2020/1/27更新
これまで私はユーザーインタビューに関するいろいろな記事を読みましたが、そのほとんどが通常では考えられないような多くの時間と費用がかかる、恐ろしくやる気を削ぐような記事ばかりでした。ですから、この記事ではより実用的なアプローチを採用したいと思います。
ユーザーインタビューの話を始める前に、私の大好きな「自分語り」をさせてください。
私についての事実を6つお伝えしたいと思います。
- 私は47歳です。
- 最高に魅力的な妻と結婚して21年になります。
- 16歳の息子がいます。
- デジタル業界で23年間働いています。
- そのうち13年間は自分でデジタル広告代理店を立ち上げて経営していました。
- 現在はフリーのコンサルタントとして働いています。
さて、これらの事実を知ったことで、私の人となりがわかったと感じますか? もちろんわからないでしょう。
このリストが2倍、あるいは10倍だったとしても、私のことがわかるわけではありません。私の著書と14年におよぶブログ記事をすべて読んだとしてもまだわからないでしょう。その人と接することなしに、誰かを知るということは難しいのです。
共に時間を過ごすことによってのみ、その人を理解することができ、その人を理解をして初めてその人にどのように行動を促すかを考えることができるのです。
書いてある事実を読むということは、人々と接することとは同じではないのです。だからこそ自分が対象としている人々と直に会う必要があるのです。共に時間を過ごすことによってのみその人を理解することができ、その人を理解をして初めてその人にどのように行動を促すかを考えることができるのです。
そのいずれもレポートを読むことでは達することができないのです。あまりにも多くの企業がサードパーティーのユーザーリサーチ業者に頼っています。もちろんそのメリットもありますが、ユーザーに直接会わない言いわけにするべきではありません。
では、ユーザーとなんらかのコンタクトを持つステークホルダーがほとんどいないのはなぜでしょうか。デザイナーやデベロッパー、マーケター、経営者、プロダクトオーナーといった人々が、対象となる人々と決して交わろうとしてこなかったのはなぜなのでしょうか。
英国政府のデジタルサービスは、ステークホルダーがプロジェクトに参画するためには、プロジェクトの最後の6週間のうち最低2時間はユーザーとコンタクトすべきであるとしています
英国政府の場合は違います。英国政府におけるデジタルサービスはユーザーリサーチを非常に重視しており、ステークホルダーがプロジェクトに参画するためには、プロジェクトの最後の6週間のうち最低2時間はユーザーとコンタクトすべきであるとしています。
同様に、ユーザビリティのエキスパートであるSteve Krug氏も彼の著書『Rocket Surgery Made Easy』の中で、ユーザーとのユーザビリティテストを毎月継続して実施することを提唱しています。
たった1回のユーザーインタビューでさえ、あなたのユーザーに対する理解を深め、あなたが関係者に行動を促すだけの動機を得るのに十分なのです。
では、どのように始めればよいでしょうか。
インタビューする際はユーザーのところへ出向くことを考える
対象ユーザーの職場や家に訪問することをおすすめします。個人的な経験から、こうして行うインタビューが効果的であると言えます。
少し手間ではありますが、対象ユーザーの職場や家を訪問することをおすすめします。個人的な経験から、こうして行うインタビューが効果的です。
私がこのことを初めて実践したのは、あるECサイトをつくっているときでした。クライアントは私に、直接ユーザーに会うべきだと主張しましたが、私はこれに懐疑的で、そんなことをしなくても十分なユーザーリサーチができていると考えていました。
約束した時間に、最初のリサーチ対象者の家を訪れました。彼女がドアを開けると、2匹のネコがすぐさま飛び出てきて、そのうち1匹が行きがけに私の足にすり寄ってきました。
実を言うと、このかわいらしい女性と会って彼女の家に入った瞬間、Simpsonsのキャットレディを思い出しました。実際のところ、彼女は全部で9匹のネコを飼っていたことがわかりました。
彼女の家の中はネコとの思い出で埋め尽くされていました。ソファに座ると、1匹のネコが私になでられようと膝に飛び乗ってきました。
しばらくおしゃべりしたあと、私は彼女がECサイトをどう思うかテストしてほしいと頼みました。彼女は私を書斎に招き入れ、いままでみたことのないほど古いデスクトップPCの前に座りました。デスクトップPCが置かれていた机もまた、ネコグッズで埋まっていました。
実際、彼女の机はマウスを動かすスペースがないほどネコグッズで埋め尽くされていたので、彼女は何度もものを動かしてスペースをつくらなければなりませんでした。
彼女が座るとすぐに、1匹のネコが注意を引こうと膝に飛び乗りました。事実、そのネコはしつこく気を引こうとするあまりに、テストの途中で彼女のタイプを邪魔しようとキーボードによじ登ったのです。
私はこの最初のセッションで、貴重なことを学びました。私たちは自分たちのWebサイトをみて、シンプルで使いやすいと思っていましたが、現実の世界においては、人々はさまざまなものに気が散り、最適な状況が整ってはいるわけではありません。私たちはユーザーの注意を全面的に引くことができると考えてはならないのです。このことは、認知負荷についての私の記事で取り上げています。
このような教訓は、調査やレポート、あるいはオフィスにいながら彼女と電話で話したとしても得られなかったでしょう。彼女の家に行ったことで初めて、ペルソナとリサーチの背後にある生身の人間を目にすることができたのです。
さらに、彼女はその日にあったリサーチ対象者6人の最初に1人に過ぎず、どの対象者も目をみはるような被験者でした。これまでやってきた過去のリサーチ以上のことを、その日1日で学ぶことができたのです。
もちろん、このような現地訪問は時間がかかりますが、間違いなく時間をかける価値があります。たとえもし一度しかできないのだとしても、やってみることを強くおすすめします。私はまる1日をかけてこれを行い、結果として自分のプロジェクトに対するアプローチを変えることができたのです。
リモートのインタビューで直接のインタビューを補完する
しかし、あなたはたぶん6人だけではなくもっと多くの人と話したいと思うでしょう。6人では全体を代表しているとは言えず、もっと多くの人と話すべきだと感じるかもしれません。
確かにその考えは正しいです。まるまる1日をかけて6人と対話しても、対象ユーザーの全体像を得ることはできないでしょう。しかし、これが大事な初めの一歩なのです。あとは調査によって補完できるのです。
あなたが出向く代わりにユーザーに来てもらうように頼むこともできます。そうすればユーザーを訪問する時間を節約できます。しかしながら、あなたが忙しい人をターゲットとしている場合は特にですが、参加できる人数は限られてしまうでしょう。正直なところ、今日では私たちのほとんどが忙しいのです。
ですから、サンプルのサイズを大きくしたいと思っていたり、あるいはなんらかの理由で直接会うことができないような人にアプローチしたい場合には、リモートのインタビューが有効な代替手段になります。
ただ電話をかけるだけでもリモートのインタビューには十分です。ですが、個人的にはSkypeやZoomなどを使ったビデオカンファレンスが好みです。
Zoomのようなツールを使えば被験者の顔がみえますし、画面を共有することもできるので、リモートのユーザーインタビューには申し分ありません。
電話に比べると信頼性の面で劣る場合もあるかもしれませんが、際立った利点が2つあります。まず、画面を共有できるので、Webサイトなどを一緒にみることができること。そして、私はこちらの方が重要だと思いますが、相手の顔がみえることです。驚くべきことに、彼らが実際に口にすることよりも、顔の表情の方がユーザーや彼らの考え方についてのたくさんの洞察を与えてくれることがしばしばあるのです。
ユーザーリサーチのためのビデオカンファレンスに特化したLookbackのようなツールもあります。しかし、こうしたツールはユーザビリティテストに特化してデザインされており、シンプルなインタビューには本当にオーバースペックなのです。
複数の人に同時にインタビューしない
ユーザーリサーチを対面で行うにせよ、リモートで行うにせよ、私としてはグループセッションではなく、原則として1対1で実施することを強くおすすめします。
ここ数年はフォーカスグループを用いることがポピュラーではありますが、誤った結論へと簡単にミスリードしうる重大な欠陥がいくつかあるからです。
フォーカスグループにおいては、会話をリードしている外交的な性格の人をみつけ出し、グループの他の人も彼らの延長としてみようとしてしまう傾向があります。結果として、外交的な人の意見が大半の人に共有されていると考えて、セッションを終了してしまうといったことが簡単におこります。
1対1のインタビューにはより時間がかかりますが、対象ユーザーについてのもっとよい洞察が得られるでしょう。
目的を持ってユーザーインタビューを行うこと
最終的にどのアプローチを採用するにせよ、インタビューを通してなにを学びたいかを明確にしておくことが成功の秘訣です。事実は、あなたの文脈(コンテキスト)によって決まるのです。しかしながら、スタート地点としてはカスタマージャーニーに注目するのがよいでしょう。
参加者に、あなたの会社との関わりについての彼らの経験を話してもらうことをおすすめします。
- そもそも、どのような課題や目的があって、会社と関わり始めたのか
- 最初はどうやって会社のことを知ったのか
- 会社の印象はどうだったか
- そのあと、なにをしたのか
- どのような疑問をもち、それをどうやって解決したのか
- あなたの事業との関わりには、他にどのようなステップがあったか
- そのプロセスについてどう感じたか
彼らのジャーニーについて話すことから始めることには、2つの理由があります。まず、彼らの意見ではなく体験に注目しているということです。人が言っていることとやっていることが違うということはよくあります。ジャーニーに注目することで、主観的な議論に陥ることなくユーザーに純粋に彼ら自身のストーリーを語ってもらうことができます。
次に、こちらの方が重要なのですが、彼らのジャーニーを理解することがコンバージョンを改善させるのに非常に重要だからです。
ユーザーインタビューにベストプラクティスは無い
私は、この記事で紹介したアプローチがベストプラクティスではないとわかっています。これは簡略版であり、やるべきことを減らしています。しかし、私は現実主義者です。私たちの多くは、GoogleやFacebookのような会社が実施しているようなユーザーインタビューを実施する時間も力も無いということはわかっています。
しかしこの記事で紹介したアプローチは、特に訓練をしなくても予算も時間もかけずに誰にでも実施できるでしょう。私の個人的な意見ですが、ユーザーとの関わり(インタラクション表記ルール)はたとえほんの少ししか持てなかったとしても、持たないよりは持った方が絶対よいでしょう。