曖昧な言葉遣いが招くコミュニケーションの崩壊

HAMILTON HERNANDEZ

Hamilton氏は、人間が最大の可能性に到達できるような、有意義で楽しいテクノロジーの世界に暮らしたいと考えています。Human-Computer Interaction(HCI)のバックグラウンドを活用し、奥が深く意味のあるデザインについてブログを執筆しています。

この記事はAkendi Blogからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

EMPOWER YOUR USERS BY AVOIDING LANGUAGE AMBIGUITY IN YOUR DESIGNS

「数分お待ちください」、「数分後に戻ります」、または「このダウンロードには数分かかります」というようなことを聞いたり読んだりしたとき、ほとんどの人がそれらの言葉にあいまいさを感じたことがあるでしょう。数分とは何分でしょうか? いつも同じ数字でしょうか? おそらく違うはずです。

同じように、コーヒー、タピオカミルクティー、アイスクリームやデザートのサイズを大・中・小から選ばないといけなかった経験はありませんか? それらの選択肢から目当てのサイズぴったりのものを選べる自信はありましたか?

私はそういったものを頻繁に買うほうではないし、それらのサイズに対して業界でも標準的な定義がなく、大・中・小という言葉はあいまいなので、説明を求めたり、実際のカップを見せてもらうことがよくあります。サイズをはっきり説明してもらえなかったり、それらのサイズのサンプルがなかった場合は、はっきりした大きさがわからないので、ときには食べものを無駄にしたり、逆にもの足りなさを感じたりします。

サイズ、長さ、量、頻度、強度などを説明するために使用されるあいまいな単語の種類は急速に増えています。私たちは日常会話でこのような単語をとても自然に、気にすることなく使いがちですが、プロダクトやサービスでシームレスな体験を設計することを目指すなら、これらの言葉は完全には避けられないにしても慎重に使用するべきです。

プロダクトやサービス体験の意図的な設計に関する原則の1つは、ユーザーに権限を与えることです。これを達成するための基本的な要件の1つは、実行可能なフィードバックを明確かつタイムリーに提供することです。これは、ユーザーにいまなにが起きているかを知らせるためです。たとえば、完了しようとしているタスクまたはステップの状況です。また、いま起きていることに基づいて使用可能なオプションとアクションを伝えます。そのうえで、ユーザーとのコミュニケーションをとるときは混乱の可能性を避けなければいけません。したがって、あいまいさは残してはいけないのです。

「大幅な」または「若干の」遅れ

少し前に、ロント市の公共交通機関(TTC)がおこなった、ある対策の調査をしました。成功したとは言えませんが、ユーザーのエンパワーメントを改善する試みです。

TTCは、多くの交通機関と同じように、頻繁に起こる障害によって、ユーザーにストレスを与えています。そこでTTCはユーザーを気遣い、運行状況を彼らにもっと正確に知らせる試みとして、最近になって地下鉄の遅延や障害などを放送するときに使う言葉を変更しました。

TTCは、障害のレベルを伝えるために「若干の」と「大幅な」という言葉を選びました。この新しい通知が運行状況をより正確に知らせ、利用者が感じるストレスを軽減することを期待したのです。

TTCの広報担当者によると、「若干の遅延」は、列車の遅延が20分以内である場合で、「大幅な遅延」は20分以上遅れている場合を示すということです。このような区別は担当者にとって明確に伝えやすく、遅延の通知に携わるスタッフにとっても同様のことが言えるでしょう。

しかし、ソーシャルメディアとテレビを介した利用者のフィードバックによると、「若干の」と「大幅な」の違いはTTCの利用者にとってそれほど明確ではないようです。これはつまり、その通知から発生する期待とのギャップに対する彼らの不満を表しています(たとえば、利用者は「若干の」遅延だからすぐ解決されるだろうと予想します)。これらのコミュニケーションで信用を失い始め、それにより、利用者の時間、つまりは用事が尊重されていないと感じます。つまり、20分の遅延は利用者にとって「若干の」問題ではないのです。

TTCが率先して行ったこの試みは、曖昧な言語の問題だけでなく、設計者と利用者の間にある捉え方の違いによって、その効果が充分に発揮されていないようです。

プロダクトまたはサービスで使用されている言葉がユーザーの捉え方と一致しない場合、その言葉を使用したコミュニケーションは効果がないものに変わってしまい、役に立たず、いくつかの重大な場面では危険な状況を生み出す可能性もあります。

問題の解決方法

TTCは、顧客からのフィードバックに基づいてさらなるコミュニケーションの改善を試みているようで、これは喜ばしいニュースです。しかしながらこの通知の実施期間に否定的なフィードバックが寄せられたのは、最終設計へのユーザーフィードバックの反映が不足していたことを意味しています。フィードバックを早期に取得して、実際のユーザーによる多様なテストとその反復をすることが、よりよい体験を実現させるために必要なのです。

一般的に、プロダクトやサービスにおけるソリューションを設計するときに最初に行うべきことは、エンドユーザーを理解することです。次のような質問の答えを考えてみてください。ユーザーのニーズは何なのか? ユーザーにとっての現在の問題点はなになのか? それらを改善するにはなにが必要か? ユーザーはどう感じるか? ユーザーはなにを理解しているのか? そしてこの場合、ユーザーはどのような言葉を使い、ユーザーはその言葉をどのような意味で捉えるのか?

内輪の関係者しかわかり得ないような組織的な言葉(例:小、大、一部、少しの、多少、たくさん、若干の、大幅な、など)を使って、ユーザーがそれを理解することを期待するのではなく、あいまいさを回避し、最初の段階で選択肢がなにであるかを明確に伝えるために、ユーザーの立場に立ってなにが効果的なのかをまずは理解するようにしましょう。


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