行動変容に対してのデザインアプローチ

Kristen Berman

KristenはIrrational Labsの共同創業者であり、Googleの行動経済学グループの創設メンバーです。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

The Scientific Approach to Designing for Behavior Change

以前、私たちはミスリーディングになり得るカスタマーリサーチについて書きました。私たちは、消費者は理性的な決断を下していると思い、そして彼らの行動について彼らから得た答えを言葉通り受け取ることがあまりにも多いです。しかし、消費者が「こう行動する」と言うことと、実際の行動との間にはギャップがあります。私たちはどうやってこのギャップを埋めて、実際の消費者の行動に基づいたプロダクトをデザインすればよいのでしょうか。

あなたのカスタマーリサーチの悩みに対する解決策

ここが、行動デザインの出番です。行動デザインは、消費者が数多の認知バイアスのせいで自分の行動をうまく予測できないことを考慮に入れ、意思決定の心理学、すなわち行動科学の域まで深く入り込んで行きます。これを使えば、行動科学者たちは人々が言うことと行うことの間にあるギャップを理解することができ、そこで発見したものをプロダクトやアプリ、プログラムのデザインの決定に使うことができます。結局のところ、行動デザインとは行動をよい方向に変えるような解決策を開発・デザインするために行動経済学の分野からの気づきを使う問題解決のアプローチなのです。

Irrational Labsで私たちは、Google、Facebook、PayPalなどの会社と一緒に、プロダクトのデザイン、機能の改定、そしてユーザーの行動の変容をより効果的に行うためにこのシステマチックなアプローチを使ってきました。さらによいことに、このアプローチはあなた自身の組織にも取り入れることができます。これから、あなたのプロダクト開発、そしてデザインのプロセスに行動デザインを導入する方法をご紹介します。

行動デザインのためのガイド

ステップ1:行動診断を行う

行動デザインをプロダクトのデザイン、そして開発のプロセスに取り入れるには、3つのステップがあります。ユーザーの行動を変えるための最初のステップは、行動診断を行うことでユーザーの現在の行動を可能な限り詳細に理解することです。私たちは意思決定が起こる環境にズームインし、誰かが望んだ結果を得るために必ず通るであろうステップを1つずつマッピングしていきます。このステップには、問題についてのデータを集めること、キーとなる1つの行動を選ぶこと、誰かが行動を完結させるために踏まなければならないあらゆるステップを取り入れた行動マップをつくることが含まれます。

ステップ2:心理的なバイアスを特定する

2番目のステップはユーザーが行動マップに沿って進む際に出会う心理的なバイアスを特定し、ラベリングすることです。現在バイアスや損失回避、楽観バイアスなどがあるでしょう。これらのバイアスは私たちの意思決定に影響を及ぼすので、スマートなプロダクトデザインのためには対処しなければならないものなのです。

目的は、ユーザーが行動のフローの各ステップにおいて経験する特定のバイアスをリストアップすることです。ご存知かもしれませんが、心理バイアスの世界は驚くべきスピードで複雑になっています。Wikipediaには200近くリストアップされています。この世界をシンプルにするために、私たちは3Bsと呼ぶモデルを使います。すなわち、behavior(ステップ1で選んだキーとなる行動)、barriers(障壁)、benefits(利益)です。このフレームワークがあらゆるバイアスを網羅しているわけではありません。しかし、そのシステムを分析するための出発点を与えてくれるものではあります。

障壁(barriers)は行動を完結するために生じる葛藤を増加させたり減少させたりするもので、利益(benefits)は行動を完結させるモチベーションを増加あるいは減少させるものです。

行動変容をデザインするためには、障壁を除去または減少させ、既存の利益を強化、または新たな利益を創出する必要があります。

行動フローをつくり上げ、それに関連する障壁と利益を特定することは、行動変容をつくり出すための重要なステップです。これらの原則が理解できれば、あなたはキーとなる行動をもっと理解するためのより効果的なソリューションをつくることができるでしょう。

ステップ3:実験する

3番目のステップは、あなたがステップ1で選んだキーとなる行動を増やすための解決策をデザインすることです。このために、あなたが取り除きたい障壁と、システムに追加したい利益を選び出しましょう。あなたがデザインを決定するために、ここでの気づきを使うことになります。いきなり正解を当てるかもしれませんし、まったく検討違いかもしれません。自分の解決策の有効性を知るために、きちんとコントロールされた実験をデザインして、誰かがあなたの選んだキーとなる行動を取る確率が変わったかどうかを確認しましょう。

まず、あなたのフローにおいてもっとも影響力の強い心理的なバイアスを優先しなければなりません。人々がキーとなる行動を完結させる上でもっとも邪魔になる障壁を選びましょう。それから、それらの障壁に対処するための解決策を考えます。ちょっと手直しをするだけで解決できるバイアスもあるかもしれませんが、まったくのオーバーホールが必要になるようなものもあるでしょう。もしあなたの解決策の潜在的な影響が未知数ならば、テストをするチャンスだと考えましょう。

最後に、コントロールを加えたグループに対して、きちんとコントロールされた実験を準備し、あなたの解決策(複数あるかもしれません)をテストします。異なる条件下におけるキーとなる行動に対する解決策の効果を比較することで、どの介入方法が効果的なのかを理解することができます。

結論

行動デザインはどこでも使うことができます。学生がお金を貯めるのを手助けするプロダクトを新たにつくりたい、瞑想アプリをもっと使ってもらえるようにしたい、あなたの街のリサイクルプログラムに対する理解を広めたい。そんなときには、行動デザインを使いましょう。診断、心理的バイアスの特定、実験という行動デザインの3つのステップを使えば、あなたはユーザーの行動をよい方向に変えることに自信をもてるはずです。

リサーチのプロセスとプロダクトに行動デザインを導入するためのもっと詳細なガイドが欲しい場合は、Irrational LabsのBehavioral Design Guideをダウンロードしてください。また、私たちのBehavioral Design online courseをみてみてください。


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