自分の創造性に自信を持つということ

Sarah Dzida

Sarah Dzida氏はプロダクト、UX、コンテンツ戦略のコンサルタントです。革新的なユーザー体験を創造するために世界中の様々な組織と共同で取り組んでいます。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Creative Confidence: A New Path to Inspiration

IDEOのKelly兄弟の著書『Creative Confidence』を2018年に読み始めました。そこに以下のような記述があります。

創造性への自信(Creative Confidence)とは、自分をとりまく世界に対して、自分は変化をもたらす能力があると信じることです。やろうと決めたことを達成できるという確信です。この自信、つまり自分の創造力を信じることがイノベーションの中心にあると私たちは考えます。

プロダクトの世界では、デザインプロセスを最大に生かせる方法について、常に多くが語られています。しかし、プロセスを明瞭にするとき、意図せずしてガードレールも設けています。プロジェクトのロードマップを決めるとき、たどるべき道筋も、そうでない道筋も決めてしまっているのです。

一般的にあなたのチームとクライアントは、個別のステップがどのようにしてより最終的にまとまっていくのかをデザイナーであるあなたに示してもらおうとします。基本的に、デザイナーはまず「新しいWebサイト、アプリ、必要なインターフェイスにこれだけの時間とこれだけの予算がかかり、これだけの価値をカスタマーに提供します」というような言葉から始めます。このような手法には根拠がある一方で、創造的なイノベーションを制限し、抑制してしまう可能性があります。

幸いなことに、地方支部創設者で共同開催者のAlex Molly氏と私が2018年のOpenIDEO Los Angeles chapterのアジェンダを考えていたとき、ふたりが自分たちの「創造性への自信」を発達させることに興味を持っていることがわかりました(OpenIDEOとは、世界中のコミュニティから何十万人もの人々が参加しているIDEOのオープンイノベーション実践部門です)。そこで、Alex氏と私は「創造性への自信」の育て方を身につけることを目標にした月例のデザイン思考イベントを始めました。ふりかえると、以下のような重要なテーマが浮かび上がってきます。

成果のための探検

探検することが成果につながる。 ―Julia Cameron

この記事では、デザインワークとクリエイティブワークを次のように分けてみます。

デザインワーク(特にUX)は誰かのためにおこなわれます。デザインする理由はニーズがあり、それを求めるユーザーがいるからです。一方、クリエイティブワークは自分自身に突き動かされておこなわれます。明確な目的や手段、戦略といったものはなく、個人的な理由がそうさせているのです。

クリエイティブワークにデザインは必要でしょうか? 必要です。デザインに創造性は必要でしょうか? もちろんです。クリエイティブワークも、ほかの人々のためにおこなわれるのでしょうか? 間違いなくそうですが、デザインと創造(クリエイト)の背後にある動機は非常に異なっています。

2018年のOpenIDEOの最初のグローバルな挑戦のひとつが、サーキュラーデザインとNike社の廃棄物再利用を助ける方法を中心として展開されましたが、これがデザインと創造の違いを調査するのに役立ちました。その提案は大きく複雑な問題でしたが、実験的なデザインに快く応じてくれたNike社に感謝しています。実際、挑戦のルールとして次のように明確に記されました。

スポーツやフットウェアのソリューションではなく、廃棄物の再利用を大きく前進させたソリューションを提案すること

最終的に私たちはこの問題に関するふたつのワークショップを作り、それぞれのグループでコンセプトプロトタイプの指導をしました。ワークショップの中でAlex氏と私は参加者に既成概念にとらわれないソリューションを考えるよう課しました。たとえば、アイディエーションのあとは、外科医やプロのダンサーといった思いがけないユーザーグループを考えてみるように勧めました。Nike社の再利用可能な廃棄物が役に立つかもしれない問題を彼らが抱えているかもしれないからです。

この挑戦で興味深かったのは、参加者が自分たちを開放することに対して苦戦していたことです。再利用可能な廃棄物の問題に二日間で対処するのは不可能な試みだと多くの人が感じていました。問題が大きすぎたので、すべてを理解して本当に筋の通ったソリューションをデザインするには時間が十分ではなかったのです。

しかし、これが私たちがこのイベントに取り組んだ理由だと思います。目的は実行可能なソリューションを考え出すことではありませんでした。この演習の目的はアリスのように思いがけないうさぎの穴に落ちて、見知らぬ場所にたどり着くことなのです。結果を期待するのではなく、旅を経験することです。まったく何もしないより、むしろ試す方がいいからです。

思考を行為に変えるためのアート

アートは思考を現実世界の行為に変える重要な手段だ。 ―Olafur Eliasson

『Creative Confidence』の中で著者は想定外の専門家またはリバースメンタリングについて語り、技術革新をひらめくひとつの方法は特定分野の専門家と話をしないことだと説明しています。たとえば、もっと良い冷蔵庫を作る必要があるのなら、製造者ではなく修理工場に質問しましょう。あるいは、視覚体験については目の見えない人に話を聞きましょう。

デザイナーは自らのスキル向上に関しては同様の革新のチャンスを逃していると思います。一般的に、私たちは成果が得られることが明らかな知識を優先します。この講座、ワークショップ、ブートキャンプ、本、Webセミナーを受ければこれが得られる、といったようなものです。しかし、創造のもっとも本質的な特徴のひとつは、とりわけはっきりとした相関関係がないAとBという対象に関係性を見つけ出す能力だと考えます。これをおこなうためには、デザイナーの専門分野の知識の外に目を向けることが重要です。

そこで7月のイベントでは、まったく違うことをおこなうと決めました。1500点以上の展示物を所有する現代美術館、Marciano Art Foundationへの見学を準備しました(メインの展示はOlafur Eliasson氏のインスタレーションです)。

その日の演習はOpenIDEOロサンゼルス支部のリーダーKyleigh Smith氏による観察についてのブレインストーミングと、ほかの人々とその会話に注意を向けることのすすめで始まりました。次にリーダーであるDan Vang氏が、グループで、ある対象を観察する共同デザインの演習をおこないました。ひとりが対象の一部を描き、その紙に次の人が別の部分を描き足し、さらに続けるというものです。

しかし、参加者がもっとも評価していたようにみえたのは、彼らがTo Doリストから完全に離れて過ごしたこの時間でした。普段のスケジュールとは異なる時間と場所で過ごすことです。活動の目的を決める必要もなく、のんびりと観察し、話を聞くことでした。

Photo courtesy of Karsten Würth via Unsplash

人が先、プロダクトは後

ピープルファースト。プロダクトはあと。正しいものをデザインする。ものを正しくデザインする。 ―Dana Chisnell

多くの組織が自分たちの革新を競争相手と比較するところで止まってしまいます。現在のやり方がベストかどうかよりも、現在なにが起きているのかを探しているのです。UXデザインとデザイン思考(そしてその繰り返しのすべて)は共感を抱くこと、すなわち、まずはあなたの視点を他の誰かの視点に置いてみることが革新をおこすためのもっとも強力な方法であると仮定しています。

したがって、OpenIDEOのグローバルな挑戦のために地元地域で調査に貢献できるチャンスが生じたとき、ロサンゼルス支部はそのチャンスに飛びつきました。その挑戦は次のような「how-might-we(どうすれば)」ステートメントに関するものです。

どうすれば既存の性能と信頼性を維持しつつ、次世代のテイクアウト用の紙コップを地球規模で回収可能なものにデザインできるか?

このワークショップについて個人的に評価している点は、これはすべて調査に関わるものだったということです。プロダクトやソリューションを生みだすものではありませんでした。その代わりに、地域規模で起きている現実を忠実に記録し、それをロンドン、アグアスカリエンテス、テキサス州オースティンにいる世界中の仲間たちに正確に示すことに、私たちコミュニティの努力は注がれました。これらのアクションは彼らを刺激しました。そしてこれが、ピープルファーストのために正しいものをデザインをするということの重要な部分であると考えます。自分の作品がどこへ行くのかを推測するのではありません。むしろ自分の作品がそこから飛び出し、だれか別の人に取り上げられるだろうと知ることが重要なのです。これは素晴らしいことです。

まとめ

総じてこの年はとても刺激的でした。私の専門分野における創造性、ひらめき、革新、そして喜びというテーマを調査するための意図的な方法もそうでない方法も見つけました。意図的な方法には、アートや詩、デザイン思考、実験的演習をOpenIDEOロサンゼルス支部の月例ワークショップでおこなうことなどがあります。思いがけず得た方法は、Ambleというスタートアップの提供するヨセミテ国立公園での研究休暇へ参加するという、ちょっとした冒険などもありました。

しかし、自分の専門分野の外で楽しみたいと考えているなら、OpenIDEOロサンゼルス支部で創造力をつけるために使った以下のような具体的な方法があります。

潜在的ニーズの調査

見えているものと期待しているものとの矛盾を見つけたなら、それは深く掘り下げるべきサインです。ターゲット層を超えて、エクストリームユーザーや境界線ギリギリのユーザーに目をむけたら、チャンスが見えてくるでしょうか?

想定外の専門家に目を向け、リバースメンタリングをおこなう

特定分野の専門家のところへは行かないようしてください。修理工場にもっとも頻繁に修理するものについて質問しましょう。視覚体験については目の見えない人に尋ねましょう。

課題の見直し

基本的に問題を見直すためのもっとも効果的な方法は、人間味あふれるものにすることです。Kelly兄弟が著作の中で、子どもたちのMRI体験を装置のニーズではなく子どもたちのニーズを中心に見直した有名な使用事例について考察しています。この視点について考えるべきもうひとつの方法は、焦点や視点を変えることです。

たとえばエクストリームユーザーの行動は初期段階の市場ニーズを示しています。その本で私の心に刺さったことは、美容プロダクトを研究しているチームがフォークリフトオペレーターに話をしたところです。そのオペレーターはフットバスをよく使っていたのですが、この使用事例はめったに検討の対象とはなりませんでした。

デザインワークについての新しい視点にどのように足を踏み入れ、クリエイティブな道筋をたどるために、あなたはどのように時間を確保しますか?


Welcome to UX MILK

UX MILKはより良いサービスやプロダクトを作りたい人のためのメディアです。

このサイトについて