コンテンツファーストなデザインプロセスを徹底するには

Robert Suckley

RobertはUXデザインやUIデザインで15年以上の経験をもつデジタルデザイナーで、ビジネスの目標とエンドユーザーのニーズ両方を優先したデザインを実現します。

この記事はToptalからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

New Web Order: An Overview of Content-First Design

デザイナーは単にWebサイトを飾っているのではなく、コンテンツを通して操作体験を作り上げています。もしコンテンツがデザインの中心にあることをクライアントやチームメンバーが理解していなかったら何が起こるでしょうか? コンテンツよりもデザインを優勢することがないように、コンテンツの重要性を訴え、チームを味方につける戦略を紹介します。

ユーザー体験と優れたコンテンツは、効果的なプロダクトデザインに不可欠だとみなされています。それにもかかわらず、これらよりも審美性が優先されることが多々あります。プロダクトチームは、スタイルの背景にある要素よりも、デザインの外観や雰囲気に重点を置きがちです。ビジュアルを何よりも重視してデザインプロセスを始めると、非効率な場面が必ず訪れるでしょう。

デザインの美しさは、ビジネスの目標やユーザーリサーチ、コンテンツを土台にする必要があります。ビジネスの目標はクライアントから依頼されることが多いです。ユーザーリサーチもすでに実行しているかもしれませんし、なかったとしても、適切なチームであればすぐに実施できるでしょう。コンテンツ制作はプロジェクトの中でも長期的で退屈な作業であり、よく見落とされます。しかし、デザインプロセスだけでなくプロダクトの成功にも関わるコンテンツの役割は、広く誤解されているのです。

本記事では、コンテンツの重要性とコンテンツファーストのデザイン制作へ向けた戦略を説明していきます。

BBCスポーツの記事のフレームワークは、異なる種類やサイズのコンテンツがページを埋め尽くすようにデザインされています。

コンテンツドリブンなデザインの重要性

コンテンツを優先せず、プロセスの最後までコンテンツの制作と配置を残しておくと、必ず以下のような大きな問題が発生します。

  • プロダクトのデザインや開発、公開が遅れる
  • テンプレートがコンテンツに上手く合致しない
  • 必要以上に多く(または少なく)テンプレートが作成される
  • 実際のコンテンツがWebサイトデザインの目的に適さない
  • ダミーコンテンツを使用したことで問題が生じる
  • プレースホルダーの美しい画像が実際に使用するときに画質が低くなり、デザインが損なわれる

最初からクライアントとデザイナーの認識を共有する

コンテンツについてクライアントと相談するときによく挙がるのが、クライアントはデザインを見ないと何がコンテンツに必要なのか判断できない、「卵が先か、鶏が先か」という問題です。

ゼロから何かを作り上げるというデザインプロセスに通じていない人の立場に立てば、これはもっともな意見でしょう。コンテンツを取捨選択する意思決定を円滑に進められるかどうかはデザイナー次第です。イノベーション企業のSmashing Ideasは、デザイナーが「ステークホルダーに意見やフィードバックを発する機会を十分に提供すれば、彼らと足並みを揃えることができ、プロダクトとアプローチの両方に必ず有益である」とアドバイスしています。

コンテンツファーストのデザインプロセスでは、完成品のビジョンは、実現可能性や予算制約などの現実的な要素を踏まえ、協力して確立されます。したがってクライアントやステークホルダーの視点は、優れたデザインがデータやコンテンツに基づいて構築されることに注がれるでしょう。初期からクライアントに寄り添うことで、完成品のデザインを承認するときには、チームはより多くの情報を入手できているはずです。

リサーチに基づいたUXデザインとコンテンツ

データを取り入れてデザインすることで、デザイナーはユーザーや彼らの行動に応じてソリューションを制作することができます。しかし、リサーチは第一歩でしかありません。リサーチによってユーザーのニーズに対応するコンテンツが割り出せたら、そのコンテンツを制作してください。

コンテンツが伴わないデザインはデザインではなく、装飾である。
Jeffrey Zeldman氏

ユーザーインタビューやユーザーリサーチによって、コンテンツベースの意思決定に役立つインサイトを入手できます。

ユーザーリサーチに基づいてデザインやコンテンツを制作すれば、デザイナーはユーザーに効率よく焦点を当ててデザインできます。プロジェクトの初期段階では注意を要しますが、クライアントの要望と食い違ってコンテンツを大幅に変更することはないでしょう。曖昧なアイデアではなくユーザーリサーチに基づいてコンテンツの意思決定をすることで、エンドユーザーを重視した無駄のないプロダクトを制作できます。

コンテンツファーストで時間と資金を節約する

コンテンツが優先されていないと、プロジェクトを通して非効率な作業が重なります。たとえば、デザイナーがテンプレートを多く(もしくは少なく)作成し過ぎたり、実際のコンテンツがフィットせずレイアウトを再構成する必要性が生まれたり、実際の画像が望ましくないため見直すことになったりするでしょう。コンテンツの制作が後回しになってデザインに立ち返る時間はプロセスに不必要ですし、チームの負担になります。

コンテンツ制作に要する時間とリソースが少なく見積もられ、コンテンツがプロジェクトの終盤まで手つかずになることが多々あります。その結果、未制作のコンテンツを補うためにリソースを割くことになりがちです。Lorem IspumPlaceholderのようなWebサイトでは、ダミーテキストやコンテンツのないデザインの画像を制作できます。これらは美しいデザインを作成するのには役立ちますが、実際のコンテンツを配置すると上手く機能しない恐れがあります。デジタルデザイン代理店thoughtbotのチーフデザインオフィサーであるKyle Fiedler氏は、「デザインにLorem Ispumを追加すると、サイズも知らないのに王様を着飾るようなことになる」と発言しています。

コンテンツを制作する前にLorem IpsumやPlaceholderの画像を使用した、デザインとコンテンツが連携できていないWebサイト。実際のコンテンツを当てはめてたときにデザインが崩れています。

コンテンツを制作する前にプロダクトを開発しコーディングすると、問題はさらに悪化します。上記の画像は、ダミーコンテンツが実際のコンテンツに合っていないことを物語っています。タイトルやメタデータは長すぎて、整列した枠からはみ出しています。また、コンテンツが足りないせいで余白が生まれ、実際の画像のサイズが小さく解像度が低いためレイアウトに支障をきたしています。

このサイトの開発チームは、デザインの修正や、場合によってはプロダクトのコーディングの修正も余儀なくされるでしょう。デザインや開発を実行するはるかに前からコンテンツ制作を始めることで、このような問題を未然に防ぐことができます。

コンテンツファーストデザインの戦略

コンテンツの監査とリスト

コンテンツを収集する第一歩は、コンテンツの監査とリストアップです。現在のプロダクトに存在するすべてのコンテンツを分析しましょう。この作業によってチームは必要なコンテンツがどのようなものか把握できるため、非常に有益です。さらに、情報アーキテクチャの構築を始める手掛かりとしても役立ちます。

コンテンツファースト戦略のワークショップ

一般的に、統一されたコンテンツ戦略を作成するためにグループセッションや協力作業をすることで、同じ立場でコンテンツ制作に臨むことができます。対してワークショップは、コンテンツの種類を明確にしたり、コンテンツの役割を特定したり、要約をまとめたり、コンテンツ制作プロセスを図示したりに重点を置くことが多いです。ワークショップでは、以下のような議題が重視されます。

  • ボトルネック
  • よくある課題
  • 社内のコンテンツ作成スキルの不足
  • 社員関係

コンテンツのワークショップは、初期からデザイナーやステークホルダー、プロジェクトメンバーが協力するコンテンツファーストの戦略を確立するのに有効的です。

コンテンツの収集

コンテンツの制作者を悩ます問題の1つが、効率的にコンテンツにアクセスし、それらを共有し、編集できるように集めることです。適切なワークフローがないと、独立したドキュメントが無数に作られたり、異なるバージョンが無秩序にメールで送信されたり、一部の人しかアクセスできない形でクラウドにアップロードされたりするでしょう。意思伝達が上手くいかない非効率な状況が生まれます。

最初からワークフローの解決策について合意を取り、必要なすべてのチームメンバーがアクセスできる環境を作ることが重要です。Googleドライブも十分有効ですが、共有や編集、バージョニング、さまざまなCMSへの出力などに特化したGather Contentのようなツールも存在します。

効果的かつ効率的にコンテンツを作成する方法

コピーライターに依頼する

もっとも成功するプロジェクトは、プロジェクトの開始段階で、社内のステークホルダーとコピーライターが密に連携するものです。これによって、クライアントの心理に沿ってコンテンツの優先順位を決断できます。プロジェクトリーダーはプロジェクトを効率的に管理し、コンテンツの制作は専門のライターに一任することができます。また、デザイン段階に入る前から完成形に近いコンテンツを作成できるという利点も生まれます。

コンテンツの制作者を選定する

予算からコピーライターを雇うのが難しい場合、クライアントと密接に協力してコンテンツを制作する責任者を、社内チームから選出する必要があります。チームのメンバーそれぞれがコンテンツを制作し、まとめる役割を担うことも可能でしょう。コンテンツファーストの戦略プランでは、何が必要なのかを定義した明確なアウトラインを記載するべきです。

プロトタイプのコンテンツを利用する

最終手段として、プロトタイプのコンテンツを利用することもできます。プロトタイプのコンテンツは、クライアントの既存サイトや競合他社のWebサイトから抽出し、モックアップのデザインで使います。ダミーテキストを使用するよりも、実際に公開されるコンテンツをより反映しているでしょう。タイトルやボディコピーの長さ、メタデータ、画像を既存のWebサイトから取り出すことで、レイアウトをデザインする方法がLorem Ipsumよりも現実的に理解できます。

コンテンツを主体にする

顧客やステークホルダーも含めたプロダクトデザインチーム全員が、コンテンツの役割を把握することが重要です。プロジェクトの開始段階で、コンテンツファーストの戦略を明確にすることで、時間とコストの節約ができます。また、完成したプロダクトがビジョンと一致し、ユーザーのニーズにマッチした効果的なUXが期待できるでしょう。

コンテンツファーストのデザインプロセスに価値を見出しているデザイナーは、利用価値の高いプロダクトの制作を実現します。中身のないコンテンツから、有益なコンテンツに変えていきましょう。コンテンツを重視することが、プロジェクトを成功へと導きます。


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