古いコンテンツをどう扱うべきか

Paul Boag

PaulはUXのデザイナーでありデジタルトランスフォーメーションの専門家です。彼はユーザー行動を促進するためのweb・ソーシャルメディア・モバイルの活用を、非営利団体やビジネス領域で支援しています。

この記事はboagworldからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Do You Know How to Deal With Legacy Content on Your Website?

どんな組織でも、初期にリリースされたまま放置されているコンテンツ(レガシーコンテンツ)の処理には戦略的に向き合う必要があります。ここで失敗をすると、ユーザー体験を損ねてしまいますし、多大な管理コストも掛かってしまいます。

忘れられがちですが、コンテンツ掲載がほぼ無料であることはWebの最も革新的な要素のひとつです。誰もが1セントもかけずにコンテンツを世に出せるのです。

不幸なことに、このWebの素晴らしさは同時に呪いでもあります。コンテンツへの集客が非常に大変なものになっているのです。しかし、ほとんどの団体が完全に見過ごしている隠れた問題がもうひとつあります。

投稿にかかる費用がほぼ無料であるために、私たちは気軽に投稿をしてしまいます。「なぜこれを投稿するのか? 誰の役に立つというのか?」と自問するべきところが、「なぜ投稿しないのか? 誰かしらの役に立つだろう。」という精神状態になるのです。

その影響力や長期的な管理について考えずにコンテンツを投稿すると、それ相応の報いがあるのです。

なぜレガシーコンテンツをリタイアさせる必要があるのか

レガシーコンテンツはふたつの意味で組織に負担をかけます。ひとつ目はユーザー体験を損ねること、ふたつ目は多大な運営コストがかかることです。

ユーザー体験を損ねる

認知負荷に関する投稿の中で説明したように、ユーザーがWebサイトを離脱するほどの負荷をかけるのは難しいことではありません。特に、懸念点や疑問に対する答えが見つからない場合のフラストレーションはその典型です。

あなたの商品やサービスに対する懸念点や疑問に対処することは、ユーザーにアクションを促すうえで基本と言えます。もしユーザーが答えを見つけられない場合は、不満を感じて離脱してしまいます。

コンテンツをサイトに追加するたびにユーザーの認知負荷も増加していき、欲しい答えにたどり着けない可能性が上がるのです。まるで干し草の山から1本の針を見つけるような作業です。

レガシーコンテンツはサイトの見栄えを損ない、ユーザー体験を煩雑なものにします。

たとえば、かつてmicrosoft.comが1,000万を超えるページ数を保有していたころ、300万ページ以上が誰も訪問しないページでした。その煩雑さのせいで、情報の探しやすさと同時に顧客満足度も損なわれていました。

レガシーコンテンツが増えると選択肢も増えます。ヒックの法則によると、選択肢の数と決断までに要する時間には正の相関関係があります。最悪の場合ユーザーは選択肢が多いことによるマヒ状態に陥り、選択自体を辞めてしまいます。

ヒックの法則は、ユーザーに提示する選択肢が多いほど決定までの時間が長くなり、サイトを離脱する可能性が上がることを示しています。

簡潔に言うと、コンテンツが多すぎるとあなたのビジネスのコンバージョン率が下がるリスクが発生するということです。

レガシーコンテンツの管理コスト

コンテンツが多すぎると管理コストもかかってきます。

Webに投稿されたコンテンツは放置しておくわけにはいきません。セキュリティの脅威や、(アクセシビリティや情報の古さといった観点で)コンプライアンスの問題にさらされるためです。内容の正確性や現在の掲載基準に沿っているかを確認するため、定期的にコンテンツの見直しをするのが理想です。

現実には、上記を実施する組織は当然稀です。投稿された後のコンテンツは、捨て置かれるものが多いのです。ほとんどの組織が内部で管理できる量をはるかに超えるコンテンツを投稿しています。不運なことに、この行為はコストがかかることなのです。

私はWebサイトのリデザインを試みている企業と仕事をする機会が定期的にあります。大規模な改修は、そのほとんどが良い判断とは言えませんが、大量のコンテンツが含まれる場合はさらにひどい事態になります。

コンテンツの移行は悪夢と化し、マークアップ言語に一貫性がなければグローバルデザイン言語の導入も極めて難しくなります。その結果、表層だけのリデザインに終わり、サイト深くまで入り込んだユーザーに待っているのは一貫性のない体験です。

社内にサイトを運営するチームがある組織においても、莫大な量のコンテンツによってサイトが拡張しすぎてしまうケースがよくあります。こういったチームは本来こなすべきコンテンツ最適化ではなく、重要性の低いコンテンツのメンテナンスにほとんどの時間を費やしてしまいます。

このような問題への解決策はいたってシンプルです。ほとんどの組織は、現在保有するコンテンツよりもはるかに少ない量のコンテンツがあればよいのです。

オンラインコンテンツの減らし方

オンラインコンテンツが多すぎるという前提のもとに立つと、次に考えるのは「どうやって減らすか?」でしょう。

選択肢1:コンテンツをはじめから見直す

ひとつ目の選択肢は、白紙の状態から始めるということです。どちらにせよリデザインを実施するつもりであれば不可能ではありません。現存のコンテンツの必要性を厳密に精査せずに移行することは理にかなっていません。コンテンツ問題に向き合わずにリデザインを実行することは、上辺を取り繕っているだけにほかなりません。

そうではなく、ユーザーのニーズを考え、必要な既存コンテンツだけを使うようにしましょう。

これはイギリス政府がGOV.UKサイトのベータ版を制作するとき、イギリスの政府デジタルサービスが使ったのと同じアプローチです。彼らは既存サイトのコンテンツを、「パスポートの紛失を報告したい」といったユーザーのニーズに読み替えました。そしてそれらが取り上げる価値のあるニーズか否かを、特定の評価基準に照らして判断していきました。彼らは自身で開発したNeedotronという小さなWebアプリでこのプロセスを実行しました。

選択肢2:ROTコンテンツを淘汰する

2番目の選択肢はROTコンテンツを取り除くことに注力する方法で、リデザインというよりも既存サイトのままの改善に向いていると言えます。ROTとは余剰(rebundant)、期限切れ(out-of-date)、取るに足らない(trivial)の頭文字です。

まずは余剰なコンテンツの削除からとりかかるのが良い選択です。終了して久しいキャンペーンや取り扱いを辞めた商品などに関係するコンテンツが典型的な例です。

こういったコンテンツの処理は簡単です。誰もたいして気にかけていませんので、リタイアさせることへの不満もそうないでしょう。

取るに足らないコンテンツの削除は賛否両論の可能性があるため、難しい問題かもしれません。あなたにとってさして重要でないものが、他のメンバーにとっては非常に重要なコンテンツかもしれないのです。

そのような場合、コンテンツを評価するための基準を定めるのが効果的でしょう。以下の要素の組み合わせとなるのが典型的です。

  • 分析
  • ユーザーのニーズ
  • ビジネス目標

たとえば、「一定のトラフィックを稼げないページを取るに足らないページとみなす」としてもよいでしょう。

どのビジネス目標の達成に寄与しているのかや、ユーザーにとって最重要課題を解決する助けになっているのかによってコンテンツをランク付けすることも有効でしょう。

どの評価基準を採用するかはあなたと関係者次第です。重要なことは、出来上がったポリシーが公平で偏りがないとみなされることです。それにより、取るに足らないコンテンツの削除に関する多くのいさかいは解決できるでしょう。

最後に期限切れのコンテンツですが、これは見つけるのが大変です。もう使えない電話番号や退職したスタッフに関する記載だったり、イベントカレンダーに埋もれている古いイベントや取り扱いがなくなった商品の記載があるものです。こういったコンテンツは深い階層や枝分かれしたセクションで見つかるものです。

デジタルチームがこうしたコンテンツを何週間もかけて探したとしても、見逃す可能性があるでしょう。そのため、別のアプローチが必要になります。

ニュースやイベントといった「時期」が重要なコンテンツは、一定期間が過ぎたらアーカイブしてしまうというシンプルな解決方法でもよいでしょう。しかし、それ以外のコンテンツには管理を強化するためのポリシーが必要です。

コンテンツ管理の計画書には、内部の衝突を避け、事務的にレガシーコンテンツの削除を実行するためのポリシーが必要です。

たとえば、全てのコンテンツに所有者を割り振り、その人物は6ヶ月ごとにCMSで担当のコンテンツを見直すといった方法です。もし実行しない場合には、そのコンテンツにはリタイアフラグを立てるのです。

コンテンツ制作者には見直しの時期が来たらメールが届くようにします。もし見直さなかった場合、そのページは削除対象となります。

私がここまで、一貫してコンテンツの「リタイア」と言ってきたことにお気づきでしょうか。最後に、コンテンツのリタイアとはどういうことかの説明で今回の投稿を締めくくろうと思います。

レガシーコンテンツをリタイアさせる方法

レガシーコンテンツのリタイア(引退)に関するひとつの考え方としては、「もし…ならば」というシンプルな文言に当てはめるものがあります。たとえば、「もしこのコンテンツが大きなトラフィックを稼げなかったならば、リタイアさせる」といった具合です。しかし、リタイアがどのような形をとるかはコンテンツの種類によって異なります。

あるケースでは、リタイアとはWebから完全に削除することになるでしょう。しかし、それがあまり賢くない決断である場合もあります。

まず、十分なリダイレクトがなければ企業の検索ランクが下がる可能性があります。

次に、コンテンツの削除はしばしばコンテンツ所有者から大反対にあうことがあります。実際、ニッチな層を捉える目的や、所有者の業務に紐づく場合もあるのです。

より良い選択肢としては、リタイアはさせるがWebには残すということです。

これは通常、該当ページをサイトから隔離することを指します。サイトからの動線を削除し、サイト内検索結果にも表示されないようにするのです。そうすることで、サイトを回遊するユーザーの体験を損なったり、より重要なコンテンツを探す邪魔になったりしません。

該当ページはWeb上には残り、Googleなどの外部検索エンジンからは探せる状態となります。コンテンツの所有者も、必要があればページのURLを共有することができます。

このような方法でリタイアしたページは更新されないことが多く、すぐに掲載基準を外れたコンテンツとなります。これにより発生するリスクを軽減するため、メンテナンス外のコンテンツであることを示すアーカイブのマークを付けてもよいでしょう。

リタイアさせたページには、有効期限切れの可能性を伝えるマーキングをする必要があります。

避けられない問題

どんなアプローチを取るにしても、最も重要なポイントは、組織は自身のWebサイトが膨らんでいくことを無視している余裕がないということです。毎年コンテンツは増えていき、ユーザー体験も煩雑になるため、なんらかの手を打つ必要があるのです。

もしすぐに動き出さなければ、すぐに自身のレガシーコンテンツによってWebサイトが埋め尽くされることになるでしょう。


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