ユーザーや顧客と理想的な関係を築くための「真実の瞬間」

Interaction Design Foundation

Interaction Design Foundationはグローバルにデザインレベルの向上を目指す、デンマーク発の非営利団体です。

この記事はInteraction Design Foundationからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

The Moment of Truth - Build Desirable Relationships with Users and Customers

「真実の瞬間」という考え方を理解するためには、ブランド、またはプロダクトにおける顧客のライフサイクルを理解することが重要です。顧客(または潜在顧客やかつての顧客)がブランドに接する瞬間は数多くあります。

真実の瞬間とはシンプルに、顧客があなたのブランドやプロダクトに対して何らかの印象をもつような接点のことです。この印象はポジティブな場合もあれば、ネガティブな場合もあります。UXデザイナーの目的はそうした真実の瞬間に、ユーザーのブランド、プロダクトへの印象に対してポジティブな影響を与えるようにすることです。

「ある一連の行動をデザインする人は誰でも、既にある状況を好ましいものへの帰ることを目指してきた」というHerbert Simonの有名な言葉が、広くビジネスにおいても正しい考えであることが、真実の瞬間という考え方によって証明されています。

作者/著作権者:daanton 著作権番号:CC BY-NC-ND 3.0

デザインにおける真実の瞬間は、心理学的な真実の瞬間とはまったく違います。ですから、サービスをデザインするときに「自分はいい人間だろうか?」のような決まりの悪い疑問をもつことは真っ当なことです。

なぜ真実の瞬間が重要なのか

なぜ真実の瞬間が重要なのかというと、マーケットがたくさんのプロダクトやブランドでだんだん混み合ってきているので、差別化を図るにはサービスしかないからです。マーケットにギャップが存在する場合、(ほとんどの、独占されていない環境では)必ずそのギャップの解消を狙う多くの競争者がいるでしょう。最初の段階こそニーズの満たし方において差別化が為されるでしょうが、時間が経てばその差は縮小し、マーケットにいる大多数の供給側はまったく同じか、よく似たやり方で事業を行うようになります。だから、実質的な違いを生み出すにはサービスしかなくなるのです。

顧客がブランドやプロダクトとのあらゆる接点において満足していれば、彼らがあなたのブランドやプロダクトを離れて競合他者を利することはないでしょう。また一方で、顧客とブランドとの結びつきがもっと強くなる可能性もありますし、もっと言えばブランドの「アンバサダー」的な存在、あるいは「熱狂的な支持者」になってくれることも考えられます。

真実の瞬間において現実的に想定される結果は2つ、つまり、素晴らしい瞬間か残念な瞬間かです。そのどちらでもない瞬間というのもあり得ますが、実際にはあまり無いでしょう。つまり、あなたはほとんどの接点において、顧客によい印象を与えることができるか、できないかのいずれかということになります。これらの瞬間を最初にコンセプトとして整理したのは、顧客体験のデザイナーであるShep Hykenです。

真実の瞬間は、顧客のライフサイクルのあらゆる場所で起こり得ます。ですから、実際にどこでそれが起こっているのかを見極めるために、ライフサイクルを最初から最後まで検証することが重要です。

素晴らしい瞬間

素晴らしい瞬間とは、顧客の期待がただ満たされるのではなく、期待を上回る瞬間です。多くのデザイナーはこれを大げさに考えるでしょうが(たとえば、ホテルの宿泊客が誕生日のお祝いとしてスイートにアップグレードしてもらうというような)、実際には、この素晴らしい瞬間というものは1つの接点をうまくこなすことによって達成できるのです(たとえば、顧客が急いでいるときに、ファストフード店が温かくておいしいハンバーガーを素早く提供する、というような)。

残念な瞬間

残念な瞬間とは、顧客がイライラするだけではなく、その顧客が別のサービスに移ってしまったり、他の人にその残念なサービスについて言いふらしたりする可能性を上げてしまうものです。店員が助けを求めている顧客を無視したり、コールセンターのオペレーターがぞんざいな口調で顧客に応対したりするときに起こります。

実は、顧客が問題についてサービス提供者に不平を言うほど気にかけてくれているのであれば、残念な瞬間も素晴らしい瞬間に変わる可能性があります。問題の解決の仕方によっては、顧客に長期的な好意的な印象を与えることにつながることも多いです。問題が起こってみなければ、サービスにおいて発生しうるあらゆる潜在的な落とし穴防ぐことは(不可能ではないにしても)難しいのですから、これはよい点であると言えます。

4種の真実の瞬間

最近、サービスデザインにおいてサービスと顧客体験における4つの真実の瞬間が概念化され、定義されました。最初のものはGoogleがつくったもので、次の2つはP&G社が、最後は『What’s the Future of Business: Changing the Way Businesses Create Experiences』の著者であるBrian Soils氏がつくったものです。

  • 真実の瞬間 その0:これは、ブランドやプロダクトと顧客の間に考えられる最初の接点です。顧客の頭の中に問題が生まれるときであり、彼らはネット上でその問題に対する完全な解決策を探し始めたり、有り得る解決策について学んだりします。
  • 真実の瞬間 その1:これは、潜在的な顧客が初めてあなたのプロダクトと接する瞬間です。顧客がプロダクトを初めてみて、それについて知り始めるときに抱く印象です。P&G社は、マーケターが潜在顧客を本当の顧客に変えるためには、この瞬間にすべての努力を傾けなければならないと言っています。
  • 真実の瞬間 その2:これはプロダクトとの継続的な関係性です。ここには、その関係のライフサイクルの中で顧客がプロダクトとブランドに対して考えること、見ること、聞くこと、触れること、匂いを嗅ぐことなどが含まれます。
  • 究極の真実の瞬間:ユーザー、または顧客が自らの体験について他の人とシェアする段階であり、これによってまた多くの真実の瞬間:その0が生まれます。

作者/著作権者:Brian Soils 著作権番号:CC BY 2.0

Brianはまた、顧客の決断の動きをジャーニーとして整理しています。このジャーニーを念頭におけば、あなたのブランドやプロダクトにとっての真実の瞬間を特定することができるでしょう。

素晴らしい瞬間のつくり方

なにもあっと驚くような方法はありません。すべてのデザインの分野と同じように、顧客やユーザーにとって重要な素晴らしい瞬間をつくるためには、その顧客やユーザーと対話することです。ブランドやプロダクトによって顧客やユーザーはさまざまなのですから、真実の瞬間において最適な体験を生み出すために役立つ単一の方法はありません。

結論

真実の瞬間とは、ユーザー体験、顧客体験の成否がかかるような、あなたのプロダクトやブランドとの接点に基づくものです。こうした真実の瞬間は、UX、CX、またはサービスデザインのプロがそれを意識し、ユーザーや顧客にとってなにが有効なのかを対話を通してみつけ出すことができれば、デザインすることができるでしょう。

作者/著作権者:DarkEvil 著作権番号:パブリックドメイン

真実の瞬間は数多くの優れたサービス提供、そして顧客満足に貢献します。そしてそれらが、利益を生み出すようなビジネスの成長サイクルを回すのです。


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