独善的なデザイナーとの付き合い方とそうならないために

Andi Omtvedt

AndiはUXデザイナーです。20年以上、エンジニアとして様々な業界のシステムに携わった経験をもっています。

この記事はToptalからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

How to Manage a Design Diva (and Not Be One)

デザイン業界には多様なタイプの人たちが働いています。さまざまな理由からよく話題に上るのが、「デザインディーヴァ」とも揶揄される、独善的なデザイナーたちです。私たちはデザイナーなのですから、誰もが難しい状況での仕事を経験しているはずです。ですがそれでも、独善的なデザイナーはまったく別の問題をもたらすのです。

独善的なデザイナーとは

ディーヴァ(diva)の語源を考えると、デザインディーヴァという言葉が何となく生まれたわけではないことがわかります。

19世紀後半に英語に入ってきたdivaという言葉は、「女神」を意味するイタリア語の名詞divaに由来しています。男性の場合をあらわすdivoという言葉もありますが、これは有名な男性歌手を表すために使われています。divaがプリマドンナや有名な女性歌手をあらわすために使われるのと同じです。

デザインディーヴァは、デザインチームに独特の緊張感をもたらします。

独善的なデザイナーはどこでも注意を引きますが多くの場合は他人を犠牲にします。彼らは自分に過剰な自信をもっていて、自分の作品、アイデア、あるいは努力が他人より優れていると信じきっている傾向があります。一緒に仕事をするのは難しいですし、大抵の場合、クライアントの優先事項やユーザーのニーズを中心に考えていません。

独善的なデザイナーの反対は、チームやクライアントと協力して仕事を進めることができるデザイナーです。

独善的なデザイナーの見分け方

デザイナーが独善的なのかどうか見分けるためには、ポイントを抑えたいくつかの質問があります。

  • クライアント自身よりもクライアントのビジネスニーズについてよく理解しているように振る舞いますか?
  • そのデザイナーにとって制作したデザインが自分のポートフォリオにふさわしいことのほうが重要ですか?
  • クライアントからのフィードバックをデザインについて無知である、または知識不足なものとして却下していますか?
  • デザインの決断について理由を説明するときに、他人を見下すような調子で、意味が不明瞭で、やたら難しい専門用語を使いますか?
  • ソリューションについて議論するとき、自分が最初に喋りたがりますか?
  • クライアントが満足していない場合に、デザインの修正を受け入れたり、やり直したりすることに頑固な態度をとりますか?

これら質問のうち3つ以上が当てはまるようであれば、そのデザイナーは独善的である可能性が高いです。

独善的なデザイナーは、意味が不明瞭でやたら難しい言葉を使い、真っ先に喋りたがり、周囲からのフィードバックを聞き入れないので、見分けるのは簡単です。

独善的なデザイナーとうまく付き合う方法

独善的なデザイナーと同じチームに入ってしまった場合、問題が起こることは容易に想像できるでしょう。チームに余計な緊張感が生まれて、結果としてデザインにも悪影響がおよぶ可能性があります。

もっとも簡単なソリューションはそのプロジェクトから独善的なデザイナーをはずすことですが、時間やリソースの制約からこれは不可能でしょう。

ここでは、独善的なデザイナーをはずすことはできないという前提で考えられる、いくつかの代替策を紹介します。

チームワークの重要性を強調する

たった独りでプロダクトをデザインし構築する人はいません。チームにいるデザイナー全員に重要な役割があり、望ましい結果を達成するためにお互いを必要としているのです。

各メンバーの役割と責任を明確に定義すれば、独善的なデザイナーも自分が必要とされ、重要な存在であることを感じてくれるきっかけを与えることができます。

独善的なデザイナーと良好な関係を築くためにできることの一つは、チームワークを重視し各メンバーの役割を明確に定義することです。

権威を振りかざさないようにする

独善的なデザイナーは、上から言われたことに対してネガティブな反応を示す反抗的な性格だったり、あるいは自己中心的な性格のタイプである場合もあります。このようなタイプの人たちに対して、言うことを聞くように強く出たとしても状況は悪くなるばかりです。

権威を前面に押し出した管理によってコントロールしようとするのではなく、独善的なデザイナーがそのように振る舞っている理由を突き止める方がよいでしょう。

たとえばこのような根本的な原因があるかもしれません。

  • 働いている環境に十分なチームワークや協力体制がない
  • チームの中で、建設的なフィードバックがなされていない
  • デザインについてのアイデアが理由もなく無視されたり、拒絶されたりする
  • メンバー全員が公平に扱われていない
  • チーム内のコミュニケーションが少ない、または過度に慎重である

この中の1つ以上が当てはまるならば、すぐに行動を起こして根本原因を突き止め、解決するために動くべきです。コミュニケーションのチャネルをつくり仕組みを整えるだけでも、チーム内の緊張はずいぶんと緩和されるものです。

周りから情報を集めることを促す

デザイナーではなくともクライアントや同僚は、それぞれの専門分野についての知識の宝庫です。知識を共有することはまた、独善的なデザイナーが大事にしているエンパワーメントをつくり出します。独善的なデザイナーは、人から情報を集めること、そして他人の専門知識から学びを得ることにもっと時間を使えば、デザインのために使える有用な武器を手に入れるかもしれません。

もし独善的なデザイナーがチーム内での知識を集める方法について指導を必要としている場合、情報を共有することでチームが得られるものの重要性と価値を時間をかけて証明していきましょう。

タスクに集中させる

デザインプロジェクトの目的の多くは、ビジネス上の問題を解決することです。ユーザーストーリーや個別の機能要件を介して、問題を一つずつ解決していくデザイン業務に集中させることで、独善的なデザイナーも自分に割り当てられたタスクに集中する必要があることに気づくでしょう。

特定のタスクに集中させない場合、独善的なデザイナーは無関係なアイデアの方に走ってしまったり、独自のプロジェクトに没頭してしまったりします。プロジェクトを成功させるためにはメンバーすべての力が必要なのですから、一人がそんなことになってしまったらプロジェクト全体がリスクにさらされてしまうでしょう。

互いを尊重し、アイデアをシェアするカルチャーをつくる

会社やプロダクトチームにアイデアを共有しやすいカルチャー、個々の貢献に対して敬意を払うカルチャーがない場合、デザイナーは独善的なデザイナーのようになってしまうこともあります。

もしそのような状況があったらリーダーはなにが起こっているのかを認識し、デザイナーが置かれている状況に対して共感する必要があります。誰であっても自分がしている努力を認めてもらい、感謝してもらうことを望んでいるのです。

互いを尊重し、アイデアをシェアするカルチャーがあれば、独善的なデザイナーがチームの動きを乱すような機会そのものが減りますから、結果としてチームワークが向上します。

デザイナーの良し悪しに関わらず、自分の考えや貢献が評価されたと感じることができ、その仕事が敬意をもって認められると、チームのカルチャーは自然とよい方向に変わっていくでしょう。

独善的なデザイナーにならないために

聞く技術

人間には耳が2つに対して口は1つであるため、それぞれを使う割合も2:1であるべきだと言われています。このことはデザインについての専門知識を求めているクライアントと密接に関わって働くときに特に当てはまります。

クライアントは自分たちが直面している課題、懸念事項、それから既知の問題について話します。彼らの話の要点を聞いて、自分の中で論理的に解釈し、問題に対するソリューションをクライアントが理解できる言葉で提案することは、聞く技術のトレーニングになります。

全体像を捉える

進めているデザインがどうすればUXやクライアントのビジネス上の課題に役立つかということよりも、自分のポートフォリオに入れたときにどう見えるかということを気にしているデザイナーと仕事をした経験はあると思います。クライアントがそのことに気づいたとき、そのようなデザイナーは仕事を失うでしょう。

デザイナーなら誰もが、自分の最高傑作を見せたいと望むものです。ポートフォリオは自分の達成感を強めるものですし、より大きく挑戦的なプロジェクトへの道が開けることも多いでしょう。

しかし、プロジェクトの目指す結果から自分の個人的な成果にフォーカスが移ってしまうことは危険です。そうなってしまったら、デザイナーは独善的なデザイナーという不名誉な名声を高めてしまいかねません。

作家のSimon Sinek氏は全体像を捉え、「WHY(なぜ)から始めよう」と言っています。デザイン業務でもこのアプローチを採用すれば、デザイナーはプロジェクトの細部にもっと注意を払うようになり、多くの場合、個人的な成果に傾く傾向を抑える効果があるでしょう。

評判に気を配る

クライアントがデザイナーを探すときには、かつてのクライアントに対して推薦とフィードバックを求めることがよくあるため、独善的なデザイナーだという評判が一度立ってしまうと、そのデザイナーは仕事を探すことが難しくなります。

そうならないためには、クライアントを成功に導くと同時に、ユーザーが目標を達成することを手助けできるデザイナーなのだという評判をつくるべきです。協力的なデザイナーならば、クライアントから声をかけられる機会が多くなり、さらに仕事を頼まれるようになるでしょう。

自分自身を変え、働く環境を変える

会社のカルチャーや経営陣がデザイナーの貢献を十分に認めてくれない場合、一部の人は、自分にふさわしいと感じる注目を得るための努力によって対応することがあります。

残念ながらこの種の注意を引こうとする行動は気づかれずに終わる可能性があり、デザイナーはさらに懸命に試みます。その先に待っているのは独善的なデザイナーへの道です。

働いている環境に問題がある場合、独善的なデザイナーにならずに済むようにするためには3つの明快な選択肢があります。

  • 長続きしないでしょうが、悪い状況に耐え忍ぶ
  • 言うほど簡単ではありませんが、違う勤め先を探す
  • 「あなたが望むように世界を変えるために、まずはあなたが変わりなさい」(―Mahatma Gandhi)

チームとして賢明な原則を適用することで、機能不全のチームを機能的なものに変えることに役立つはずです。

3番目のオプションが最良の結果をもたらします。

デザインの仕事の中でリーダーを務めていようと、一番の若手だろうと、自分が扱われたいように他人を扱うことで、物事をより簡単にすることができます。

たとえ独善的なデザイナーであっても、親切にしてくれた人に対してネガティブな反応を示すことは難しいです。

では、そのように自分を変化させるためのヒントをいくつか紹介します。

  • チームメイトとアイデアをシェアしながら共同作業することで、共有と共同作業を自ら奨励する
  • デザインの仕事に対してメンバーにフィードバックを求めて、リーダーと各メンバーを尊重した上で、フィードバックを真剣に受け取める
  • 他のメンバーに問題解決のためのアイデアを出してもらうように頼み、新たなデザイン業務に活用することでフォローアップする。これにより、出してもらったアイデアを評価していることを示すことができる
  • 認めるべきときは認める。誰かがソリューションに対して、あるいはデザインの問題についての指針に対して貢献した場合は、きちんとその貢献を認める

まとめ

デザイナーである以上、私たちは日々の仕事の中でさまざまな問題に直面します。だからこそ協力し合うこと、仕事の価値を認め合うこと、アイデアを共有することが奨励されるような環境をつくり上げることがなにより重要なのです。

独善的なデザイナーに遭遇すること、あるいは自分自身の行いによってそう呼ばれそうになることもあります。こうした性格上の特徴は厄介ですし、時には緊張や葛藤が生じるため、チームでの活動は難しく、苦痛をもたらすものでさえあります。その場合は、組織内で試行された信頼のおける原則に従うことでうまく乗り切ることができるでしょう。

こうした原則がうまく適用されれば、クライアントの成果が向上し、チームが強化され、そしてカルチャーが改善されていくことでしょう。


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