変わり続けるプロジェクトの優先順位に終止符を

Paul Boag

PaulはUXコンサルタントであり、デジタルトランスフォーメーションの専門家です。

この記事はboagworldからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

How to End the Pain of Shifting Project Priorities

私が出会う内製のデジタルチームの多くはプロジェクトの優先順位をコロコロと変えることで、まるでいつも消火活動に当たっているかのように忙しくしています。こんな状態ではいけませんので、その解決法をお教えしたいと思います。

このような問題は誰もが経験したことがあると思います。チームが急遽今週やらねばならなくなった仕事や、プロジェクト以外の仕事はすべて放っておけと主張するようなシニアマネージャーなど…。

プロジェクトの優先順位は、いちばん声が大きい人の意見か、早い者勝ちで決まってしまいます。そうなるとビジネスにとってなにが最適かということはほとんど考慮されないので、チームがどのようなプロジェクトに取り組んでいるとしても、成功の見込みすら立たないでしょう。

もちろん、デジタルチームに必要な仕事をすべてこなせる十分な人数がいれば問題にはならないでしょうが、そんなことはまずありません。やらなければならない仕事はいつもたまっているものです。

要請に応えるためにデジタルチームの規模を拡大する、というのがわかりきった解決策のように思えますが、そのわかりきったことが、多くの組織ではできていないのです。そこで次の策は、差し迫った仕事の優先順位を上げることです。私はこの問題を、「デジタルトリアージ」と呼ぶ手法で解決しました。

デジタルトリアージ:プロジェクトの優先順位をうまく決めるために

野戦病院をテーマにしたTVシリーズである「M.A.S.H」や、ERを扱ったドキュメンタリーを観たことがある人なら、「トリアージ」のことを知っているでしょう。医療現場では、患者が運ばれてくると医者がその重症度を判断します。より重症であるほど迅速な処置が必要だからです。人の生死に関わる場合は、早い者勝ちで治療することがつねにベストなわけではありません。

災害の現場に到着した医師が教えられることは、助けを求めて泣き叫んでいる患者を優先してはいけないということです。声を出せているのであれば、ただちに注意を向ける必要はありません。

優先順位をつけるにあたって、私たちはここから多くのことを学ぶことができます。

まず、プロジェクトを進めるに当たっては早い者勝ちで考えてはいけないということです。そうではなく、組織の存亡に関わるような「致命的な」プロジェクトを優先すべきなのです。

次に、もっとも声の大きい人たちが主張しているからといって、そのプロジェクトが重要だと考えてはならないということです。彼らが騒いでいるからといって、必ず至急の案件である、ということではありません。

救急救命の医師のように、私たちは患者をもっと客観的にみて優先順位を付けなければならないのです。これこそが、デジタルトリアージです。

デジタルトリアージによる優先順位の付け方

最初に言っておきたいのは、デジタルトリアージは、各「チーム」が一度に一つの仕事だけに取り組むべきだという前提のもとにつくられたということです。タスク間を行ったり来たりすることは、生産性と長期的な機動性を著しく損ないます。

会社がいくつのチームを同時に走らせるかは、利用可能なリソースによって決まってしまう場合がほとんどでしょうが、私がよくおすすめするのは最低限、デジタルチームを2つに分割することです。一方のグループはより小規模な、サポート的な仕事に集中し、もう一方のグループはより大規模で長期的なプロジェクトを担当するのです。

ほとんどのデジタルチームは2つのワークストリームに分割すべきだと思っています。一方がサポートに集中し、もう一方がより大規模な、将来につながるプロジェクトを担当するのです。

どちらのチームにも、やるべき仕事の「山」ができます。徐々に優先順位をつけたリストができあがってきます。

その山にある仕事は、ポイント制によって優先順位が付けられます。さまざまな基準でポイントを付与し、タスクがもっている総ポイント数によって順位が決まるのです。

デジタルトリアージはポイント制によって優先順位を決定します。

1. ポイントを付ける基準を決める

なにを基準にするかは会社によって異なるでしょうが、私がよく使うのは次のようなものです。

  • ビジネスの目的:その仕事は会社の第一のビジネス目標に必要なものなのか、あるいは副次的な目標に寄与するものなのか。
  • ユーザーグループ:最重要のユーザーグループに寄与するものなのか、次点のユーザーグループに寄与するものなのか。
  • ユーザーニーズ: ユーザーにとって重要な機能に関わる仕事なのか、あまり考慮しなくてもよい機能についての仕事なのか。
  • 難易度:その仕事を完成させるのはどれほど難しいのか。膨大な作業が必要なのか。

私が選んでいる基準のバランスに注目してください。ビジネスの目的と難易度はビジネス上の観点であり、他の2つはユーザーのことを考えたものです。私がみたところ、ほとんどの会社はビジネスのニーズに偏っており、ユーザー中心の基準が欠けているようです。

もちろん、これをうまく回すためには、会社にはいくらかの優先順位づけが求められるでしょう。たとえば、デジタルチャネルについて考える場合は、しっかりと定義されて、優先順位が付けられたリストについての合意が必要となります。

ユーザーグループに関しても同じことが必要になります。たとえばそれは主要なオーディエンスを決定することであり、それに従って優先順位を付けることです。

最終的には、それぞれのオーディエンスのグループにとって、もっとも優先順位の高いタスクを特定する必要があります。

2. ポイントを付ける

ここまで準備ができたら、それぞれのカテゴリにポイントを付けることができます。たとえば、もっとも重要なユーザーグループに5ポイント、次に重要なグループに4ポイントを付与するというような具合です。

難易度のようなカテゴリについてポイントを付与するのは難しいかもしれませんが、「簡単」から「難しい」までのシンプルな5段階だけでもあれば助かるはずです。

ビジネスの優先順位に合わせて、特定のカテゴリに重みを付けることもできます。たとえば、会社がUXを第一に考えているなら、ビジネスの目的よりもユーザーニーズにポイントの配分を多くすることで重みを付けることができます。

どのような基準、重み付けを使ったとしても、シンプルな数字で表された結果を得ることができます。このスコアによって、その仕事が「山」のどこに位置するものなのかが決まります。

新しい仕事が入ってきたら、その仕事は評価された上で山の中の適切な場所に差し込まれます。この結果、スコアが低い仕事の中には、ビジネスにとってより有益な仕事があとから入ってくることで、上位には上がってこない仕事も出てくるでしょう。

この事実を受け入れるには、多くの会社は考え方を大きく変えなければならないでしょう。日の目をみることがない仕事があるということは、不公平に思われるからです。しかしこうすることで、あまり重要でないアイデアを即座に却下しなくても、確実に取り除くことができるのです。

しかし、デジタルトリアージがこれまでの考え方と違う点は、これだけではありません。

デジタルトリアージの難しさ

締切にコミットしない

デジタルトリアージのもう一つの難しさは、仕事に当たるチームに特定の締切へのコミットをさせないということです。ほとんどの組織では、たとえばマーケティング部署のような他の部署のスケジュールに合わせることを期待していますから、これはこれまでの文化とは真逆のものでしょう。ですが私の経験では、これはやってみる価値のある変化です。なぜならこれによって、デジタルファーストの文化が促進されるからです。

ここでなにより重要なのは、プロジェクトの山を組織の誰もが視えるようにすることです。こうすることで、全員がいま起こっていること、これから起こることを知ることができます。計画を立てる上でも役に立ちますし、他のチームも、いつプロジェクトが始まるのかがわかります。

ポイントの付与について反論する人の存在

もちろん、自分のプロジェクトに付与されたポイントについて反論する人も出てくるでしょう。十分なポイントが付与されていないとか、自分たちのプロジェクトよりも優先されている案件に過大なポイントが付けられていると主張してくると思います。

そうした状況では、これらのいさかいを仲裁するための委員会のような集まりを設けることが有効です。ですが、委員会というのは何かを決断するまでにとても時間がかかるものなので、何でもかんでも口を出させないようにしたほうがいいでしょう。

「俺様」なマネージャー

最後に、突然現れてはあなたのポリシーや進め方を一切無視するようなシニアマネージャーがいると思います。彼らは権力を振りかざして、自分たちのプロジェクトを最上位にもってくるように迫るでしょう。

実際のところ、彼らの影響力が強大である場合、それを止めるためにできることはほとんどありません。しかし、彼らにもう一度考えてもらうことはできます。私のおすすめは、あなたのポイント制度のどこがまずいのかを、一緒に考えてもらうように頼むことです。その結果、彼らのプロジェクトはやはり最上位にあるべきであり、あなたのポイント制度に同意できないと信じているようであれば、それはすなわちポイント制度が経営陣の優先順位を反映していないということになります。

そうなれば、彼らマネジメントはポイント制度の改良をサポートし、組織としての優先順位に合わせるようにするか、自分たちの位置を考え直すかのどちらかを強いられます。いずれにしても、デジタルトリアージの順位自体が上書きされることはありません。

ですが、あなたが直面するもっとも深刻な課題は、ポイント制度を最初に立ち上げることでしょう。

会社にデジタルトリアージを導入する

実は、デジタルトリアージの取組を始めることは、あなたが考えるほど大変ではありません。なぜなら、公平で透明性がある原則、そして仕事の優先順位を付けるための一貫したアプローチに対して異を唱える人はほとんどいないからです。

実際、ほとんどの場合は1回のワークショップだけですべてが動き出すでしょう。

集めるべき人を集める

その秘訣は、集めるべき人を集め、最終的には完全なポイント制度をつくり上げることです。もちろん、これは言うほど簡単なことではありません。

まずは、可能な限り上席者を集める必要があります。影響力をもつ多くの人がデジタルトリアージを支持してくれればそのぶん、後々の反発が減ることを期待できるからです。ですが、そのような人たちのスケジュールを確保することは難しいこともあるでしょう。

1つ方法があるとしたら、すでにシニアマネジメントが集まっているミーティングのあとにワークショップを入れ込むことです。注意深く用意をしてきちんと話ができれば、同意を得るのには1時間で十分です。1時間程度であれば、他のミーティングにくっつけることも難しくないでしょう。

よくできたポイント制度を確立する

きちんとしたポイント制度をつくるということは少々厄介な仕事です。おそらくあなたは、2つの問題に直面するでしょう。1つは、ポイントの基準について合意を得ること。もう1つは、その基準の中の優先順位について合意を得ることです。

ビジネスの目的や導入コストを基準にするということについても抵抗はあるでしょうが、ユーザーグループやユーザーニーズについてはもっと反対が起こるでしょう。

それからもちろん、ビジネスの目的とユーザー目線のどちらを優先するのかということを決めてもらわなければなりません。まず間違いなく、相当な議論が起こります。

正直に言って、このような場合には外部の声を取り入れることが有効である場合が多いです。残念ですが、私のような外部のコンサルタントが言うことの方が、内部のスタッフの意見よりも真剣に聞いてもらえることが多いです。私があるアプローチを提案すると、人々は耳を傾けてくれます。本来あるべき姿ではありませんが、だからこそ私のような立ち位置の人間が多くのセッションをまとめているのです。

私に言えることは、何でもかんでも議論で解決しようとしてはいけないということです。セッションを議論の場とするのではなく、ワークショップの中の手続きとして進めましょう。たとえば、優先順位を決めるために満場一致を目指すよりも、ドット投票を使った方がよいです。

また、参加者には議論の出発点となるような例をいくつか与えましょう。この記事で紹介したような基準の例を示すか、あるいは彼らに検討してもらうために仮の優先順位を示すのです。あなたが示した提案に対して変更を加えるかもしれませんが、少なくともそれを足掛かりとすることになるので、彼らにゼロからアイデアを出してもらう場合と比べたら、得られる結果はずっと望ましいものになるでしょう。

このような仕事はたいへんな大仕事のように思えるでしょうが、私は自信をもって、これはやってみる価値がある仕事であると言えます。

デジタルトリアージのメリット

デジタルトリアージのメリットについてはおわかりいただけたと思います。1つのプロジェクトだけに集中することで生産性が向上しますし、しっかりした優先順位付けのルールがあれば、本当に必要な仕事を進めることができます。ですが、他にも考えもつかないようなメリットがあるのです。

多くのデジタルチームは、自分たちにとっての「クライアント」が不在なために、重要なプロジェクトに取り組む時間が作れないことを不満に思っています。たとえば多くのデジタルチームは、戦略的に考える機会や、デザインシステムのようなものをつくる機会がまったく無いと感じているのです。

このデジタルトリアージのモデルを使うと、あなた自身が大事だと思うプロジェクトも「山」のどこかに必ず入ります。自分のプロジェクトであっても、他のプロジェクトと同じように、優先順位をつけて評価してください。

デジタルトリアージは完全なものではありませんが、完全なアプローチなどそもそもありません。これを使えば、不平不満にうまく対処することができ、重要な仕事を優先することができるようになります。また、あなたはプロジェクトを評価する立場に立つことになり、プロセス全体をコントロールすることになります。さらに、その評価の基準をつくったのもあなたです。こうしたことは、少なくともあなたがプロジェクトをもっと細かく管理することに役立つはずです。


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