リモートでのユーザビリティテストを実施するためのコツ

Vikas Kalwani氏

Kalwani氏はzipBoardのコンテンツマーケターです。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Remote Usability Testing – Best Practices

世界クラスの商品をつくるために重要な要素のひとつは、開発中にユーザーからのフィードバックをもらうことです。ユーザーの要求に応じて定期的に商品を改良し、最終的にはビジネスにおけるゴールを達成する役に立ちます。ユーザビリティテストでは、ユーザーに商品やWebサイトを使ってもらい、ユーザー体験を評価してもらいます。ユーザーにとって使いやすいか否かを見極めることや、デザイナーやUXリサーチャー、開発者、プロダクトマネジャーが見過ごしたユーザビリティにおける問題点を知ることに役立つのです。

ユーザビリティテストのタイプ

ユーザビリティテストはおおまかに次の3つのドメインに分類されます。

管理型 vs 非管理型

その名前が示すように、管理型ユーザビリティテストでは、テストセッションの管理/被験者への指示/質問への回答/フィードバックの回収/フォローアップの質問/被験者にとって極力スムーズなテストプロセスの運営をする監督者がいます。管理型ユーザビリティテストは時間、労力、リソースがかかり高価ですが、ユーザビリティに関する問題への深い理解が得られます。

非管理型ユーザビリティテストには、上記のような監督者はいません。被験者は自宅か実験室にてテストを実施します。このタイプのテストではフィードバックが少しもしくはまったく得られないことも多く、特に複雑な作業工程を含むものは被験者が投げ出してしまいがちです。行動パターンを観察・計測したいような場合、このテストを選択しましょう。

探求型 vs 評価型 vs 比較型

探求型テストはプロダクト開発の初期に実施され、自由回答方式です。被験者は商品のコンセプトとユーザビリティに関する考えを質問されます。市場との乖離を知ることや新機能のアイディアを得ることにも役立ちます。

評価型テストはユーザー満足度や商品の全般的なユーザビリティ(被験者が商品をどれだけうまく使うことができたか)を評価するために用いられます。

比較型テストは基本的に2つのWebサイトやプロダクトを比較する目的で用いられます。参加者は1つを選択するように求められます。

対人型 vs リモート型

対人型は監督者の下で行われ、ボディーランゲージを始めとしたより多くのデータ採取ポイント(データポイント)があるため、リモート型よりも有益です。ただ、もし大量の参加者が必要なのであれば、この方法は選ばないほうがよいでしょう。一般的に対人型テストは高価で、場所を要し、時間がかかります。

リモート型テストは電話かインターネットで行われます。対人型と比べて安価で、より大量のテストが可能です。唯一の問題は、データポイント(もしくは有益なフィードバック)が少ないことです。以下で詳しく見ていきましょう。

リモートユーザビリティテストとは?

上で述べたように、リモートユーザビリティテストでは、被験者の日常の環境下でユーザー調査を実施することができます。テストの実施には、被験者と画面を共有するか、ベンダーからリモートテスト用のソフトウェアを入手する必要があります。出張予算が少ない、時間がタイト、被験者がなかなか見つからないといった場合はリモートユーザビリティテストが良いでしょう。

監督者と被験者が合流するのではなく、被験者は自宅やオフィスといった場所で与えられたタスクをこなし、監督者(または専門家グループ)はリモートでその様子を観察します。

管理型と非管理型のリモートユーザビリティテスト

管理型のテストでは、テスト中に被験者を手引きする監督者がいます。監督者は、Skype、Zoom、GoToMeeting、Lookbackといったスクリーン共有ができるツールを使って参加者の様子をリアルタイムで観察します。セッションが終わったら、参加者にフォローアップの質問をすることもできます。

非管理型ユーザビリティテストでは、テスト中に監督者は不要です。被験者は日常の環境下でテストを実施し、自身のペースでタスクをこなして問題ありません。テスト結果は録画映像として手に入ります。被験者にフォローアップの質問はされません。

リモートユーザビリティテスト用ツール

以下は、リモートユーザビリティテストに用いられるツールのリストです。

Zoom

言わずと知れた、録画とライブでのスクリーン共有が可能なビデオ会議ソフトウェアです。無料でサインアップが可能で、そのUIからは素晴らしいユーザー体験が提供されます。Zoomを利用する唯一の欠点は、被験者が新しいソフトウェアのダウンロードを嫌がるかもしれないということです。

GoToMeeting

リモートワーカーに人気のWeb会議ツールです。E2EE技術を誇るツールですが、セットアップが難しく、インターフェイスがわかりづらいという欠点があります。なによりも、他のツールに比べ高価であり、特にセッションを録画したい場合はコストがかかります。

Lookback

ユーザー調査のために開発されたツールで、どのようなデバイスでも使用できます。自己管理型テストに使用することも可能です。安定したインターネット接続下においてよく機能します。録画データはクラウド上に保存されます。ユーザーのスクリーンとウェブカメラを撮影でき、タイムラインにメモを添付することも可能です。唯一の欠点は、ユーザーがソフトウェアとプラグインをインストールしなければいけない点です。

Userzoom

ビデオ会議からオンラインアンケートまで、このツールでは色々なタイプのリモートユーザビリティテストを実施可能です。テストの被験者を募集することもできてしまいます。ユーザーインターフェイスは少々古く感じられるかもしれません。

リモートユーザビリティテストのメリット

  • 一般的に対面型テストより安価です
  • 対面型テストより多くの被験者を調査可能です
  • さまざまなタイプの被験者グループを調査できるため、調査中にそれぞれのグループがどのように振る舞うかをより良く理解できます
  • 実験室が必要ありません
  • ある商品がさまざまな土地においてどのように機能するかのインサイトが得られます
  • リモートテストの被験者探しは、対面型テストよりも時間やコストが節約できます。また、リモートユーザビリティテストは規模の拡大が可能です
  • リモートでの調査は日常環境下で実施されるため、得られるインサイトはリアルな世界に近く、ホーソーン効果を最小限にできます
  • 管理型リモートユーザビリティテストでは、被験者のパフォーマンスをリアルタイムで観察できるため、より多くのデータポイントが得られます
  • 管理型リモートユーザビリティテストではリアルタイムで被験者をテスト・観察できるため、より柔軟な対応が可能です。さらに、もし設問に対しての誤解がある場合は訂正することもできます
  • 非管理型リモートユーザビリティテストでは多くの被験者を募るため、得られる発見に一般性を見出しやすいと言えます

リモートユーザビリティテストのデメリット

  • 監督者不在の非管理型テストでは、被験者が途中でやめたり与えられたタスクに集中しない可能性があります
  • 日常の環境下にいるとはいえ、管理型リモートテストには観察者効果が存在します。監督者がいることで、商品が使いづらくても口に出さない可能性があります
  • 管理型テストは一般的に時間がかかります。監督者は被験者とのやり取りやフォローアップの質問のチャンスを逃さないように、つねに待機していなければいけません
  • テスト中に参加者をリードする監督者がいないため、非管理型テストの結果の正確性は指示書の出来に大きく依存します。通常、結果は画面録画で確認することとなります
  • 非管理型テストの終了後には、被験者に追加質問をすることはできません
  • 被験者の中には手早くお金を稼ぐためだけに管理型テストを受ける人もいます。そういった被験者はただ実験者側を喜ばせるための意見を言うこともあり、参考にならない可能性があります

リモートユーザビリティテストのコツ

  • 多めに被験者を募る-リモートテストの欠席者は対人型よりも遥かに多いものです。多めに被験者を集めておきましょう
  • 観察者効果を緩和する-被験者をできるだけリラックスさせましょう。商品やその機能の一部が使いづらい場合は、遠慮なく指摘するようにお願いしましょう。商品や機能を悪く言われることになんら問題ないことも伝えましょう
  • 明確さ-非管理型テストではハッキリと簡潔で重複のない質問をしましょう。曖昧なタスクがあってはいけません
  • 望まない被験者の除外-お金のためだけに参加した被験者の意見は、ユーザー体験に関する重要なインサイトに繋がらないため、集計から除外しましょう

まとめ

リモートユーザビリティテストは対面型テストよりも安価であり、より多くの対象を調査でき、得られるインサイトはリアルな世界に近いものですが、特有のデメリットも存在しますので注意が必要です。もしリアルタイムで被験者を観察したりフォローアップの質問をしたい場合は管理型のリモートテストを実施しましょう。


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