デザインスクールを卒業したばかりのときは、可能性が無限にあるように思えます。
同時に新人のデザイナーには、注意を怠ると嵌ってしまうような罠がたくさんあります。ちょうど新しいクリエイターたちが学業を修了するタイミングなので、私たちはこの機会に、世界中のデザイナーが最初の仕事から何を学んだのか調査しました。もちろん経験は個々人によって異なりますが、経験豊かなデザイナーから学ぶことで、次世代のデザイナーたちは落とし穴を避けることができ、基礎を固めた上でキャリアを始められるでしょう。
この記事ではデザイナーたちが語ってくれた自身の知見や、若いデザイナーへのアドバイスを、5つの項目に分けてご紹介します。
1. 最初の仕事を注意深く選ぶ
学校を卒業してすぐの頃は、最初にもらったオファーに飛びつきたくなるでしょう。早く自分のキャリアを始めたいと切望していますし、学生時代に経験したことがないような報酬も得られるからです。
しかし、それは本当に自分がすべき仕事でしょうか? テクノロジーに特化した企業は特に、多くの会社が自分たちの「風土」について語っているはずです。たとえば、木曜日の短時間勤務や、四半期に一度の社員旅行を提示されるでしょう。楽しそうに聞こえるかもしれませんが、チームはどんな雰囲気なのか、仕事上で期待できることは何なのかを知るために、適切な質問をしなければなりません。プロジェクトに圧倒されたり、細かく管理しすぎる上司がいたりするのであれば、会社が提示した特典は大して重要ではないかもしれません。
加えて、学生からフルタイムの正社員になるのは簡単なことではありません。新しい生活や仕事、責任に慣れるには時間がかかります。 Swell Creative Mediaの創業者であるAlexa Westerfield氏は次のように述べています。
「学校は最初のキャリアで任される仕事と同じような課題を用意してはくれません。したがって、自分で学習する意欲を持ちながら、新人に課される退屈な仕事をこなすために多くの時間をかけなければなりません。」
NVS DesignのCEOであるChad Brittian氏もWesterfield氏の経験に同意し、自身の最初のデザインの仕事について次のように説明しています。
「私は学校の教室に比べて、現実の社会がどれだけややこしく、正直に言えば馬鹿げているのかを知りました。また、デザインは主観的なものなので、たとえ自分が受け入れられない批評だとしても受け入れるようにするべきだと気づきました。こうした経験は、間違いなくデザイナーとして成長するために役に立ちます。当時はそれがどれだけ貴重なのかわかっていなかったのです。」
新人デザイナーにとって、成長はきわめて重要であり、そのための試練は簡単なものではありません。
2. すべてのスキルが上達するわけではない
新たな分野や仕事を始めると、長い学習曲線を辿ることになります。前節でWesterfield氏が説明していたように、学校はただ教えてくれるだけの場所です。自分のスキルを見極める前に、職場で新しいスタイルやタスクを経験する必要があります。また、自分は何が不得意なのか知ることも、プロセスの中で間違いなくあるでしょう。
Westerfield氏は自身の最初の仕事について次のように述べています。
「私はデザインを制作する過程で、自分の強みと弱みを自覚しました。それらを完全に理解するには、時間がかかりました。たとえば、私は制作作業やタイプセットが得意ではありませんでしたが、クリエイティブなロゴやレイアウトは得意でした。」
最初の仕事には良い面も悪い面もあるでしょうが、すべてが学習のプロセスです。視野を広く持ちながらデザイナーのキャリアを始めることで、今後の成長に役立つでしょう。
3. 客観的な視点で考える
最初のデザインの仕事はきわめて重要だと考えてしまいがちです。しかし留意すべきこととして、最初の仕事は、これから経験するたくさんの仕事の一つに過ぎません。Westerfield氏は次のように述べています。
「これは最初のステップでしかないと肝に銘じましょう。自分のポートフォリオを充実させるための個人的なプロジェクトでもいいので、ほかの仕事もこなし続けてください。」
特に最初のうちは、すべての仕事が自分の希望と完全に合致するわけではありませんし、自分の希望は変わり続けるものです。したがって、最初の仕事から学びたいものを書き出して、その中でもっとも重要な学びが得られる仕事を引き受けましょう。自分の趣味や、フリーランスの仕事でさえも、自分のスキルを磨けるものを選べば、補完財となるでしょう(この記事でフリーランスデザイナーに必須なアプリを紹介しています)。ただし、副業に心血を注ぐ必要はありません。
4. つねに謙虚に学び続ける
専門家になるには10,000時間の仕事と集中の経験が必要だというMalcom Gladwell氏の法則を信じるかどうかはさておき、デザイナーが自分のデザインセンスを磨くには、長い時間が必要になることは確実でしょう。そして最初の仕事は、このような学習の機会を多分に与えてくれるはずです。
新人のうちは上司のコーヒーを買ってくる役割が回ってくることもあるでしょうが、最初のうちはそういったこともあるでしょう。ただ、そんな新人のあなたもまた、デザインを制作する側に立っていることも忘れないでください。新人の立場のあなたに、上司が直接的にデザインに関係する仕事を頼まなかったとしても、興味を惹かれるプロジェクトがあった場合は、自分から申し出ましょう。そして、より正式に、自分が身に付けたいスキルや学びたいプログラムについて上司と話し合ってください。上司があなたの目標、興味を認識していれば、キャリアに役立つようなプロジェクトや会議に呼んでもらえるでしょう。
最初の仕事は学習の期間です。この学習は、学校で勉強していた際の体験とはまったく異なります。ProFile Sports LLCやProFile Sports.TVのCEOであるDiana Wilson氏は、新人デザイナーに次のような期待を寄せます。
「本気で取り組み、自分のスキルを磨く時間と努力を惜しまないでください。なぜなら、芸術学校やデザインスクールを卒業した学歴は、何の意味も持たないからです。新人はまだ準備ができていません。現実の世界で、現実のクライアントのために働いて、初めて本当の教育が始まるのです。デザイン賞の表彰式に出向き、この業界で才能を持っているのは誰か、優れたクライアントを抱えているのは誰か学んでください。大事なことは、親切で謙虚であることです。」
Brittan氏は自身の最初の仕事について次のように答えました。
「最初は身動きが取れず、しかるべき挑戦ができていないのではないかと感じることもありました。しかし、あとから考えると、私はただ、自分の成長の邪魔になるような、眼前の面白そうなプロジェクトに気をとられていただけでした。私は最初からいくらか重要なスキルを持っていたものの、キャリアを通してさらに大きく成長しました。キャリアを重ねるにつれて気づいたのことは、立派でなく、面白味のないプロジェクトであっても、それらは優れたデザイナーになるために必要な要素を教えてくれるということです。デザイナーとして成長すればするほど、自分の期待するプロジェクトを選べるようになるでしょう。」
Brittian氏は、自分がもっとも必要なスキルを獲得するにあたって、必ずしもプロジェクトを選ぶ必要はないと断言しています。新卒のデザイナーは、キャリアの最初からすぐに大きなインパクトを与えたいと思うでしょうが、最初の段階で重要なのは、将来の成功のために基本的なスキルを身に着けることです。
5. 他のデザイナーから学ぶ
最初の仕事で、運良く真剣に助言をくれる上司に出会えるかもしれません。もし出会えなければ、AIGAのようなデザイン専門家の団体は数多くあるので、そこで指導してくれる人を見つけることもできるでしょう。また、相談役だけでなく、同じような立場の仲間にも助けてもらえるでしょう。彼らもさまざまな知識を持っています。Westerfield氏によれば、特に若いデザイナーに対して以下のように伝えています。
「直接であってもオンラインであっても、ほかのデザイナーと自分の経験を共有できるようなシステムを見つけ出すことが重要であり、可能ならば、相談役の上司を見つけるべきです。」
終わりに
最初のデザインの仕事は、神経をすり減らすような経験かもしれません。しかし、この記事で優れた専門家たちが教えてくれたように、そのような経験も成長のプロセスの一部なのです。未知の領域に飛び込み、可能な限り関わりを持ちましょう。職場でも自宅でもアイデアをぶつけ合えるようなデザイナーの仲間を持ちましょう。そうすれば、困難な最初の仕事を乗り越え、素晴らしいキャリアを始められるはずです。