どのようなサイトでも、KPIを設定する際はつねにユーザビリティを測定する必要があります。
コンバージョンに焦点を当てる一方で、ユーザビリティの測定を見過ごすチームは多いです。指標としてのユーザビリティを無視してしまうと、長期的なビジネスプランに大きな影響を与え、最終的にはユーザーが行動する動機を損なうこともあります。
なぜユーザビリティを測定するべきなのか
ユーザビリティは、Webサイトにあるすべてを支えています。Webサイトが魅力に欠けていたり、注意を引かなかったり、説明が不十分だったりしたとしても、コンバージョンにつながる可能性はまだ残されています。しかし、ユーザーがサイトを利用できないとしたら、一切行動を起こすことができません。
さらに、ユーザーはWebサイトを使う際、不満への耐性がきわめて低くなります。競合のサイトが世の中に溢れている中で、ユーザーが問題を抱えたWebサイトに挑戦するはずがありません。
対して、優れたユーザビリティには、明確なビジネス上の利点が伴います。
私が毎年クリスマスになると、友人や家族に「Amazonで手に入るものだったら、何でも好きなものをギフトとしてあげるよ」と言うのには理由があります。Amazonは使いやすいと知っているからです。
Amazonに慣れるにつれて、さらにAmazonに対して忠実になっていきます。これは私だけではないでしょう。ユーザーは、使いやすいサイトに忠実になる傾向があります。これによって顧客の生涯価値(LTV)が向上するため、企業はクリック課金で競合他社を上回れるよう、顧客を獲得するためにより多くの予算を充てられるようになるでしょう。
顧客は、より便利な体験を求めてプレミアム料金すら支払うでしょう。つまり、Webサイトが使いやすければ、さらに利益を出せるのです。
それでは、どのようにしてWebサイトが使いやすいかどうか知ればいいのでしょうか? どのようにしてユーザビリティを測定すればいいのでしょうか?
システムユーザビリティスケールは、ユーザーに一連の質問に同意するかを問う単純なアンケートです。回答者はそれぞれの設問に同意する度合いを1点から5点で順位付けします。5は完全に同意することを意味し、1はまったく同意しないことを意味します。
使用する設問は当然自由に決められますが、設問は10個であることが理想的です。Webサイトで使う典型的な設問例は下記のようなものです。
- このWebサイトを頻繁に使用したいと思う
- Webサイトは不必要に複雑だった
- Webサイトが使いやすいと感じた
- このWebサイトを利用するには、技術者のサポートが必要だと思う
- このWebサイトのさまざまな機能は上手くまとまっていると思う
- このWebサイトには矛盾がとても多いと感じた
- ほとんどの人がすぐ使いこなせるようになるWebサイトだと思う
- このWebサイトは使うのがとても面倒だと感じる
- 自信を持ってWebサイトを操作できた
- このWebサイトを使いこなすには事前にたくさんの知識が必要だと思う
システムユーザビリティスケールの計算方法
上記の例のように、SUSでは肯定的な質問と否定的な質問を交互に繰り返すようにしましょう。たとえば、最初の質問は肯定的です。
このWebサイトを頻繁に使用したいと思う
次に否定的な質問が続きます。
Webサイトは不必要に複雑だった
肯定的な質問ごとに、ユーザーのスコアを取得し、そこから1を引きます。つまり、スコア4は3になります。
否定的な質問では、5から取得したユーザースコアを引きます。したがって、ユーザーが質問に5と回答した場合、最終的な値は0になります。
各質問の点数を計算したら、これらの総計に2.5を掛けます。その数字が、100点を基準とした最終スコアとなります。
数字を使った頭の運動は確かに少し面倒ですが、ユーザビリティを測定するにあたって、100点を基準とする簡単な点数付けが可能になります。この指標によって、長期的に改善の度合いを記録することもできるでしょう。
システムユーザビリティスケールの使い方
SUSを使いこなせるようになったら、新しい可能性が開けます。
最初のうちは上記のような標準的な質問を利用することで、自分のWebサイトのユーザビリティをほかのシステムと比較し、理に適ったアイデアを得ることができます。
SUSの平均は68であり、80を超える点数は非常に優れていることを意味します。50未満の場合は、ユーザビリティの修正を優先すべきでしょう。
また、SUSを利用して、複数のWebサイトを順位付けするようユーザーに求めることで、競合他社と比較することもできます。
最後に、プロトタイプを実際のWebサイトと比べて評価したり、複数のデザインアプローチを比較することもできるでしょう。
システムユーザビリティスコアの限界
SUSはWebサイトのユーザビリティを測定する優れた方法であり、応用すれば、コンバージョンに対してユーザビリティがどのように影響しているかも測定できます。しかし、完璧ではありません。
システムユーザビリティスケールには2つの短所があります。
第一に、Webサイトのユーザビリティがどれだけ優れているかを測ることしかできません。成功または失敗の理由を特定することはできないのです。
第二に、往々にしてユーザーが言っていることと現実には食い違いがあります。たとえば、あるWebサイトを使い慣れているユーザーは、それを使いやすいと回答するでしょう。また、アンケートに答え終わったらすぐに他人にそのWebサイトを勧めると回答したとしても、実際にはしないかもしれません。
つまり、SUSだけに依存することはできないのです。ユーザーがWebサイトで重要なタスクをどのように達成するのかも測定する必要があります。
重要なタスクのユーザビリティを測定する方法
Webサイトで、ユーザーにコールトゥアクション(CTA)を達成してもらいたいのなら、行動を起こすのが簡単でなければいけません。しかし、ニュースレターの登録や製品の購入、コンタクトフォームの記入が実際に簡単かどうかは、どのように知ることができるでしょうか?
タスク指標が測定するもの
特定のアクションを測定する場合、SUSは効果的ではありません。CTAに特別に関連する、異なるユーザビリティの指標が必要になります。このとき、次のような要因を測定する必要があります。
- ユーザーがアクションを完了するまでにかかった時間
- タスクを達成できなかったユーザーの数
- ユーザーがもっとも直線的なルートでCTAを達成できたかどうか
- ユーザーがタスクを完了するまでに犯したミスの平均数
幸いなことに、これらの指標をすべて独立して測定する必要はありません。実際のユーザーがタスクを完了するのを観察することで、これらすべての指標を確認することができます。
タスク指標の測定方法
ユーザーが適切なタスクを完了するよう求められているなら、用意したユーザビリティテストセッションを実行するときにタスク指標を記録することができます。ただし、定量的なデータの収集を目的としている中で、正常ではない行動をするユーザーがいると、指標が乱されることがあります。そのため、より多くのユーザーでテストすることが望ましいでしょう。
ファシリテーターを用意するタイプのユーザビリティテストには時間がかかります。したがって、CTAなどの重要なタスクにを測る指標を設定するために、リモートテストを実施しましょう。
リモートテストでは、ユーザーはタスクを完了したら、ファシリテーターが直接観察したり対話したりすることなくテストを終えます。
このような遠隔のテストに役立つツールはたくさんあります。
方法の1つとして、Lookbackなどのアプリケーションを使用できます。Lookbackを使用すると、対面のテストと遠隔のテストの両方を実行することができます。
Lookbackでは、ユーザーにリンクを送信することも可能です。リンクをクリックすると、そのユーザーにタスクが設定され、録画している間に作業を達成するよう求められます。Lookbackの利点は、ユーザーがタスクを完了するのを動画形式で見ることができ、同時にユーザーの行動と思考を説明するコメントを表示できることです。
しかし、欠点として、それぞれのセッションを観察して指標を自分で計算しなければならず、ミスクリックの数や調査するべき指標を記録しなければなりません。
この問題の解決策の1つは、Mazeなどのツールを使用することです。Mazeはユーザーセッションのビデオを記録したり、ユーザーがタスクを達成したことを確認したりはできません。しかし、ユーザーが行った作業について詳細な分析を提供することができます。Lookbackが定性的なテストに適している一方で、Mazeはタスク測定にとって理想的です。
確実にユーザビリティを測定する
ユーザビリティの指標の記録をワークフローに取り入れたいなら、適切なツールを使用することが決定的に重要です。これらの指標を適切に収集できないと、測定できなくなり、危険な未来が待ち受けています。
目に見えるものに焦点を当てようとするのは自然な傾向です。しかし、コンバージョンの数だけに注目していると、それだけが組織全体の目標になってしまいます。その結果、長期的な成功を逃し、代わりにコンバージョンの改善(ダークパターン)だけを狙った短絡的な技術を導入することになるでしょう。
ユーザビリティを測定し始めれば、ユーザビリティに十分な注意が向くだけでなく、時間とともにデータの価値を実際に役立てていけるでしょう。タスクの完了までにかかる時間を短縮できれば、ユーザビリティの測定がコンバージョンの改善に直接影響していることを示すことができます。