私たちは、これまで古典的なデザインの例をいくつもみてきました。それらは、当初の目的を果たしてもなお、何ヵ月、何年、それどころか何十年も語り継がれているのです。元のデザインが使われた目的も知らない人たちですら、その美しさや純真さ、不朽さについて語り合います。
そこまでのデザインを成し遂げるにはどんな努力が必要なのでしょうか？ 今日（こんにち）私たちは、考えられる理由を探したり、デザイナーがもつ色褪せないデザインの作り方の発想を手に入れようとしています。
それは時代を超越するか？
私たちが日々触れる作品の中で、ときに時代を超えた大傑作に見えるものもあるかもしれません。ですがその後、何の前触れもなく、世間から忘れ去られてしまい、再び話しに出す人は誰もいなくなります。なぜこのようなことが起こるのでしょうか？ 確かなことは誰もわかりませんが、考えられる理由はあります。デザイン関連の仕事をしていない人たちに関しては、そのデザインに関心がなくなったか、そもそも最初から関心がなかったというのが私の見解です。
デザインは、デザイナーだけではなく、すべての人々が相互的に関わるように変化させることが、意図されています。そうしない場合や、元となる意味の範囲をこえて影響をおこさない場合、決して一流にはなりえません。
デザインマーケティングの課題
世論は気まぐれで変わりやすいですが、適切な広告に大きな影響を受けることもあります。Coca-ColaやMicrosoftのようなブランドは、たまたま現在の市場優位性を得ることができませんでした。『モナ・リザ』のような有名な芸術作品でも、現代の観衆に知ってもらえるよう大規模なプロモーションを行っています。
『モナ・リザ』 Camilio Bejarano作
当時、『モナ・リザ』と同じくらい人気があった作品が多くあり、さらに『モナ・リザ』よりも人気があった作品もありました。ところが『モナ・リザ』やシスティーナ礼拝堂、『ダビデ像』、その他ルネサンス後期を象徴する作品が、人々の記憶に長く残るように仕向けのたのはマーケティングでした。
本物のトレンドとは？
これまで述べたように、トレンドと感じるものがあるならば、それはおそらくそうなのでしょう。部分的なフラットデザインやレスポンシブデザインのような最近の流行について単に述べているわけではありません。根拠なくトレンドを確立して、ただかっこよく見えるものについて述べているのです。そのようなトレンドは一発屋になる運命で、デザイン界がより頑丈な着想に進むにつれて消えていきます。
ただ単に利益を搾り取るだけのトレンドをみつける手っ取り早い方法は、デザインコミュニティの中で特に評判の高い人物の意見を判断することです。デザイン界に影響を与える人たちが、しきりにトレンド非難するならば、一時的な流行という絶好のチャンスがあるのです。彼らの意見があまり多くなかったり、それを自分たちの作品に取り入れていたとしても、きっとそれは大当たりです。
もう良いデザイナーはいない？
最近のデザインの専門家は、トレンドとテクノロジーを取り入れすぎていたり、優れたデザインの基本原則を配慮していないと多くのデザイナーが不満を言っています。こういうデザイナーは年齢を重ねていて、業界がデザインに外国の取り組みを完全に取り入れているように見えるので、少し疎外感を感じているのかもしれません。
これはどの世代にでも起こり、熟練者が「今時の若者」や同業者に対する敬意が乏しいと不平を言うからです。1940～50年代のデザイナーは、ラピッドグラフやフロッピーディスクなどといったもので、70～80年代の「生意気な若者」を引きつけていたと確信しています。
実際過去に未だかつてないくらいデザイナーは増えています。ところが、基本をしっかりと理解した有能なデザイナーの数は、減少していません。それどころか、世の中のデザイナー需要の高まりによって、数は増えています。
少なくとも、これらデザイナーのほんの一握りが永久的な何かを生み出す可能性は、非常に高く、たくさんのガラクタをかき分けていかなければならないとしても、それを見つけ出すでしょう。
時代を超越するデザインは飽きがこない
クラシックなデザインは、飽きがきて時代遅れだと思いますか？ もう一度、考えてください。どのデザイナーも、自分たち以前の時代に活躍したデザイナーに影響を受けています。もしあなたが最新のデザイナーのみから影響を受けているなら、最新のトレンドをなぞるだけの行動はその寿命を縮め、逆にひどく時代遅れに見えてしまうかもしれません。
図書館を訪れ、20世紀の著名人の古典的なデザインをいくつか閲覧してみてください。これがのちのデザイナーにどのくらいの頻度で模範にされたか驚くかもしれません。
