デザインにおけるメンタルモデル

Interaction Design Foundation

Interaction Design Foundationはグローバルにデザインレベルの向上を目指す、デンマーク発の非営利団体です。

この記事はInteraction Design Foundationからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

A Very Useful Work of Fiction – Mental Models in Design

メンタルモデルは、ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)とインタラクションデザインにおいて重要な役割を果たしています。これらはユーザーが周りの世界をどのように知覚しているかに関連し、事実に基づくコンセプトではなく、人の信念に基づいています。しかし、もしユーザーのメンタルモデルを理解することができれば、あなたはデザインの中でこれらのモデルを再現し、デザインをより使いやすく直感的なものにできるでしょう。

メンタルモデルは信念から生まれたものです。何らかのシステムあるいは反応についてユーザーが持っている信念です。ほとんどの場合、この信念は実生活のモデルとある程度似通っています。ユーザーは将来の行動をメンタルモデルに基づくシステムによって計画したり予想したりするのですから、これは重要なことです。

デザイナーはユーザーのメンタルモデルに触れることで、ユーザーそれぞれの形に則ってプロダクトの機能を伝えることができます。しかし、これが上手く行くのはデザイナーが本当の意味でユーザーのメンタルモデルを理解している場合だけです。デザイナーが自らのメンタルモデルに基づいてデザインを行って失敗してしまう例には事欠きません。デザイナーが考えるモデルはあまりにも限定的で細かいため、ユーザーのモデルに近づけることが難しいのです。したがって、ユーザーが自らのメンタルモデルを見つけられれず、混乱し、イライラしてしまうようなUIは失敗してしまうのです。

メンタルモデルは統計的に作られるものではないということは重要な事実です。このモデルは進化する可能性がありますし、他のプロダクトを使ったり、他のユーザーと関わったり、他のリソースで使い方を学んだりすることで変わっていきます。

メンタルモデルというコンセプトは、スコットランドの心理学者であるKenneth Craik氏の著書、『The Nature of Explanation』から来ています。彼はこの中で、人の精神は出来事を予期し、説明するために「現実の縮小版モデル」を構築すると言っています。

メンタルモデルの基本ルール

私たちは誰もが反応のメンタルモデルを持っていると考えましょう。可能な限りこう考えることが、大事な基本ルールです。ユーザーは既存のアプリやWebサイトに対する反応を元に、自身のメンタルモデルを形成するでしょう。いわば、彼らはこうした過去の体験と整合するような機能を期待し、もしUIの一般的なパターンがあるのであれば、それがデザインの中に再現されている必要があります。

作者/著作権者: Nathanael Crawford 著作権番号: CC BY-SA 3.0

メンタルモデルに起こる混乱

Nielsen Norman Groupの創設メンバーであるJakob Nielsen氏は、メンタルモデリングにおいて起こり得る混乱について素晴らしい気づきを提示しています。そうした混乱は、ユーザーがシステムの似ている部分(しかし同一ではない部分)の間に決めてとなる違いを見出せないときに起こるのです。

彼は、多くのユーザーがGoogleの検索フィールドとブラウザーのURL入力フィールドを見分けることができないことを発見しました。こうしたユーザーはよく知られたWebサイトの名前を調べてリンクをクリックするためにGoogleを使うのであって、URL入力バーにその名前に「.com」を付けて入力するわけではないのです。(後に示しますが、Google ChromeはURL入力バーを検索ツールにすることでこの問題を解決しようとしています)

作者/著作権者: Axendo 著作権番号: パブリックドメイン

どうやらユーザーはボックスに何かを入れれば行きたいところに行けることを知っているようですが、そのボックスの機能についてはよくわかっていないようです。このことから、ブラウザが現在では多くの場合においてURLボックスを検索ボックスとして扱うようになっていることの理由が説明できます。ユーザーが出会ったデザインパターンに対してメンタルモデルが混乱してしまって簡単に適応できなかったために、ブラウザーの機能はそのメンタルモデルに対応するために変化しなければならなかったのです。

Neilsenはまた、一部のユーザーが当たり前に直面するであろういくつかのメンタルモデルにおける一般的な混乱を提示しています。それによればユーザーは、次のような差異を理解していません。

  • OSの中で表示されるウィンドウと、ブラウザーの中のウィンドウの差異
  • ウィンドウとアプリの差異
  • アイコンとアプリの差異
  • ブラウザのコマンドと、アプリ内のコマンドの差異
  • ローカル情報とリモート情報の差異
  • ログインとパスワードの差異(ユーザーはあたかも自分のメールボックスにログインするかのように、あらゆるWebサイトにログインしようとします)

デザインにメンタルモデルを活用する

重要なことは、誰かのメンタルモデルを変えようとすれば、一定の慣性を克服しなければならないということです。彼らはあるコンセプトに対する理解(間違っているかどうかは別として)を完成させているのですから、これを変えるためには時間と労力がかかります。

もしメンタルモデルを置き換えようと挑戦するなら、この慣性を乗り越えるためには相当な労力が必要だということを知っておくべきです。ユーザーがあなたのプロダクトから得る価値を、自分にとって「価値が高い」と理解するようにしなければなりません。さもなければ彼らは失望してしまい、自分のメンタルモデルに合うように作られているどこか別の環境に行ってしまうでしょう。

デザインとユーザーのメンタルモデルが噛み合わないときの手っ取り早い対処法は、デザインをユーザーのモデルに合うように変えることです。大多数の場合、これが取るべき最善のアクションです。あなたはユーザーのモデルの慣性と戦う必要がなく、ユーザーもあなたに感謝するでしょう。

デザインをモデルに合うように変えることができないならば、ユーザーのメンタルモデルが新しいモデルに歩み寄るのを助けるために追加のステップを踏む必要があります。これはつまりユーザーの心に新しいモデルが根付きやすいように、インストラクションやラベル、チュートリアル、あるいは視覚的なきっかけを提供するということです。

作者/著作権者: Nite_Owl 著作権番号: CC BY-SA 2.0

結論

デザイナーがUIをつくるとき、メンタルモデルを考えることは近道となります。自分の中にあるメンタルモデルを信用せずに、ユーザーのメンタルモデルを知ることで、UIを通して彼らのモデルを再現することができ、ユーザーにとって直感的で受け入れやすい体験を作り出すことができます。

これによって、ユーザーが新しいモデルを苦労して学ぶことなく、自分のタスクにフォーカスできるような、より良いユーザー体験が生まれるでしょう。メンタルモデルを変えようとすることも良いですが、ユーザーができるだけ簡単に新たなモデルに移行できるように慎重な考慮が必要です。


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