フィードバックは、私たちを成長させ、仕事を向上させ、信頼関係を作るための重要なツールの1つです。他の人は自分たちが思いつきもしなかったようなアイデアを持っているので、一緒に働くことで私たちは強くなります。しかし、批判は往々にして曖昧で破壊的なものとなり、ともすればクリエイターのやる気を削いでしまいます。どのようにフィードバックをやり取りするか、また、それをどうやって最終的なプロダクトに生かすかを理解することが、デザイナーの仕事にとって不可欠なことなのです。
フィードバックの頼み方
最良のアイデアは、別の分野のエキスパートと一緒に仕事をするときに生まれるものです。多様性を取り入れることで、自分のプロジェクトについてまったく違う視点を持つことができ、また自分では見落としがちな欠陥やギャップに気づくことができるでしょう。多様な情報源からのフィードバックを受けることが、プロフェッショナルとしての成長とプロダクトの成功には重要なのです。
しかし、まず始めに、正直で建設的なフィードバックを集めるためには人々が自由に自分の意見を言える環境が不可欠なので、心理的な信頼関係を作らなければなりません。それだけでなく、デザインに対する有意義な批評ができあがるには時間がかかるので、全員がフィードバックの価値を理解することが特に重要です。
どのようなフィードバックが必要なのかを知る
「クールだね」「いいね、私は好きです!」といった曖昧なフィードバックや意見は耳ざわりが良く、心地良いものですが、あまり為にはなりません。あなたがどんなことを言ってほしいのかを明確にしない限り、人々はポジティブで当たり障りのないコメントをしがちです。どんなこと言ってほしいのかを相手にはっきり伝えましょう。
たとえば、あなたはコンセプトがその背後にある意図を十分に表しているかどうか知りたいかもしれませんし、デザインの一貫性についての意見が聞きたいかもしれません。フィードバックを求める側として、あなたがプロセスを主導しなければければなりません。目的、既知の課題、想定される解決策を特定し、これらを明るみに出したあとで、彼らのインプットを求めましょう。
意見を明確にするための質問をする
意見を明確にするための質問をすることで、他の人の考え方をより理解するチャンスが得られます。ばからしいと思えるような質問や、「あなたがおっしゃっているのはこういうことですか?」というような聞き方で構いません。これはリフレクティブリスニングと呼ばれる、コミュニケーションを明確化するための信頼性のある心理学的なアプローチです。もし他の分野のスペシャリストの言葉を誤解したら、彼らのフィードバックがプロジェクトに悪影響を及ぼしてしまうかもしれません。常に「なぜなのか」と問うようにして、決定的なコメントの核にあるものを掘り下げましょう。
役に立たないフィードバックを防ぐ
フィードバックは時として無意味で、主観的で、さらには有害であることもあります。デザイナーなら誰だって、「何が悪いかわからないんだけど、全然好きじゃないんだ」というようなコメントを聞いたことがあるはずです。個人の趣味は議論の外に置いておくべきなので、これについては何もしなくていいです。何も判断する必要はありませんし、反応もしなくていいのです。
このようなコメントを回避するために効果的なのが、課題を説明したうえで解決策を見つけることです。作品の好き嫌いを尋ねる必要はありません。感情の問題は脇に置いて、具体的な面についての質問をするのです。
話を遮らず、あまりしゃべらない
デザイナーはよく、フィードバックを受けるときに自分の仕事を擁護し始めます。すぐに新たな情報を付け足したり、自分の判断理由を説明したり、制約条件を強調したりします。これは議論を間違った方向に進ませるだけではなく、フィードバックする側にとってもストレスになります。
フィードバックを受ける側として、できるだけしゃべらないようにして、フィードバックする人の話を遮らないようにしましょう。彼らにしゃべらせて、それに対する考えをすべてメモするのです。議論が必要な点についてはあとで話せますし、質問を微修正する時間もあります。こうすれは、相手はフィードバックを与えやすくなりますし、あなたは彼らの意見を最大限に活用することができるでしょう。
十分な時間を与える
考えをまとめるには時間がかかるものですから、急いで出された意見は親切なものではないでしょう。作品の背景まで深く入り込み、考えることができるように、フィードバックをくれる人には十分な時間を与えましょう。前もってモックアップや関連する情報を与えることができれば理想的です。
礼儀正しく、低姿勢で
フィードバックを受けるにあたっては、あなたがどのように振る舞うかが非常に重要です。たとえ厳しいコメントを受けたとしても、個人攻撃だと捉えてはいけません。もっとも厳しいフィードバックが、もっとも示唆に富んでいることもあるのです。しかし、もしあなたが防衛的に反応してしまったら、次からその人はあなたに有益なものを与えることに対して快く思わないかもしれません。
批判は贈りものであり、よく考えられたフィードバックは時間をかけて作られたものであるということを覚えておいてください。あなたのフィードバック依頼に対して、それに応えるための時間を作ってくれることは感謝すべきことなのです。
代替案や例を示す
もしあなたが解決策や別の考えについて疑問を持っているのなら、口で言うよりも視覚化して見せる方がいいでしょう。人間の想像力は、思ったよりも機能しないことがあります。そしてフィードバックをくれる人と代替案について議論するときには、選択肢を最小限に絞り込むようにしましょう。どの色がよりフィットするかと議論するよりも、2色のスキームから選ぶ方がずっと簡単です。
フィードバックの仕方
建設的で為になるようなデザインのフィードバックを与えることは簡単ではありません。しかし、すべてのデザイナーにとってこのスキルを磨き、マスターすることは重要です。
親身になって、多大な努力が作品に投じられてきたこと、そして、おそらくあなたが見ているものは最初のバージョンから遠く離れたものであることを覚えておきましよう。直接的に発言すべきですが、厳しすぎてもいけませんし、また個人的な感情でものを言ってはいけません。
中心的な課題に着目する
単になにが好きでなにが嫌いかを言わないようにしてください。それはデザインの間題ではありません。あなたが解決しようとする問題に集中しましょう。そして批判的なコメントを残す前に、提示されたものの目的と課題をあなたが理解していることを確認してください。
背景を理解する
その作品全体を俯瞰して見るようにしましょう。大抵は多くの技術的な制約があり、ターゲットとなるオーディエンスの条件や、解決策に直接影響するような制約もあります。批判的なコメントを出す前に、作品の背景に深く入り込み、それをレンズにしてフィードバックをすることが特に重要です。
正確な質問をする
フィードバックの会議を成功させるためには、よく考えて質問することが鍵となります。明確にする質問を続けることで、お互いの理解を深めることができます。「このボタンは大きすぎます」というような何かを指摘する発言をする代わりに、「なぜこのボタンの大きさを選んだのですか」というように尋ねましょう。このようにすれば、あなたはデザインの細部それぞれの背景と理由を理解することができ、より的を得たフィードバックをすることができます。
主観的にならない
主観的な好みは議論の外に置いておくべきです。つまり、あなたの好みは問題ではなく、会話のテーマにするべきではないということです。「とにかくこれは好きじゃない」というようなコメントをしないようにしてください。これは受け手にとって、とてもフラストレーションであり、やる気を削ぐことなのです。それに、このようなフィードバックに対してデザイナーは何ができるのでしょうか? もしそれよりも良いやり方や別のアイデアが無いのであれば、何も言うべきではありません。
明確に、具体的に
フィードバックは具体的であるほど良いものです。曖昧なフィードバックは誰にとってもフラストレーションになります。実行できる提案、少なくとも実際に見ることができる参考などを提供しましょう。もしデザイナーがあなたの考えを誤解していたら、あなたが何も言わない場合よりももっと悪いことになります。細部に注目し、可能な限りの実践的な次のステップを提示しましょう。
デザインクリティーク(設計評論)について
多くの組織が、プロジェクトに対するフィードバックを集めるための、デザインクリティーク(設計評論)と呼ばれる特別な会議を行っています。
新しいアイデアを提案することを目的とするブレインストーミングとは違い、これは今ある解決策についてのフィードバックを集めるための会議です。打ち解けた議論を求める代わりに、チームはフィードバックの過程をシステム化することができ、時間を生産的に使えます。
デザインクリティークにおいては、プレゼンター、オーディエンス、ファシリテーターなど、各人に明確な役割があります。これらのフィードバックの会議において、それぞれが自分の役割を守ることは非常に重要です。プレゼンターは、解決すべき問題や調査されている解決策について説明します。ファシリテーターはグループ全員がアジェンダに沿うようにし、メモを取ります。
オーディエンスの役割は問題と解決策の背景を理解し、質問することです。クリティークの会議においては、明確な質問がもっとも重要なものです。たとえば、本来の、核となるような問題について質問をすれば、プレゼンターのスピーチの優先順位を決めるために役立ちますし、細部が明確になれば新しいデザインの決定がしやすくなり、アイデアも出やすくなります。
デザインクリティークを行っている有名な会社の例には、Google Ventures、Intercom、Atlassian、Facebookなどがあります。
次にすべきこと
フィードバックを集めたら、すべてのメモ、アイデア、提案を見直しましょう。考えるための時間を作り、自分の感情やプロジェクトに懸ける思いが静まるのを待ちましょう。決して、急いでプロジェクトに変更を加えないでください。
経験の少ないデザイナーは往々にして、同僚(特に自分より経験がある人)のコメントを行動の指針として受け取り、批判的な目で見直すことなしにそれを受け入れ、採用しがちです。デザインとは、ビジネスとユーザーの問題を解決するための美しさと機能性のバランスを永遠に探し続けることです。たった1つの正解があるわけではなく、そして誰もが間違いを犯します。細部にいつまでも拘らず、特定の解決策に固執しないようにしましょう。
建設的なフィードバックをどうやって求めるか、受け取るか、そして与えるかを学ぶことで、作品の問題点が見えるようになり、プロフェッショナルとして成長できるでしょう。