UIの未来:静かなインターフェースとプライバシー保護

Giorgia Lombardo

Design Mattersのコンテンツライター、DeMagSignの編集者。 デザイン、社会、文化に興味があり、ティーとダークチョコが大好きです。

この記事はDeMagSignからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

The Future of UI is Quiet, Passive Listening Technologies

デザイナーのRune Madsen氏は、プライバシーを侵害することなく、テクノロジー、ユーザーインターフェイス、および企業が人々をどのように支援し、守るべきかについて語ります。

Rune氏は、Design Systems Internationalの共同設立者の1人です。彼は、コードベースのデザインプロジェクト、デザインシステム、およびインタラクティブなインスタレーションの制作を専門としています。

Rune氏はDesign Matters 16で講演を行い、彼の著書『Programming Design Systems』の例をもとに、デザインとエンジニアリングを2つの異なる分野に分けることについて疑問を呈しました。講演では主に、プログラミングツールをデザインツールボックスに追加するとどうなるかについて掘り下げました。しかしそこには、デザイナーが静的なデザインツールに依存する場合に課題となるものもあります。現在、Design Systems Internationalでは、グラフィックデザインとクライアント向けのデザインツールの両方を組みあわせています。

インターフェイスの未来、もっと具体的に言うと、邪魔にならず静かなインターフェイスを作成する方法や、人々のプライバシーとセキュリティの問題に取り組む方法とデザイナーの役割の変化についてコペンハーゲンでRune氏と対談しました。

Design System Internationalの共同設立者、Rune Madsen氏

ミニマルテック

Design Mattersでは、ユーザーの過度な依存やテクノロジーの過負荷を避けるのに役立つプロダクトに注目しています。ストレス、不安、不眠症、最悪の場合は燃え尽き症候群など、テクノロジーの過負荷が引き起こすもっとも一般的な健康問題の一部です。デザイナーは、ユーザーの注意を分散させたり、ユーザーのストレスにつながる通知や中毒性につながる一定の時間を要する機能などを取り除くプロダクトを作成する必要があります。デジタルデザインは人間の暮らしを豊かにするためのものであり、混乱を呼び起こすものではありません。Design Matters 19では、ミニマルテック(Minimal Tech)と呼ばれるテーマのうちの1つを通じて、このトピックについてさらに詳しくご説明します。

──今、もっとも注目しているトレンドはどんなものですか?

人びとを画面から遠ざけるテクノロジーとデザインプロダクトに大きな注目を寄せています。常にスマートフォンを触っていなくても、ユーザーにとって価値のある「さりげないプロダクト」をどのように作り出すことができるでしょうか? 私たちが注目しているものは、実際の視覚的なデザインから遠ざかり、音声の録音や再生、また話すことにもっと比重を置いたものです。ただし、たとえばエラーやフィードバックをどのようにして伝えるかなど、直面しているいくつかの課題があることも事実です。耳障りであったり、鳴り止まない音声などは避けなければなりません。

──さりげないプロダクトとありましたが、それに当てはまるお気に入りはありますか?

1日2回、特定の時間に通知を受け取れるようにユーザーが設定できるようなプロダクトがありますが、多くの場合はその設定に関係なく他のユーザーが通知を送ることができるようになっています。つまり、ユーザーは自分が通知を受け取りたい時間を設定し、他の時間は受け取らないようにできますが、他のユーザーによりその設定を無効にされてしまうということです。ユーザーは、このかけひきから自分を守る方法を探し出し、設定する必要に迫られるのです。

Slackを例に挙げてみましょう。Slackはあなたがどのタイムゾーンにいるのかがわかっています。たとえば、異なるタイムゾーンにいる人にメッセージを送信し、それが相手の勤務時間外だった場合、その人には通知は送信されません。ただし、そのメッセージの送信者は、強制的に通知を相手に送ることもできます。この機能は、とても興味深いと言えます。正しい方向性で、ユーザー自身が関与する度合いをコントロールできるコミュニケーションツールを作るための1つのステップと言えるでしょう。

これは「デフォルトで終業後に静寂モードに変わる」という、私が好きな機能でもあります。デザイナーが考慮すべき静かなインターフェイスという観点において、いいきっかけをもたらしてくれるものです。

──静かなインターフェイスはこの先、増えるとお考えですか?

そう思います。スマートフォンだけではなく、あらゆるデバイスは劇的な変化はないとしても何らかの形でスマートになりつつあります。むしろ、それはユーザーの意図を聞きとり、それに反応するものとなるでしょう。このように、ユーザーの行動を受動的に捉え、それに反応するデバイスがさらに増えるでしょう。

Fitbitも人気です。私は大ファンというわけではありませんが、「自分は何もしなくてよい」というアイデアは気に入っています。受動的にユーザーの行動を感知し、そのデータを収集し、一つの形としてユーザーにとって価値のあるものを提供してくれるのです。

私たちが作るものは必ずしもFitbitのように健康に関連したものであるとは限りませんが、それでも生産性と創造性の分野には多くの可能性があるのです。

音声UIの未来、プライバシーとセキュリティ

──音声UIについてお聞きします。静かなインターフェイスのデザインにどのように関係していますか?

今のところ、ユーザーの望みを叶えてくれるプロダクトにはGoogle HomeやAlexaなどがあります。たとえば曲名を言えばその曲が再生されます。しかし、そこには克服すべき問題点があると言えます。ユーザーは通常、このようなデバイスと一人で、もしくは家族と、外ではなく家の中で話します。ちなみに私がこのような場面をより頻繁に目撃したのは中国で、人々はこれらのアプリやデバイスをメッセージのやり取りや翻訳に利用していました。しかし、このような使い方に私はあまり注目していません。

ユーザーが望むことを指示したときだけではなく、受動的に感知し、そのすべてを理解するデバイスについて考えてみましょう。私たちのすべての行動が自動化・デジタル化し、常にコンピューターの前にいることから完全に解放され、静かなインターフェイスと話す世界を想像してみてください。音声コマンドではなく、受動的に聴くという行動になるでしょう。逆に言えば、これはプライバシーとセキュリティの監視に関連する一連の問題を引き起こすことを意味しています。

──データの盗用や悪用を心配しないで済む方法は何かありますか?

Appleは、プライバシーという観点での利点を享受した最初の企業です。他の大企業と同様に、データを売って利益を上げることができたはずですが、Appleはその選択をしませんでした。たとえば、Apple Mapsを使用する場合、すべての操作は匿名化されます。Appleは自ら、データを解析できない状況を作り出したのです。そして、それは他の企業とは著しく異なる点です。Facebookが個人データを販売したことが明らかになったのに対し、Appleの個人情報に関する立場については称賛が寄せられています。Appleの現在のキャッチフレーズは「プライバシーを最優先するプラットフォーム」です。大企業がこのような決定をくだしたという事実は、まさに称賛に値する素晴らしいことでしょう。

人々は、生活の向上を可能にするためのテクノロジープロダクトを望んでいますが、個人データを巨大なクラウド企業に提供したくはないでしょう。Appleはそれを解決する方法を示しています。つまり、今のトレンドは間違いなくプライバシーの保護に向かっていると言えます。誰もスマートデバイスを手放したくはないでしょう。監視されているという感覚から解放されたいだけなのです。

デザイナーの役割の変化

──現時点でデザイナーの役割はいくつかの点で変化しています。この変化についてどう思いますか?

デザイナーの役割は間違いなく変化していますが、私は「誰もがコードを書けるようになるべきだ!」とは思いません。誰もがそれを知る必要はないと思うからです。実際のところ、テクノロジーとは全く無縁でユーザーリサーチに専念している人々が、大きな価値を生み出しています。さまざまな方法によって大きなインパクトを生み出しています。デザインプロダクトにはさまざまな形があり、それぞれに適した異なる業界のデザイナーがいます。つまり、すべてのことを一人で行うことは不可能なのです。

デザイナーという職業が作られて間もないころ、デザイナーの仕事は何だったでしょうか。たとえば、プリンターにオイルを塗ったり、紙を正確に置いたり、ポスター作りの全てを知っている職人だったのです。しかし、プロダクトデザインがより複雑になり、デザイナーはカテゴリーごとの「箱」に分けられるようになりました。そして現在は、UXデザイナー、ビジュアルデザイナー、フロントエンドデザイナー、バックエンドエンジニアなどに分けられています。プロダクトデザインがより高度で複雑になるにつれて、専門分野で分けられることはごく自然のことです。専門分野に特化することは素晴らしいことですが、「箱」に分けられることによって失うものもあるのではないでしょうか。

私の教え子たちにはジェネラリストとスペシャリストの両者を兼ねてほしいと思っています。最終的にデザイナーとして作り上げるプロダクトは、人々のためになるものです。そしてその人々はみな、複雑で多面的です。

Churchmagより

──最後に、今のデザイナーにアドバイスしたいことはありますか?

私のクラスでは、彼らが飛びたつ世界は専門性ごとに分けられた世界だと教えています。たとえば、彼らがUXデザイナーまたはフロントエンドデザイナーとしての仕事に就いたとします。彼らはコードが書けるかどうか、聞かれるでしょう。すべての大企業はそのような人材を望んでいるのです。なぜなら、専門性ごとに分ける方が簡単だからです。私はいつも生徒たちに好奇心を持つことをすすめています。もちろん専門性は必要ですが、興味はあらゆるものに持つべきです。私は学生にジェネラリストとスペシャリストの両者を兼ねられるようになって欲しいです。そしていつも好奇心を持つことを推奨しています。

しかし、より一般的には「テクノロジーを使用したデザイン以外にも目を向ける」ことをおすすめします。自然を楽しんでください。新しい文化を体験してみましょう。何故ならあなたがデザイナーとして作ることになるプロダクトは、結局のところ人々のためになるものです。人々は限りなく複雑で多面的であり、計り知れない存在なのです!

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この記事は北欧のデザインカンファレンス「Design Matters」で過去に登壇されたスピーカーに実施したインタビューです。毎年コペンハーゲンで1,000人規模で行われているDesign Mattersですが、今週1月29日~30日に日本での初開催を控えています。

Pop-up in TokyoではSlackやFigma、VolvoやBBCなど、グローバルで活躍するデザイナーが集結します(当記事のRune Madsen氏は登壇いたしません)。

※おかげさまでSOLD OUTしました


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