タイプフェイスデザイナーBruno Maag氏が語る、タイポグラフィとアクセシビリティ

Giorgia Lombardo

GiorgiaはDesign Mattersのコンテンツライターであり、同コミュニティのメディアDeMagSignの編集者です。お茶とダークチョコレートのない生活は考えられません。デザイン・社会・文化に興味があります。

この記事はDeMagSignからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Typeface Designer Bruno Maag on Typography and Accessibility

Bruno Maag氏は、ロンドンを拠点とするスイスの有名なタイポグラフィデザイナーです。彼とDalton Maag社のチームは、Airbnb、Facebook、BBCなどのブランドのために精巧に作られた書体の製作を専門としており、BrunoとDalton Maagは定期的にタイポグラフィのワークショップを主催し、世界中のカンファレンスで講演して知識を共有しています。

タイポグラフィのこれから

──昨年のDesign Matters 18で、あなたは可変フォントについて話していました。今もその仕事を続けていますか?

ええ、続けています。これは、タイプ業界における最新の技術革新の1つであるため投資を行っています。可変フォントは大きな可能性を秘めていますが、その将来は人々がどう使うかにかかっています。

可変フォントは古い技術の新しい進化ですが、すべてのメディアや環境にうまく適用できるとは思えません。私は今ある解決策とは異なる、新しい解決策を見つけるために可能性とチャンスを最大限に活用することを考えています。たとえば、仮想現実・拡張現実・複合現実の課題に対してですね。

可変フォントは、複数のフォントのように動作する単一のフォントです。これは単一のバイナリであり、同等のファイルサイズが大幅に縮小されているため、ディスクサイズとWebフォントの帯域幅が小さくなっています。[Wikipedia]

Venn variable font

Dalton Maagによって作成されたVennの可変フォント

──他に興味深いトレンドやタイポグラフィの傾向はありますか?

そうですね。より高度なデジタルタイポグラフィは今や非ラテン文字の書記体系が使用される場所に到達し、ほとんどの場所でラテン文字よりも好まれるようになっています。

グーテンベルグの発明である工業的に大量生産された活字は、庶民が本を買えるようにし識字率を高め、教育における富裕層の独占を崩壊させました。しかし彼の革新は当初ヨーロッパ以外には広まりませんでした。

タイポグラフィと商業印刷の全体的な概念は数百年しか経っていませんが、書くことは明らかにずっと長い間行われてきました。ヨーロッパやアメリカ以外にも、複雑な書記体系を持つ言語があります。これらの地域では、西洋から輸入された印刷機器が使用されていましたが、必ずしも地域の文字の複雑な構造や表現力をサポートするように設計されていませんでした。

その結果、文字は書記体系に適合する非常に単純化された形式に戻されましたが、文字を記述するために使用された最も単純な形式に大まかに従っています。OpenTypeフォント技術の導入によって、このような地域でより高品質なデジタルタイポグラフィが可能になったのは、ここ20年のことです。

中国やインドのブランドが欧米市場に進出するにつれ、こうしたマルチスクリプトフォントへの関心も高まっています。欧米スタイルの老舗ブランドは、ブランド力の向上と低価格化により、欧米の有力な競合企業になりつつあります。西側諸国はただ見て待つだけではなく、積極的に世界のユーザーと関わる必要があります。

UIおよびUXデザイナーは、よりグローバルに考え始める必要があります。欧米以外のユーザーを念頭に置いてUIを概念化する必要があります。

また、タミル語、タイ語、クメール語、ラオ語などの言語は、特にデバイスインターフェースをサポートするフォントも求められています。ラテン語だけを念頭に置いて設計されたUIで、タイ語のような書記体系をあらかじめ定義されたスペースに合うフォントとしてあてはめようと想像してみてください。とても縦長になります。

デザイナーができることはタイプをずっと小さくして独自のアクセシビリティ問題を作り出すか、もしくは一貫性がなく失礼で明らかに受け入れられない、ばらばらした書記体系にするかのどちらかです。デザイナーは自分の仕事を再考し、よりグローバルな視点からデザインにアプローチする必要があります。

ABBのタイププロジェクトは、複数の書記体系をサポートしなければならなかった

タイポグラフィとアクセシビリティの関係

──アクセシビリティと言えば、デザインとタイポグラフィについてどうお考えですか?

デザインをより持続可能かつアクセスしやすくするために、わずかな変更を加えるだけです。それはユーザーと目的についてです。でもまずは、すべての人のニーズを満たす1つの解決策は生み出せないと認識する必要があります。

タイポグラフィの寿命を延ばし、製品をよりアクセスしやすくするための微調整を行うことで、ユーザーの製品の使用と楽しみを増すことができます。

しかし、デザイナーにすべきこととすべきでないことを教える必要があります。そうするとデザイナーは進捗方法とデザイン構築に関する情報に基づいた決定ができます。

タイポグラフィは、物理的なアクセシビリティ感情的なアクセシビリティ技術的なアクセシビリティという3つのタイプのアクセシビリティに注意する必要があります。

たとえば、視覚障害や聴覚障害のある人のアクセシビリティをどのように改善できるかはおそらく明らかですが、他の障害が求めることはそれほど明らかではありません。発達障害の方は自分の感情の激しさや日々の状況に対処するのに苦労しています。このような読者にとっては、差し障りのないファンキーな文字や珍しい文字の形が気を散らす可能性があります。良いタイポグラフィと書体の選択は、こうした状況で大きな違いを生むことができます。

アクセシブルな書体により、誰もが書体があることに気付かずに、それぞれの最大限の能力で情報にアクセスできます。しかし広告では読むことがしばしば、感情が引き起こす誘惑になります。広告のアクセシビリティの目標は、意図的に読者の注意をそらし広告のメッセージに注意を向けることです。

あらゆる種類のアクセシビリティには異なる要件があるため、デザイナーは設計する際、ユーザーに留意する必要があります。

BBCのタイププロジェクトでは、品質・アクセシビリティ・多様性を視覚的に伝えることを焦点とした

デザイナーが正しいフォントを選ぶには

──では、デザイナーはどのようにして正しいフォントを選択すれば良いでしょうか?

優れたデザイナーは、常にユーザーの立場になります。もし65歳以上のユーザーを抱えるUIデザイナーの場合、彼らの視力が損なわれる可能性が高いことを考慮する必要があります。ですので、明るいフォントや小さいフォントは見づらいので使用しないでください。この場合、広がりがあってリズム感のある大きなフォントが最善の解決策です。

デザイナーはいつもユーザーのことを考え、そしてあなたが届けている情報を受け取る手助けを考える必要があります

デザイナーの選択は科学によって検証できるようになりました。タイポグラフィを学ぶ人はグーテンベルクの時代から経験を積み多くのことを観察してきましたが、最近まで客観的にそのポイントを検証したり議論したりすることはできませんでした。しかし最近では、科学的な証拠を用いて良いタイポグラフィに対する議論の裏付けをとることができます。たとえば、最適な一文の長さは55〜65文字です。その理由は目と脳の働きによるものです。

私たちは読むとき、脳は目を滑らかに動かすのではなく跳躍性をもったリズムで動かします。1回の跳躍で8文字を認識し、早く快適に目を動かすには物理的制限があり読むときは約7〜8回の跳躍に制限します。計算すると、約55〜65文字ですね。約500年にわたって試行錯誤を繰り返し確立したことで、科学はその理由を説明できるようになりました。

良い本を紹介しましょう。脳神経科学者のS. Dehaene教授の『Reading in the Brain』という本です。この本では人間がどのように数字を処理するかについて書かれています。

Airbnbの世界観・機能・規模に添うように作られたユニークな書体の例

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この記事は北欧のデザインカンファレンス「Design Matters」で過去に登壇されたスピーカーに実施したインタビューです。毎年コペンハーゲンで1,000人規模で行われているDesign Mattersですが、来月2020年1月29日~30日に日本での初開催を控えています。

Pop-up in TokyoではSlackやFigma、VolvoやBBCなど、グローバルで活躍するデザイナーが集結します(当記事のBruno Maag氏は登壇いたしません)。当日は同時通訳の提供もありますので、興味ある方はぜひご来場ください。

Design Matters Pop-up in Tokyo 詳細はこちら


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