ、感情に訴えるセールストークは実際のものに裏打ちされていなければなりません。

今日(こんにち)のユーザーはテクノロジーに精通しており、流行に敏感です。マーケットには数百万もの似たようなプロダクト、アプリ、サービスが溢れており、ユーザーは機知に富んだ売り口上にもだんだん慣れてきています。ですから、ただ単純に主張すればユーザーがなんの疑問も持たずに受け入れてくれるということは期待できないのです。

言い換えれば、あなたが提供できるベネフィットにそれを支持するような証拠をつけなければならないということです。証拠となりうるのは、プロダクトが持つ機能と機能に使われている差別化された技術なのです。

たとえば、あなたのプロダクトはデータを極めて安全に保存でき、データの喪失や覗き見られることをユーザーが心配するが必要ないと主張するかもしれません。こちらの記事では次のように書かれています。

ベネフィットだけを説明してしまうと、読者に『それ、本当?』と思わせてしまうのです。

ベネフィットを提示するだけでなく、それをどのように実現するのか、どのような機能がその素敵な結果を可能にするのかを示す必要があります。

ストーリーを語ることができる、大きく輝かしい絵はすばらしいものです。しかし意思決定の間際になると、細部がものを言うのです。たとえば、モバイルサービスのプロバイダーは、多くのデータ量が使えるセットプランを用意して、自由と利便性というベネフィットを売るのです。ベネフィットを訴えることはよいことですが、ユーザーはそれでも、どのくらいのデータ量が使えるのかを知りたがるものです。彼らは技術的な情報を求めているのです。

ビジネス向けテック業界の場合

技術が注目されるのは、ビジネス向けのプロダクトにおいて顕著です。ビジネス向けのプロダクトやソフトウェアやサービスを探すとき、彼らはだいたい、そのソリューションによって得られるベネフィットをすでに知っています。あなたがターゲットとするマーケットは、あなたのソフトウェアに関してすでによく知っているのです。

たとえば、ユーザーが自分のWebサイトのためにライブチャットのソリューションを探している場合、ユーザーはおそらくチャットのベネフィットについては理解しています。もしCRMシステムを探しているなら、CRMが自社のオペレーションにどのように役立つかよくわかっています。同じように、もしユーザーがビジネスプロセスの自動化ツールを探しているなら、彼らの関心はどのように効率が上がり、時間が節約できるかという点にあります。

ですから、あなたのプロダクトが他に類を見ないような特別なポジションにあるものでもない限り、あなたは成熟したマーケットで売ることになるのです。これによって、ベネフィットに重点を置いたアプローチは大いに余分なものとなります。ユーザーは、なぜあなたのプロダクトを使う必要があるかという理由によってそれを買うわけではないのです。

この場面こそ、機能を売るべきときです。ユーザーがすでに知っているような、よく似たベネフィットを売りにしているソリューションであふれている状況では、技術的な細部が違いをつくり出します。この十分に情報を持っているユーザーが求めているのは結局、芸術的な広告ではなく、情報の透明性なのです。

事実、ビジネスユーザーは商品を探し始めるときには自分なりの基準を持っています。きちんとしたRFIを用意していることもあるでしょうし、ソリューションについてチェックをつけて評価するようなチェックリストを持っているかも知れません。ここには、あなたのプロダクトがもたらすベネフィットがどれほど素晴らしくても、手出しできません。機能、数字や細かい文字が取引を決めるのです。

機能を売ることとユーザー体験

機能を売るということは、ユーザー体験という点ではマイナスの要素だという不当な評価を受けることが多いです。そんなことをすれば、ユーザーにプロダクトを動かす歯車について考えさせることになる、彼らは1つの機能について大まかに知りたいだけなのに、難しい専門用語や表の中を泳がされることになる、というのです。

より単純なプロダクトにはこうした指摘が当てはまることでしょう。しかしながら、ビジネスサービスとソフトウェアソリューションは幅広い対象範囲を持っており、機能に注目することは大いにユーザーを助けます。すでに述べたように、ユーザーが基準を持って探しているのなら、これによって時間を節約できるからです。シズル感をスキップしてすぐにステーキを切ることができるのです。

初期の研究によると、機能に特化した売り方をした場合、想像以上に長期的なユーザー満足度に寄与することがわかっています。なぜなら、あなたのプロダクトに完全に合致したユーザーを引き付けることになるからです。

こうしたユーザーは、余計な事は抜きにして、彼らが必要なツールをあなたが持っているかどうかを最短距離で判断したいと思っています。もしあなたのプロダクトがニーズに合うものなら、彼らはその機能をみることで素早くそれと知るでしょう。そうすると、ユーザーは購入したあとでもより留まりやすくなります。あなたのプロダクトは実際にニーズに合致したから選ばれたのであり、いつ発売されるかわからないソフトウェアの空約束によるものでもなければ、巧妙な売り込みの結果でもないからです。

バランスの必要性

では、機能を重視したアプローチは、ベネフィットを重視したアプローチよりも完全に優れたものであるということになるのでしょうか。先に挙げた意見が答えになります。「A方式はダメ、B方式は最高だ」というような総括的な意見は、盲目的に受け入れるにはあまりざっくりしすぎています。

伝統的な知恵が間違っているのはよくあることで、つねに疑ってみる価値があります。「ベネフィットではなく機能を売れ」というような格言に従うのではなく、まずはその背後にある意味を考えてみましょう。機能にはユーザーとコミュニケーションするために役に立つという役割があり、これはユーザーのベネフィットになるものです。結局はお互いに補完関係にあるということになります。

結局は、自分のマーケット、自分のプロダクト、自分が引き付けようとするユーザーを知っているのはあなたなのです。ですから、ベネフィットと機能、どのくらいの割合が一番うまくいくのかを知っているのもあなたのはずです。格言を忘れ、あなたの役に立つことをしましょう。


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