ペルソナに付ける名前の選び方

Andrew Schall

AndrewはModernizing Medicine社のUXヘッドであり、 Maryland Institute College of Art(MICA)の非常勤講師。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

What’s in a Name? How to Select a Name for Your Personas

ターゲットとなるオーディエンスを代表するようなペルソナの作り方については多くの記事が書かれています。しかし、そうした架空の人物に付ける名前については、これまでほとんど気にされていませんでした。物に名前を付けたくなるのは人間としてごく当たり前の性質です。女子高生のペルソナを単に「学生ペルソナA」と呼ぶのではなく、「マーサ」と呼んだとしたら、インパクトは違ったものになるはずです。現実の人々と同じようにペルソナにとっても名前は重要なものであり、ペルソナが上手く機能するかどうかにも影響を与え得るものなのです。

チャック、シンシア、ロブの物語

1995年頃の典型的なオフィスワーカー、チャック、シンシア、ロブ。

現代のユーザーペルソナの父と紹介されることが多いのが、Alan Cooperです。彼は、デザインチームがターゲットとするユーザーを可視化することがまだ一般的ではなかった1980年代、1990年代に手がけた初期のペルソナについて書いています。初期のペルソナを使った仕事でAlanは、3つの異なるユーザータイプを詳細に表現するためにチャック、ロブ、シンシアという名前を使いました。

  • チャック:既存のテンプレートやレポートを好むアナリスト
  • シンシア:チャックと同じくアナリストで、既存のテンプレートも使うが、自分でもテンプレートを作ってチャックに使わせている。
  • ロブ:チャックとシンシアをサポートするITマネージャー。シンシアが作ったテンプレートを改良することはできるが、自分で作ったり、それを自分で使ったりはしない。

ペルソナは大成功を収めました。Alanは、彼のチームのメンバーが「シンシアならどうするだろう」とか、「チャックにこれが理解できるかな」というふうに、ミーティングの中でペルソナを名前で呼ぶことがよくあったと言います。

なぜ名前がそんなに重要なのか?

ペルソナはユーザーリサーチによって作られるものです。そしてUXチームがそれぞれのユーザータイプごとの経験値やテクノロジーへの親和性、目的、ペインポイントといった特性を決定するためには、データドリブンのアプローチを取る必要があります。ペルソナの写真や名前などはその後で決まるものです。

こうしたペルソナとは、数年がかりの付き合いになる場合が多いでしょう。良くない名前というのは紛らわしかったり、攻撃的だったり、あるいはチームに混乱をもたらすような可能性もあります。ペルソナの名前はミーティングやメール、ユーザーストーリーの中で呼ばれます。ポスターに名前が載るかもしれませんし、あなたの会社のWikiに登場することもあるでしょう。

ペルソナの名前は、チームのメンバーが真剣に取り組めるようなものにすると共に、覚えやすいものにしなければなりません。名前はペルソナの写真と同じようにユーザーを表すものなのですから、大事なものなのです。

自分の組織のメンバーがそのペルソナを「ユーザーを表しているもの」と考えるようにするためには、そのペルソナにピッタリでもっともな名前を付けなければなりません。

ペルソナに名前を付けるプロセス

「ボブかな。いやジム? あるいはトムか。ジェイクはどうだ…? ジェイクっぽいな」。ペルソナを作ったことがある人なら誰でも、こんなジレンマに陥ったことがあるでしょう。候補の名前は山ほどあるというのに、どうやって最適な名前を見つければいいのでしょうか?

名前がどんなふうに聞こえるか

どんな名前にも、特有の心理学的な効果があります。名前というものは形と音から出来上がっているのですが、音は感情的な反応を引き起こします。言葉は、c、g、k、t、zのようなカドのある音を持つ「鋭い音」の文字と、l、m、n、sのような穏やかな音を持つ「柔らかい音」の文字から出来ています。

どちらをフルネーム、またはニックネームに使うか考えてみましょう。音節が少ない短い名前は、「アレクサンダー」が「アレックス」になるように、言うのも書くのも速くなります。「ウィリアム」が「ビル」となるような、よく知られたニックネームも効果的に使えるでしょう。

結局は、発音しやすくて覚えやすい名前を選ぶことになると思います。

クリエイティブな名前にするか、普通の名前にするか

ほとんどのペルソナは、分かりやすくするために、非常によく知られている一般的な名前が付けられています。おそらく、「ジェーン・ドウ」や「ジョン・スミス」(日本語で言う「山田太郎」)といったような何百万人ものユーザーを代表するような名前がついたペルソナが何百とあることでしょう。ペルソナを使うことの目的の一つがチームメンバーとユーザー特有のニーズを結びつけることであるとしたら、はたして「ジェーン・ドウ」と呼んでいてもいいのでしょうか? 普通の名前は無難ではありますが、ありきたりで、チームにとっても記憶に残りにくいものになりそうです。

もし、非常に一般的な名前を採用するなら、あなたの会社でよく知られた人(CEOや部署のヘッド、得意先、チームメンバーなど)の名前と被らないようにしてください。ペルソナのことを言いたいときに紛らわしくなってしまいますからね。

紛らわしくならないようにするためには、お互いに似すぎている名前も避けましょう。たとえば、ジョナサンやジョナ、ジョアンナが他にいるなら、ジョンはダメです。

ラストネームは、そのペルソナ特有の性質を表す必要がある場合以外は有っても無くてもいいです。また、非常に一般的なファーストネームを使う場合は区別のために必要でしょう。特徴として肩書きを持っているようなユーザーをペルソナに代表させる場合には、肩書きが重要になります。たとえば、医師のためのデザインを行う場合であれば、「Dr. マーティン」のように肩書きを付けるべきです。また、軍人の場合は階級も表すべきなので、「トンプソン大佐」のようにしましょう。

ペルソナを目立たせるためには、比較的珍しい「ベアトリス」「ホラス」「ロイ」などの名前を使えば、覚えやすくなるでしょう。正しい理由に基づいている限り、自分のペルソナを最優先に考えることは良いことです。

多様性を持たせるか、均質にするか

ネーミングを多様化することは一般的には良いことですが、次のような特性については慎重に考えるべきです。ペルソナの目的は、私たちの社会における多様性とのバランスを取りつつ、ターゲットとなるオーディエンスを正確に表すことでなければなりません。

性別

ほとんどのペルソナの名前は男性の名前、女性の名前に分けられるでしょうが、「アディソン」「モーガン」「ジェス」というような名前はどちらにも受け取れます。ペルソナの性別は重要な特性ではないことが多いので、ペルソナの有効性を損なわないのであれば、ニュートラルな名前を選ぶことは適切です。

人種、または出身地域

ほとんどの会社はアメリカ人として一般的な「トム」、「ジム」、「サリー」といった名前にこだわりがちです。これらの名前に何か問題があるわけではありませんが、あなたの会社のデザインの対象となっているもっと優勢なオーディエンスのことを十分に表していない可能性もあります。

あなたのユーザーが基本的には特定の国や地域にいるのであれば、その場所で一般的な名前を使うことに問題はありません。たとえば、あなたのチームがデザインする相手がインドだけにいるのであれば、そのペルソナに対してドイツでよく見られる名前を付けようとは思わないでしょう。

覚えやすくすること

ペルソナの名前はあなたの会社にとっての最重要事項でなければなりません。1つのテクニックとしては、子音を揃える頭韻法があります。「Tony the technician」「Nina the nurse」「Amy the accountant」などはこの例です。

他には、破裂音を使うというテクニックもあります。単語の始めに現れることの多い、「P」「D」「T」「K」のような強めの音、途切れ途切れになるような子音には、単語を強調することによって思い出しやすくする効果があるという研究もあります。たとえば、「パトリシア(P)」「ダニエル(D)」「タッカー(T)」「カート(K)」のような名前がこれに当たります。

有名なセレブ、政治家、歴史上の人物などの広く知られた名前は避けましょう。ペルソナを「ジェームズ・ボンド」や「ハリー・ポッター」と呼べば覚えやすいかもしれませんが、紛らわしいですし、会社のメンバーが混乱してしまいます。

名前を最終的に決める前にリサーチを行う

ペルソナの名前は広くシェアされ、数年に渡って使われるのですから、これだと決める前に社内でリサーチを実施する方が良いでしょう。初心者であれば、会社の社員名簿でどの名前がもっとも一般的なのか探してみましょう。100人の社員の中に「スーザン」と言う名前の人が8人いたら、他の名前を探したくなるでしょう。

ルイーズ・ロリンズと名付けられたペルソナの例(出典:Usability.gov)

ペルソナの案をチームのメンバーと検討する際には、名前について彼らがどう考えるかに注目しましょう。彼らはペルソナの名前に、まずどんな反応を示すでしょうか。彼らが名前を気に入るかどうかを見定めることが目的ではありません。もしかしたら彼らはその名前から、社内の誰かや、誰もが知っているようなお馴染みのクライアントを思い浮かべるかもしれません。その名前は選んだ写真に合っているでしょうか。その判断は大いに主観的なものではありますが、そのペルソナを使うことになる社内のメンバーの反応を知ることには意味があります。

どこから始めればいいか

まず、さまざまな特徴からフィルタリングできるように、無料で使える名前のデータベースを閲覧することから始めましょう。

最適な名前を見つければ、社内の同意を得やすくなり、覚えやすくなり、また、あなたのペルソナが真っ先に思い浮かぶようになります。最適な名前を持つことはもちろん重要なのですが、チームがそれに気を取られすぎて、本来の目的が疎かにならないようにしましょう。ペルソナの目的はユーザーの重要な特性を表現することであり、それこそがユーザーの体験に最大の影響をもたらすものなのです。

つまるところ、シェイクスピアの言う通りということです。

名前が何だというの? 私たちがバラと呼ぶものは、他のどんな名前で呼んでも、同じように甘く香るわ。


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