プロトタイプを使用したユーザーテストの価値とは

Gabriel Kirmaier

GabrielはUI/ UXデザイナーであり、モバイルアプリからWebプラットフォームまでデジタル製品のデザインに力を注いでいます。

この記事はToptalからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

The Value of User Testing with Prototypes

AppleやMicrosoftの新製品すべてが大ヒットしているわけではありません。

MicrosoftのWindows 8は最悪のユーザー体験(価格的にも残念)でしたし、AppleのNewtonは数年後に発売されたiPhoneとは全くの別物でした。では、何が失敗の原因だったのでしょうか? 

新製品や次の大きな目玉製品の発売という興奮の中にいると、デザイナー、製品担当マネージャー、経営幹部たちは「作ってしまえば、何とかなるだろう」と考えがちです。これこそ、よくある過ちなのです。その結果、ユーザーテストを実施して製品検証するという極めて重要な工程を飛ばしてしまいます。

Apple Newtonは時代の先駆け的な端末でしたが、短命に終わりました。主な原因として、商品発売前のユーザーテストを怠ったことが考えられます。

事実は私見に勝ります。商品開発ライフサイクルの早い段階で、UXデザイナーが問題を発見できるよう手助けをする手法、実践法、ツールがユーザーテストです。問題を特定することで経済的損失を未然に防ぎ、製品展開の強化につながります。

ユーザーテストはデザインプロセスのどの段階でも実施でき、プロトタイプを使用してテストするとデザインチームが即座にデータを手に入れることができます。そのため、もっとも影響力が大きいテスト結果を得られます。価値の多くは定性的や定量的なフィードバックによってもたらされ、デザイナーはユーザーにとって何が機能するかしないかについて、よりバランスの取れた全体像を把握することができます。

ユーザーテストかユーザビリティテストか

ユーザーテストはユーザビリティテストと混同されがちですが、それぞれ違う特性を持っています。ユーザーテストは、ユーザビリティテストを含む包括的なテストを指します。ユーザーテストでは、「この製品はニーズに応えているか?」や「問題を解決しているか?」というような問いを検証します。

ユーザビリティテストはユーザーテストとはいくつかの点で異なります。ユーザビリティテストの最終目的は、製品がユーザーの期待どおりに機能するか見極めることです。ユーザビリティテストでは「ユーザーが製品を使うことができるか?」を検証し、ヒューリスティック分析とセットで使われます。ヒューリスティック評価は、UI上の一般的なユーザビリティの問題を特定する手法です。

どちらのテストにも、プロトタイプやモックアップを使用できます。どちらをいつ使用するべきか特に決まりはありませんが、ユーザーテストにおいては、プロトタイプが効果的なテスト手段になります。

ユーザーテストとユーザビリティテストの違い

ユーザーテスト

ユーザビリティテスト

ユーザーにとってこのアプリは必要か?

ユーザーはこのアプリを使えるか?

 

ユーザーテストは、ユーザーが製品を必要としているか、もしくは欲しいかを判断する第一歩です。

デザイナーやユーザーリサーチャーが実施するユーザーテストは、以下の2種類があります。

  • 比較法:製品やWebサイトの2つの案を比較させるテストです。異なる特徴を比較させることにも使用できます。
  • 調査法:この方法は、現実的なシナリオを用意しユーザーに達成してもらう中で、さまざまなサービスについて検証します。マーケット上のギャップを浮き彫りにすることができ、デザイン向上に生かせます。また、デザインで重点的に取り組むべきポイントが把握できます。

プロトタイプのユーザーテストをするメリット

プロトタイプを使用してユーザーテストを実施することで、デザイナーがデザインプロセスの初期段階で価値のあるユーザーの意見を反映させることができ、費用の損失が防げます。プロトタイプに関する一番のメリットは、ユーザーが製品の目的をどう捉えるか把握できることです。

たとえば、5秒テストではユーザーにページや製品を5秒間だけ見てもらい、そのあと見たものを説明してもらいます。ユーザーは時間的制約が設けられ、製品が役に立つか立たないかを短時間で理解する必要があるため、このテスト方法はとくに効果的であると考えられます。

ユーザーテストにプロトタイプを使用することでもたらされるメリットの一例:

  • 早期失敗原則(Fail Fast Methodology):早く失敗を繰り返すことができ、リソース、時間、費用の無駄を防ぎます。
  • コスト削減:製品が特定のユーザーセグメントに一定の評価が得られることをあらかじめ検証できるため、大幅なコスト削減につながります。
  • 固定観念の排除:ユーザーによる定性的かつ定量的なフィードバックによって、客観的な視点からの意見が得られます。
  • 潜在的な機会の発見:ユーザーのフィードバックには、今後の新しい製品につながる情報もたくさん含まれています。

フォーカスグループの盛衰

インターネットが普及される以前は、いつでもどこでもユーザーテストが実施できる今とはテスト方法がかなり違っていました。社会学者Robert Merton氏の1946年の著書によって、ユーザーテストの始まりがフォーカスグループから由来することがわかります。

Merton氏はグループに関する研究のパイオニアであり、ラジオ放送およびに陸軍訓練や士気を高める映像がもたらす影響を調査し、多大な功績を上げました。数年後には、クライスラー、Ivory Soap、バービー人形、Betty Crockerなどのマーケティング施策は、フォーカスグループの成果もあり、成功を収めています。その頃、フォーカスグループや個人のユーザーテストは、高価な映像・音響機器、マジックミラーが設備された「ユーザビリティラボ」と呼ばれる専用部屋で実施する必要があり、AppleやIBMをはじめとする多くの企業がこのラボを設置していました。

フォーカスグループはユーザーテストの最初の形式です。インターネットの普及に伴い、オンラインによるユーザビリティテストへと移行していきました。

1990年代終わりには、ブロードバンドインターネットが瞬く間に広がったことでフォーカスグループのトレンドは衰退し、リサーチャーはビデオ経由によるユーザーテストに注力していきました。そして、現在のユーザーテストのように発展していきます。

2019年の現在、デザイナーはより信頼性の高いユーザーテストツールの選択肢があります。以下に、デザインプロセスの各段階でよく使用されるツールを紹介します。

  • UserTesting:フィードバックに意欲的なサイトの登録者である被験者から、インサイトを得ることができます。テストを開始してから数時間以内にインサイトが提供できることをうたい文句とし、UXデザイナーは自分たちで被験者を集めなくても客観的な視点からのフィードバックが得られます。
  • Bugsee:主にアプリ向けであり、ユーザーはバグやクラッシュのレポートができ、問題となるアプリの映像が提供されます。継続的にユーザーテストを実施するのに最適なツールです。
  • Appsee:ユーザーがモバイルアプリやWebサイトのテストをしている間の、ユーザーセッションの記録を提供します。それにより、UXデザイナーはユーザー動向のすべてが観察でき、ユーザーがアプリをどう利用するかを正確に把握できます。
  • Loop11:市販されている優秀なプロトタイプ作成ツールの多くと統合しており、新しいツールが出ると継続的に追加しています。Loop11はAxureJustInMindInVisionと提携しています。UXデザイナーや製品開発チームは、クリックストリーム、ビデオ、ヒートマップなど多数の機能を利用できます。
  • Lookback.io:定性インタビューに有力なツールです。デザイナーがリアルタイムでユーザーにインタビューでき、タスクを達成している間にメモをとることができます。さらに、ユーザーが時間の制約なしでタスクを達成できる機能もあります。Lookback.ioはフォーカスグループに現代的なアプローチを取り入れたツールです。
  • Hotjar:定量的なユーザーテストを提供します。サイト上でのユーザーの行動を可視化したヒートマップ機能を提供し、ユーザーがどこをどの頻度で閲覧したか報告し、閲覧の少ないエリアのインサイトを入手します。
  • Usabilla:デザイナーは、ユーザーのWebサイトやアプリに関するリアルタイムなフィードバックを見ることができます。フィードバックのボタンが適切な位置に配置されており、ユーザーはいつでもフィードバックができるようになっています。
  • Userlytics:デザイナーがオンラインでもオフラインでもWebサイト、アプリ、プロトタイプを対象にユーザーテストを作成することができます。定性データと定量データが入手でき、世界規模で参加者パネルを保持しているため、デザイナーがターゲットとするペルソナを明確化するのに役立ちます。
  • Maze:プロトタイプに特化したユーザーテストのプラットフォームです。InVision、Marvel、Sketchと提携しており、ユーザーから有効なインサイトを収集します。追加で料金がかかりますが、50,000人を超えるユーザーの中から被験者を提供することもできます。

ユーザーテストのポイント

ユーザビリティテストと異なり、ユーザーテストは一般的に製品の必要性を検証することが目的であるため、テストの検証内容が違ってきます。ヒューリスティック評価などのテストで検証する「ユーザーはこの製品が使えるか?」ということはユーザーテストでは評価しません。デザイナーやユーザーリサーチャーはオンライン上のユーザーテストやフォーカスグループなどを利用して、製品が実際の問題を解決できるかを見極めます。

ユーザーテストのツールはプロトタイプを使用のほか、良質な問いを立てることや予行テストを実施するなどのベストプラクティスも含まれます。

ユーザーテストのベストプラクティスとポイント:

  • 参加者5人で実施する:定性テストは5人の参加者で実施することが推奨されています。なぜ5人なのでしょうか? 専門家によると、課題の約85%を発見するために必要な人数であるとされているためです。
  • 良質な問いを立てる:これには、サイエンス(分析データ)と同等にアート(直感)が必要になります。誘導的な質問や「なぜ」、「どうやって」で始まる質問はできるだけ避けましょう。
  • 予行テストを実施する:1セッションのテストを試行し、結果を評価してから参加者数を増やすことで、テスト時間、質問内容、テストの実施環境などが事前に調整できるため有効的です。

まとめ

MicrosoftのWindows8や、Appleの失敗作であるNewtonのような悲惨な製品を回避することは可能でしょうか? 答えはYESです。ユーザーテストをデザインプロセスの初期段階に組み込むことで、回避することが可能となります。多くの人はユーザーテストとユーザビリティテストの明確な判別がついていませんが、2つの違いを理解することは重要です。

ユーザーテストは製品の必要性を検証し、ユーザビリティテストは製品の利便性を検証するテストです。ユーザーテストの実施に役立つツールがいくつかありますが、共通点は、プロトタイプをテストに使用することがフィードバックを得る仕組みということです。プロトタイプをユーザーテストすることで、時間、費用、リソースの削減に貢献し、最終的には製品の質を向上させ、製品の成功率を高めることにつながります。


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